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グエムル/漢江の怪物 [2006年10月29日(日)]

●グエムル/漢江の怪物

監督/原案:
ポン・ジュノ(『殺人の追憶』)
出演:
ソン・ガンホ(『JSA』)
ペ・ドゥナ(『TUBE』)
ピョン・ヒボン(『火山高』
パク・ヘイル(『殺人の追憶』)
コ・アソン


漢江(ハンガン)の河原で売店を営むパク親子。長男カンドゥはいつも居眠りばかりで妻にも逃げられていた。そんなカンドゥの娘ヒョンソはしっかり者の中学生。

その日、漢江に奇妙な生物が現れた。体長10メートルを超えるその怪物は河原にいた人間を次々と捕食していく。カンドゥはヒョンソの手を引いて逃げた……が、その手は別人のものだった。カンドゥの目の前で怪物に襲われるヒョンソ。怪物が逃亡した後、現場にいた人間はウィルス感染の恐れがあるとして隔離された。その最中、携帯電話が鳴る。それはヒョンソからのSOSの電話だった……。


う……むぅ。
期待したほどではなかった。

グエムルとは"怪物"の意。
しかし、本作は怪獣映画ではない。
怪物騒ぎに巻き込まれた低所得層家族が自分たちで一人娘を助けようと奔走する姿を描くドラマ。怪物はあくまでも家族に立ち塞がる具体的な障壁であり、それに立ち向かう中で家族の絆を再確認していくという筋立て。

とするなら、本作は怪物のキャラクターが目立ち過ぎている。
怪獣が画面に出ない怪獣映画『大怪獣東京に現わる』のように、この怪物の姿を極力画面の外に追いやり、人間のリアクションにこそ注視すべきだった。

娘をさらう尻尾だけとか、中で怪物が暴れているコンテナだけとか、吐き出される人間の骨だけとか、横切る影だけとかでその姿を観客の想像にまかせた方がドラマの本質に迫れたと思う。

最後の最後、薬剤の煙の中で初めて全身を見せれば十分、というか効果的でしょう。


逆に、怪物(怪獣)映画を基本フォーマットにしたかったとしたら、怪物を取り巻く状況設定に力が無さ過ぎた。その辺も含め、怪獣映画を作り慣れてないというか。

怪物は米軍の劇薬不法投棄が原因で川魚が突然変異したという設定で、作品全体も韓国人が抱く反米感情ありきで作られています。そのため、その感情の共有がないと映画として足りない部分があまりにも多い。

冒頭の米軍の不法投棄のステロタイプさや、怪物=ウィルスという嘘情報をわざわざ流して米軍が韓国に介入する意義の薄さなど、リアリティに乏しく、韓国人でない身ではどうしても無理やりアメリカを悪者に仕立てているようにしか見えない。

一応、現実世界での「核兵器保有という嘘情報でイラク侵攻をしたアメリカ」を揶揄しているらしいけど、きちんと設定して見せてくれないとただの身内受けで終わりです。


不満は色々あるけれど、最大の不満は娘を助けられないこと(←ネタバレなので隠してみた)。パンフの寄稿文でも数人が書いてたけど、私もゲフッと水か魚を吐き出して「ビール」と言うかと期待してたのに無し。それならと主人公らの食卓に後からビールでも運んでくるかと思いきややっぱり無し。あのラストシーンに帰結するならやっぱり怪物と米軍と緩急と家族のバランスが悪い。とりあえず怪物の姿を隠すだけでも良くなると思うんだけど。


全体的にチグハグで怪物映画のくせに怪物を持て余してる印象。
一見の価値はあるけど楽しませる域にはもう一歩かな。

トム・ヤム・クン [2006年05月18日(木)]

●トム・ヤム・クン

原案/製作/監督:
プラッチャヤー・ピンゲーオ(『マッハ!』
出演:
トニー・ジャー(『マッハ!』)
ペットターイ・ウォンカムラオ(『マッハ!』)
ジョニー・グエン(『ブラック・ダイヤモンド』
ボンコット・コンマライ(『the EYE3』)
チン・シン


