旧myroom(香港電影的日常 '01/2/17〜'06/1/29)より移転。

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『大惡客/上海灘』 [2008年03月04日(火)]

『大惡客/上海灘』'79年製作、監督、主演:戚冠軍

 製作は79年だが、公開は80年6月説がある。この映画が“上海灘”という別題名を持つ以上、80年公開説の方が自然だ。というのも、周潤發主演でTV「上海灘」が始まったのは80年3月のことだからだ。後の周潤發のイメージを決定付けた大ヒットTV番組に便乗したと考える方が、この妙な映画にはしっくりくるのである。

 青幇らしき組織を立ち上げたと思しい人物(杜月笙ではない)というナレーションの後、赤バックに戚冠軍の洪拳演武からスタート。ここは中々の出来で期待させる。
 江青霞の組織する賭博場乗っ取りを企む金剛一派は、全面戦争の末に縄張りを掠め取る。残された江青霞一味は番頭格の唐迪を中心として、出直しを図る。娘の王眞だけは復讐を誓うが・・・。

 港湾労働者の戚冠軍と弟分の張泰倫は、賃金上げ要求のもつれから港を支配する唐迪と顔見知りになり、その腕を見込まれて組織の用心棒になる。
 慎重な戚冠軍とは違い、いっぱしの顔役気取りの張泰倫を利用し、揉め事を起こさせては勢力の拡大を図る唐迪。
 金剛一味は、六戈、劉文彬、助っ人の彭剛らがやられ、徐々に追い詰められていくが、江青霞との闘いで負傷した金剛自らは乗り出さない。

 この映画が奇妙なのはここからだ。

 負傷を理由に闘おうとしない金剛は、更なる助っ人・馬金谷を呼び寄せる。物語も終盤に差し掛かり、ほとんど物語の進行からは忘れ去られていた王眞と、唐迪にいいように利用されてきた張泰倫との間に婚約が纏まり、大慌てで婚礼を向かえる。
 婚礼当日、馬金谷が連れて来た殺し屋・蘇國[木梁]、宏興の襲撃により、張泰倫ほか唐迪らも皆殺しに。

 この映画は一部で『洪拳小子』のリメイクではないかと言われている。なるほど、暗黒街に憧れる弟分とその兄貴、二人を利用しようとする人物も登場する。おまけにその人物はどちらも唐迪が演じており、貧しい張泰倫が金時計を出世のアイコンとして見ている場面など共通点は多い。初監督の戚冠軍が、師匠・張徹の作品を巧みに取り入れたことだけは間違いなさそうだ。

 そうであるならば、尚更この映画の展開には首を傾げざるを得ない。この場合、散々伏線を張ってある訳だし、戚冠軍らは金剛一味との闘いが終わったら用済みとして使い捨てられ、唐迪のみが漁夫の利を占めるという展開であるべきだ。
 だが驚くのはまだ早い。更に映画は混迷の度を増してくるのだから。組織を潰され、新郎を殺されたた王眞は、怒り火の玉と化して金剛一家に乗り込み、一撃で金剛を倒すのである。文章上、ある種の表現として“一撃”と書いたのではない、文字通りの一撃なのだ。

 ラスボスが一撃で倒されるという前代未聞の展開後、物語の決着を担うのは、終盤になって助っ人参戦した馬金谷。確かに殺し屋を連れてきたのは馬金谷だが、王眞や戚冠軍との絡みは無に等しい人物に、これまで散々尺を費やした物語を預けてしまうというのは、どうにも肯けない。それにだ、一撃で殺してしまうのなら、何も最初から金剛なんて大物を引っ張ってくる必要もないだろう。

 それまで一緒に葬式をしていながら、王眞の危機になってやっと現れた戚冠軍は、馬金谷を倒して自らも息耐える・・・・ラストだけちゃんと張徹風にしてあるんだ(笑)。
 いや、全体的にアクションは悪くない映画(武術指導は阿材、黎根、福洲)だが、とりわけ馬金谷のアクションが素晴らしく、ラストの王眞から続く二連戦だけは見ものである。

 これはこの映画の後半の展開からの想像だが、恐らくは金剛が本当に何らかのアクシデントでアクションが出来なくなってしまったのではないだろうか?
そのため金剛に代わってストーリーを担う人物が必要となり、唐突に登場しただけの人物では闘う理由が見いだせないことから、伏線も素っ飛ばして唐迪達まで殺し、馬金谷の悪辣さを印象付けるという作業が必要になったのでは?

 こう考えるとこの映画も随分とスッキリするのだが・・・・。

 監督はおろか脚本も務めた戚冠軍は、78年の『身形拳法興歩法』撮影時に自社公司「冠軍影業公司」を設立。この『大惡客/上海灘』がその第二弾にあたる。『大惡客/上海灘』以後、「冠軍影業公司」が映画を作ったとは聞こえてこない。

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