取り戻したい愛がある
取り戻したい象がいる

タイのとある村、そこには王に献上する象を育ててきたムエタイ兵士の末裔が暮らしていた。その1人、カーム少年は象のポーヤイを家族として、その牙を揺りかごに成長してきた。そんなポーヤイにも子供が出来た。名前はコーン。それはカームの弟になった。
そんなある日、密猟者にコーンの母親は殺されてしまう。その悲しみを乗り越えた頃、立派に育ったポーヤイを審査会に出すことになった。だが、その会場にはあの密猟者がいた。それに気付いたポーヤイは暴走する。しかもその頃、コーンが誘拐され、コーンを餌にポーヤイも捕まってしまう。
カームは2頭を追ってオーストラリアへと飛ぶ……!


もうね、思い出すだけで涙涙ですよ。
愁いを帯びた象という存在にはとんと弱いので涙倍増でした。

まずはトニー・ジャーのアクション。
益々バラエティに富んで往年の香港アクションを彷佛とさせます。

敵が待ち構える4階建ての店内を駆け上がる1カットアクション。
次々と現れる49人との連続組み手。
車両置き場でのエクストリーム軍団とのチェイスなんて正に成龍作品だし、寺院での連戦ぶりは『死亡遊戯』を思い起こさせたり。

構成も随分と進歩。
『マッハ!』がトニー・ジャーのアクションと淀んだ若者文化描写が遊離していてぎこちなかったのに比べ、本作はアクションでドラマを紡ぐという基本的な部分が出来てきてます。まだ足りないけど。


でも犯罪描写のネガティブさは相変わらず。今回はそれがトニーに直接関わるドラマに組み込まれていたので違和感自体はそれほどありませんでしたが。
ハリウッドまでいかれても困るけど、もう少し明るい話でトニー・ジャーのアクションを見てみたいです。今のスタッフと組んでる限り無理かなぁ。


クライマックス、カームがやっとポーヤイを探し当てた時の気持ちを慮ると……。そして最期の最期にカームを救うあの……。ポーヤイはずっとカームを暖かく見守っていたのだと……。

タイでは開発の影響で象が減少しているとのこと。
人と象との関係を考えさせる映画でもありました。

SPIRIT [2006年03月31日(金)]

●SPIRIT

監督:
ロニー・ユー(『フレディVSジェイソン』
アクション監督:
ユエン・ウーピン(『マトリックス』)
出演:
ジェット・リー(『HERO』
中村獅童(『男たちの大和』)
ユエツー
ドン・ヨン
コリン・チョウ(『ターゲットブルー』)
ネイサン・ジョーンズ(『ファイナルプロジェクト』)
原田眞人(『ラストサムライ』


時は1910年9月14日、霍元甲(フォ・ユァンジャ)VS外国勢4人という変則試合が組まれた。中国の外国商会は中国人の反欧感情を鎮めるため「霍元甲の敗北姿」が必要だったのだ。そんな思惑をよそに霍元甲は次々と対戦相手を制していく。彼はなぜそこまでして闘うのか? そこには幼き日の父の敗北姿に始まる悲しい物語があった……。


う、これ書いてたらまたうるうるきちゃった。

「最後のマーシャルアーツ」とリーが本当に言ったか言わないかは分かりませんが、本作がひとつの到達点であることは間違いないです。しかし、それは殺陣がもの凄く激しかったり洗練されていたりアクロバティックだったりということではありません。

心の闘い。
敵に勝つのではない。
己に克つために。
これこそが武道の到達点。
リーの闘う姿に心を見ました。

闘うために闘う拳はただの暴力でしかないのだと、若き日の霍元甲を演じるリーの姿を見れば痛いほどに苦しいほどに胸に突き刺さります。

憂いのある表情が似合うリー。私が『ダニー・ザ・ドッグ』を彼の代表作としたその点についても、本作で遂にリー本人が持つ武道家としてのパーソナリティとの融合まで果たしては、もはや言うことなしの最高傑作です。


霍元甲は1911年《辛亥革命》直前に活躍した実在の人物。ブルース・リー主演の『ドラゴン怒りの鉄拳』でのリーの師匠といえば通りがいいでしょうか。殺された師匠・霍元甲の仇討ちをする陳真の物語。

実はジェット・リーも同作品のリメイク『フィスト・オブ・レジェンド/怒りの鉄拳』に主演。以来、霍元甲の映画を作りたいと思っていたそうな(ちなみにジャッキー・チェンは正統続編『レッドドラゴン(新精武門)』に、ドニー・イェンはTV映画『精武門ドラゴン怒りの鉄拳』に主演しており、ある意味、香港アクションスターの登竜門的タイトルになっているのが面白い)。

霍元甲が実際に日本人に毒殺されたかどうかハッキリしてはいないながらも毒殺説は根強いそうな。これは日本における忠臣蔵と同じで「師匠の仇討ち」というお約束の物語になっているため。

でも本作では向いている方向は180度違う。
復讐の空しさ、争うことの愚かさを説いている。

ちなみに霍元甲の子孫は「本作は事実と違うところが多い」と文句を言っているそうですが、本作はあくまでもフィクションなんだからお門違い。それよりも史実に縛られることより中身(武道の精神)を映画として完成させたことの方が重要だと思いますがね。


格闘トーナメント映画のような宣伝に、ちょい眉に唾しながら劇場に足を運びましたが、良い方向に裏切られてひと安心。世間的にはああいう宣伝でないと客が入らないんだろうから仕方ないけどさ。

ジェット・リー最高傑作。
絶っっっ対にお勧め!

あ、やば、またうるうるしてきた。

SPL/狼よ静かに死ね [2006年03月20日(月)]

●SPL/狼よ静かに死ね

監督:
ウィルソン・イップ(『トランサー/霊幻警察』)
出演:
ドニー・イェン(『シャンハイ・ナイト』
サモ・ハン(『80デイズ』
サイモン・ヤム(『トゥームレイダー2』)
ウー・ジン(『超酔拳』)


SPL=殺破狼(シャ・ポー・ラン)とは、中国占星術で反乱を司る「七殺」「破軍」「貧狼」の3つの星を意味する──。

1994年香港。チャン捜査官率いる特別捜査班は黒社会を牛耳るポーを捕まえることができた。しかしポーの犯罪を証言する証人は家族もろともポーの手の者に殺されてしまう。チャン捜査官は唯一生き残った娘を養子にしたが不安もあった。それは証人殺害の衝突事故時に悪性の脳腫瘍が見つかったからだ。
3年後、病状の悪化からチャン捜査官は引退することに。後任として着任したのは殺人犯を拳一発で脳障害にさせたマー捜査官だったが……。


骨太香港アクションここにあり!
SFでもないコメディでもないファンタジーでもない歴史物でもない、まさに香港映画黄金期の刑事アクション映画が帰ってきた。

ドニー・イェンの殺陣は実に痛い。
ジャッキー・チェンやジェット・リーのように「ビシッ、バシッ!」と決まるのではなく「ゴスッ、メキッ!」と聞こえてくるよう。

クライマックスのドニー・イェンとサモ・ハンとの一騎討ちでは往年の香港アクションが見れるかと思っていたら、まるで昨今の総合格闘技のような殴り合いで度肝を抜かされる。まさに本作のコンセプト「ドラマの中にある感情の延長線上にあるアクション」を体現している。

ドニー・イェンは『マッハ!!!!!!』への対抗意識から本作を作り上げたという。トニー・ジャーのアクションは評価しながらも、映画の中のアクションの在り方に納得できなかったからである。香港アクション本家としての意地であろう。

クライマックス直前のドニー・イェンと敵の刺客(ナイフ使い)との死闘を見て、互いに細かいフェイントが入ったりして凄い殺陣だなぁと思っていたら、どうも現場で「2人は武術の達人なんでしょ? じゃあ闘って」と監督に言われた上でのほとんどリハーサルなしの対決だったそうな。それ知って納得、いや感動だよ。


「親と子」
黒社会のボス・ポーは妻が何度も流産した末にやっと得た子供がいる。チャン捜査官には養女。特別捜査班のメンバーも離れて暮らす娘、音信不通の親、チームの末っ子はチームを家族と感じていた節がある。

それは劇中の人物が単なる善玉悪玉ではないことを、現実の人の生き死ににはそれぞれの人生があるのだと改めて知らしめ、重要なバックボーンとして物語を支える。

でもドニー演じるマー捜査官が父親の話を語る部分は余分で、どうにも取ってつけた印象になっている。彼は元々部外者扱いなのだから親子関係は無い方が自然。それにマー捜査官は脳障害を負った男との関わりだけで刑事としての立脚点は十分でしょ。

序盤の展開で映画のラストカットが容易に想像できてしまうのもどうなんだろ。あの幕引きではマー捜査官の存在が中途半端だし。最終的なアレの対象をチャン捜査官にすればラストカットも変わって一石二鳥だと思うのですがどうでしょう?


まあ色々と細かいところをつついてはみたけど、でも全体的には面白かったのでチャラ! ドニーのアクションに酔え!

PROMISE [2006年03月02日(木)]

●PROMISE

監督/脚本:
チェン・カイコー(『始皇帝暗殺』)
出演:
真田広之(『亡国のイージス』
チャン・ドンゴン(『ブラザーフッド』
ニコラス・ツェー(『香港国際警察』
セシリア・チャン(『喜劇王』)
リウ・イエ(『山の郵便配達』)


戦場で死体から食べ物を漁っている少女がいた。高貴な少年が「奴隷になれば食べ物をやる」と言った。少女は承知して食べ物を受け取るが少年を殴って逃げた。母の元へと走る少女の前に、運命を司る女神《満神》が現れた。「あなたに全てを与えよう。しかし一生、真の愛だけは得られない。それでもいいか?」 少女は答えた「それでもいい」と……。

北の公爵《無歓》は王への反乱を企てた。王に仕える大将軍《光明》は暗殺者《鬼狼》の手で足留めを食らう。光明は自分の甲冑を奴隷の《昆崙》に着せて自分の身代わりに王の救出に向かわせる。城では王妃《傾城》の美しさに敵兵すらも目を奪われていた。しかし王に愛想を尽かした傾城に王は剣を突き付ける。そこへ現れる光明の甲冑を身にまとった昆崙。「武器を持たない者が王だ」と聞かされていた昆崙は王を殺してしまう……。


うむ、見事。
5人それぞれが持つ「約束」が複雑に絡み合う様に拍手です。

日本映画界から真田広之。
韓国映画界からチャン・ドンゴン。
香港映画界からニコラス・ツェー。
この3人が惚れる美女に香港映画界のセシリア・チャン。
本作の影のキーマンに中国映画界のリウ・イエ。

アジアの才能がここに結集。監督も認めているように各国での興行的な意味合いもあるであろう配役ですが、単なる客寄せパンダとは一線を画する中身を提示することでそんな印象は毛ほども感じさせません。

とはいえ、冒頭であまりにもCGくさい牛の大群映像を目の当たりにした時には不安を覚えたのも事実ですけど(笑)。

あまりにも作られた映像。今現在の技術なら安価でももう少しリアルに出来るのに何故?と思いましたが、その後、奴隷が2本足で立ち上がる様や大将軍を胴上げするワイヤー加減などを見ていくにつれ、納得しました。

これは全体を寓話として描こうとしているのだと。

宣伝では『HERO』『LOVERS』路線のように紹介していましたが、武侠映画という括りは同じでもまるで似て非なるもの。本作は人間を描きつつも、より大きな理(ことわり)を描いています。クライマックスで帰結する選択などは寓話としての意味合いをハッキリさせ、本作を完璧に仕上げました。


ちなみにラストの○○の姿はもう一度同じ道を歩いてしまっていると私は見たのですがどうでしょう(だって○○の上を歩いてるし)。

しかし『さらば、わが愛/覇王別姫』『北京ヴァイオリン』などと並ぶ監督のフィルモグラフィーを見るにつけハリウッド作『キリング・ミー・ソフトリー』は異色に感じますね。これだけ振り幅のある監督ってある意味凄いわぁ。

LOVERS [2005年08月21日(日)]

●LOVERS

監督/製作/原案/脚本:
チャン・イーモウ(『HERO/英雄』
出演:
金城武(『リターナー』)
チャン・ツィイー(『ラッシュアワー2』
アンディ・ラウ(『インファナル・アフェア』
ソン・タンタン


中国、唐の時代。国政が腐敗し反政府勢力が台頭していた時代。最大勢力《飛刀門》の頭目の娘が遊郭にいるという情報を得た役人の劉(リウ)は一計を案じ、同僚の金(ジン)に潜入捜査を頼んだ。捕まった小妹(シャオメイ)を牢から逃がすジン。そのまま飛刀門のアジトへ案内させる計画だったが、逃げる2人への追っ手の手は止まらない……。


予想してたよりも断然面白かった。
『HERO』好きなら絶対に好きになるでしょう。
アクションよりどんでん返しの妙を楽しむ作品です。
(ちなみにちょっと勘のいい方なら物語の展開は大旨予想出来るはず。逆に深読みし過ぎないくらいでちょうどかも。ヒント:あくまでも主人公は金城武)

しかし本質はその先にある愛憎。
ジン、リウ、シャオメイの関係性が明らかになった時が終着点ではない。なぜなら、そこから始まる感情こそがこの映画の中心だから……。

『LOVERS』──この題名はどうだろう?表層的ではないのか?などと観る前は思ってましたが、帰結する場所があそこであるならこれほど的を射たものはないですね。

画面に溢れる"色"。前作『HERO』でも色が重要な役割を担ってましたが、本作の色彩感もまた美しい。遊郭の美術とその中にある衣装たちの溢れんばかりの色模様にまず圧倒された。以降も全ての色が考え尽くされ配置してある。

唯一、クライマックスの雪だけはアクシデントからの変更だったそうですが、それさえも「この場面はこれしかない」と感じさせる"色"と思えた。本作もまた色が物語を語っていました。


武侠映画でもあり、恋愛映画でもあり。
しかし、私は人間ドラマとしてお薦めしたい。是非。

余談。『HERO』もそうだったけど「武侠アクション映画」という宣伝の仕方が強いのがもったいない。武侠映画とは日本で言う時代劇と思ってもらえれば分かりやすいか。時代劇も様々あるのに、言わば『たそがれ清兵衛』を「剣劇アクション映画」と宣伝してるようなものですって。

無問題2 [2005年08月20日(土)]

●無問題2

監督:
チン・ガーロウ
出演:
岡村隆史(『岸和田少年愚連隊』)
酒井若菜(『トワイライトシンドローム〜卒業〜』)
キャンディ・ロー(『ドリフト』)
サム・リー(『ピンポン』)
ユン・ピョウ(『チャンピオン鷹』)


面白い!私の香港アクション映画好きを差し引いてもお勧めの作品です。

正直、前作は恋愛映画ということもあってスタントマンという役柄でありながら折角の岡村隆史の動きが消化不良でした(骨折もありましたし)。今回は本人も熱望したアクションコメディということで、香港アクション映画ファンにも納得の完成度です(骨折もないですし)。

前作ではちょろっとサモ・ハン・キンポーが1シーンだけ出演してくれましたが、今回はユン・ピョウが全面的に協力、出演してくれています。

最近はカナダに住みジャッキーから依頼があればハリウッドで武術指導をする生活をしており映画は久々とのこと。監督のガーロウが後輩だったためOKしてくれ、参加してからは裏方も手伝う程(エンドロールのNG集でワイヤーを引く姿も)。

まあ、ラストバトル直前に世界一周に出てしまう無責任キャラは「最後まで出てしまうとユン・ピョウの映画になってしまう(笑)」という理由からだそうで、実際、途中岡村の存在感が薄いかも?

前作とは独立した作品なので前作を観ていなくても大丈夫ですし、前作を観て敬遠している人にも是非観ることをお勧めします!

マッハ!!!!!! [2005年08月19日(金)]

●マッハ!!!!!!

原案/製作/監督:
プラッチャヤー・ピンゲーオ
出演:
トニー・ジャー
(『モータルコンバット2』スタント)
ペットターイ・ウォンカムラオ
プマワーリー・ヨートガモン


一、CGを使いません!
二、ワイヤーを使いません!
三、スタントマンを使いません!
四、早回しを使いません!
五、最強の格闘技ムエタイを使います!!

タイのとある村の仏像の首が盗まれた。村人の期待を一身に背負い、一人の若者が仏像を取り戻すため都会へと旅立つ。若者の名はティン。最強の武術ムエタイの使い手。果たして彼は無事、仏像を取り戻すことが出来るのだろうか……。


うんうん、期待通りのアクションが見れて大大満足。
体ひとつで見せる切れ味鋭いアクションは、まさに往年のジャッキー映画を見ているよう。主演のトニー・ジャーはジャッキーをリスペクトしているそうですが、十分、ひけをとってないですよ。

ただ、ジャッキー映画と異なる点は物語の背景が今時の若者文化(ドラッグ等)を描いていること。アクションシーン以外は、退廃的な若者の生き様を描いている近年の暗いアジアンムービーって感じ。そうしたノリは個人的にはあまり好みではないので全体的な印象にはバラつきを感じました。

でも、アクションってこういうもんだよなぁと再認識出来て嬉しかったです。今や、本家香港映画でもほとんど見かけない完全な素のアクションはマジで一見の価値アリです。ハリウッド産CGアクションしか観たことない人にも是非観て欲しいですね。

よし、トニー・ジャー頑張れ!
次回作もアクション映画だったら絶対観に行くぞ。

ボイス [2005年08月18日(木)]

●ボイス

監督/製作/脚本:
アン・ビョンギ(『ナイトメア』)
出演:
ハ・ジウォン(『リメンバー・ミー』)
キム・ユミ
ウン・ソウ
チェ・ジヨン
チェ・ウジェ


終盤が面白かった。正直、中盤までは「ああ、この程度か」と落胆していたんですけど、ラストのドンデン返しで印象が180度とは言いませんが、ちょっと良くなりました。

ただ、その終盤も含めて私はただの1度も怖がれなかったのも事実(携帯電話をモチーフにしているなら、その呼び出し音がなった瞬間にビクッとしてしまうような怖さがあって然るべき)。今作はホラー映画というよりサスペンスタッチの偏愛映画とでも言う代物ですね。

携帯電話版『リング』と言うのは簡単ですが、中盤までの『リング』っぽい部分(女性記者が事件の謎を追う部分)の見せ方はイマイチ。


冒頭、エレベーターで恐怖する女性がいますが、これが後に一連の不審死の1人だと分かります。これがリストを追って2人目ぐらいで当たってしまうのがもったいない。リストを追った末、最後の女子高生の手前にいれば、我々観客が冒頭で見た女性を「記憶」として認識し、ハッとさせられたでしょう。

そもそも主人公は女性記者よりも少女の母親であるべき。
この映画のキモは、携帯電話を受けてからおかしくなってしまった少女なのですから。何故か父親を偏愛し母親を嫌う様(さま)、その描写を中心に据えるべきもの。ならば、自然と母親が主人公に相応しくなります。

序盤は女性記者が友人の家を借りるまでの段取りにすぎないので、思いきって女性記者が引っ越してくる場面から始めた方がテンポが良くなったでしょう。そこに行き着くまでの事は家で荷物を整理している間に回想として挿入します。

それにともなって、女性記者を脅迫していた援助交際男の中盤エピソードはカットしていいでしょう。女性記者の「携帯電話の番号変更」「引っ越し」の原因として存在するぐらいで十分です。そうすれば逆に彼のキーワード《援助交際》が、暗に物語全体の伏線として活きたでしょうに。

こうした点を修正するだけで終盤の大ドンデンが更に効果的になるハズ。惜しい。


今回の注目株、リンダ・ブレアの再来とも言われる少女役のウン・ソウの演技は確かに圧巻ですが、そんなわけで物語上、活かし切れていないのが残念なトコロ。しかし、電話を受けておかしくなる以前から憎たらしく感じる顔立ちというのはどうなんでしょ?(笑)

とりあえず、変に期待しなければ十分観れる映画です。

ブラザーフッド [2005年08月17日(水)]

●ブラザーフッド

監督:
カン・ジェギュ(『シュリ』)
出演:
チャン・ドンゴン(『友へ/チング』)
ウォンビン(『ガン&トークス』)
イ・ウンジュ(『永遠の片思い』)
コン・ヒョンジン(『ラストプレゼント』)
チェ・ミンシク(『酔画仙』)
キム・スロ(『火山高』


1950年。朝鮮半島は米ソによって北と南に分けられていた。靴磨きで母弟を養うジンテは、弟・ジンソクを大学に行かせるのが夢だった。しかし、突然の北の侵攻。ジンテとジンソクは母親の目の前で軍に徴兵されていく。そして地獄の戦場。弟を除隊させるため、兄は決意した。自分が勲章をもらい、それと引き換えに弟を除隊させるのだと……。


泣けます?これ。
まあ一応、私もうるうるしましたが、それは口がきけない母親が見せる息子たちへの愛情に対してのみ(つまり、最初と最後だけ)。それ以外は描写が出来てなかったと思いますよ。

韓国の方たちは実際に自分たちの歴史という意味合いがあるので無条件に泣けてしまうのも分かりますが、我々日本人が観る段において、あれだけの粗末な語り口で泣けるとは到底思えないのですが。

兄が弟のために命をかけて武勲をあげようとする。それには戦時中の軍という存在の中では鬼畜と成り下がる行為も必要。兄はその中で感覚が麻痺していく……のだが、そんな兄の内面描写は皆無。そのため、弟の感情描写だけが浮いてしまい「食い違っていく兄弟の溝」という図式で物語を運んで行けてない。

兄の超人的戦闘能力もリアルさとはほど遠い。あれじゃ『ランボー』とか『コマンドー』といったアクション映画。あくまでも兄は無茶をしているに過ぎず、生き残っているのは奇跡でしかない、という見せ方をしないと。私は『プライベートライアン』のノルマンディ上陸作戦の映像を見て、戦場の恐さを「実感」させられましたが、今回はただの1度も恐いと感じることはなかったです。


それでも全体的な印象がどうしても『プライベートライアン』っぽいのも難ですな。

まず目に付く「シャッタースピードを上げた映像」は『プライベートライアン』の二番煎じにしか感じず。とはいえ、これは演出方法のチョイスの問題なので、ある程度似るのは仕方がないこと。でも、その足元にも及ばないのでは駄目駄目。普通に撮れば良かったのに。戦場のリアリティをそこに求めた時点で演出の負けです。

(ちなみに『バトルロワイヤルII』の上陸シーンも二番煎じではありますが、あれは元々の作戦規模が小さいので半パロディとして許される代物)

こうなると「歳をとった現在の人物の回想として物語の舞台が過去へ移り、最後にまた現在へと舞台が戻って幕」という構成も『プライベートライアン』とかぶってると感じてしまいます。しかし、これは現在の人々(主に韓国人)に過去との接点を感じてもらうための演出であり、必要な要素と言えるでしょう。

戦争映画という同じ土俵では「偶然似てしまう」ことを敢えて避けることも必要なのでは? 内容から顧みれば上記の2点で今回避けるべきだったのはシャッタースピードを上げた映像の方でしょうね。元々、臨場感も出てなかったし。


『シュリ』は良かったのになぁ。アクション物には強かったけど戦記物には弱かったってことですかね。でもまあ最低限、朝鮮戦争がどういったものだったかを理解する材料にはなっているので観る価値はあると思いますよ。とりあえず韓国イケメン俳優とかいうレベルでは観ないように。しかも兄弟愛に感動!なんて絶対にしないでちょ。

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