'08年・夏の興行戦争〜コメディ篇(1) [2008年08月31日(日)]

 前回のアメコミ篇に代わって、今回はコメディ篇です。今年ほどずらりと大物コメディアンの作品が並んだ年も、近年では珍しかったと思います。

 アダム・サンドラー『You Don't Mess with The Zohan』

 スティーブ・カレル『Get Smart』

 マイク・マイヤーズ『The Love Guru』

 ベン・スティーラー『Tropic Thuder』

 これ以外にも、キャメロン・ディアスやウィル・スミスのコメディがほぼ同時期に公開だったんだから、今年は大漁だったといえる。
 ちょっと本題からはズレるんですが、ウィル・スミスの新作『ハンコック』は、今の映画興行形態と、今年の夏をターゲットにして作られた作品でした。ご存じのようにこの『ハンコック』はヒーロー物のパロディなんですが、シネコンという上映スタイルで、『ダークナイト』や『アイアンマン』と共に並ぶことを計算の上で作られているという、実に今の世でなければありえなかった作品。

 本題に戻ろう。観る前の期待値という点では『Tropic Thuder』、『You Don't Mess with The Zohan』、『The Love Guru』、『Get Smart』だったんですが、観終わった後の感想からいうと『Tropic Thuder』、『Get Smart』、『The Love Guru』、『You Don't Mess with The Zohan』でした。

 ではまず『You Don't Mess with The Zohan』から。TV「サタデー・ナイト・ライブ(以下SNL)」出身のアダム・サンドラーは、91年よりテスト出演を許されて後にレギュラー入り。

 この90-91年組には(「SNL」はその年の9月が新シーズン・スタート、翌年の6月までで1シーズンが終了するため、通常○○−○○年組と表す)、

 クリス・ファーレイ
 ティム・メドゥズ
 クリス・ロック
 ロブ・シュナイダー
 デビッド・スペード
 ジュリア・スィーニー
 
 などがおり、89-90年組のマイク・マイヤーズ、86-87年組のフィル・ハートマン、ダナ・カーヴィーを加えて、「SNL」第三黄金期と呼ばれた91-93年までの二年間を支えるメイン・キャストのひとりとして活躍したのがアダム・サンドラーの最盛期。

 その後、映画に進出し、一時期は『Happy Gilmore』や『Billy Madison』『The Waterboy』などのバカ映画がヒット続き、新世代のコメディアンとして注目を浴びる。ドリュー・バリモアと組んだ『ウェディング・シンガー』の大ヒットが、日本での認知度に貢献した作品といえようか。

 その後、コメディアンが陥り易い罠に、アダム・サンドラーも堕ちた。

 アメリカで酷評された『ビッグ・ダディ』は、子どもを使ったミエミエのお涙頂戴路線、フランク・キャプラの『オペラハット』そのままのパクリ『Mr.ディーズ』で失敗したのにも関わらず、『素晴らしき哉人生』そっくりの『もしも昨日が選べたら』に出演。全てのクラッシック映画マニアを敵に回した『ロンゲスト・ヤード』リメイク事件で、コメディアンとしては止めを刺された。

 シリアスでダメ、アクションでダメ、そんなアダム・サンドラーが再起を賭けて出演したバカ映画が『You Don't Mess with The Zohan』だった。
 モサドのスゴ腕エージェントのゾーハン(アダム・サンドラー)は、血で血を争うパレスチナ・ゲリラとの死闘に嫌気が射し、ゲリラの親玉との対決途中で死を装い、美容師になるため憧れのアメリカへと移住。
 小さな美容室で職を得たゾーハンが、初めて恋をした相手は、実はパレスチナ人だった・・・。

 面白そうでしょ? 

 でも期待値の二番目だったこの作品は、実はほとんど笑えなかったのだ。鋼鉄のチ○コを持つゾーハンは、それで卓球をしたり美容師の仕事(?)に生かしたりと大活躍、元はスーパー・エージェントですから、基本的に何でも出来るスーパーマンなんだけど、面白いのはこれらの描写だけで、特に意味不明だったのが数々のイスラエル・ジョーク。
 ユダヤ系のアダム・サンドラーには、元からユダヤ・ジョークは多かったんですが、イスラエル時代から、アメリカに住むイスラエル移民の間で繰り広げられるジョークのほとんどが解らない。

 劇場でアメリカ人も笑っていなかったため、何人かのアメリカ人にも聞いてみたのですが、彼らにも意味不明だったとか。何でこんな映画にしちゃったんでしょうね?でも、いくつかのバカバカしい場面に、往年のサンドラー・タッチが垣間見れたので、今後に期待しましょうか。

 マイク・マイヤーズといえば、カナダの「セカンド・シティ(以下SC)」出身で「SNL」へと登用されたエリート・コメディアン。「SC」はシカゴに本拠があるコメディ劇団で、カナダ支部からはマイヤーズの他にダン・エイクロイド、ジョン・キャンディ、マーティン・ショート、キャサリン・オハラなんかが有名。
 「SNL」時代の持ちキャラであるウェイン・キャンベルを主人公にした『ウェインズ・ワールド』で映画界でも成功を収めると、大ヒット・シリーズ『オースティン・パワーズ』でスーパースターの座を射止める。

 先に述べた「SNL」第三黄金期を支えたメンバーの中では、一番の出世頭だったんですが、カナダ人のマイヤーズは、アメリカで稼いだお金を確定申告しなかったんです。脱税(アメリカでは相当に嫌われる行為)でスターの座を追われたマイヤーズが、カナダを舞台に作ったのが新作『The Love Guru』。

 インドで孤児になっていたマイヤーズは、インドの偉大なる導師(グル)“ガンジー”ベン・キングズレーに導師となるよう導かれる。それなりの成功を収めたマイヤーズの元に、カナダのプロ・ホッケー・チームから選手のメンタル・ケアをして欲しいと頼まれる。
 恋人をライバル・ホッケー選手に寝取られたロマニー・マルコを立ち直らせてほしいというのが依頼だったが、マイヤーズ自身が導師の座をかけてライバルと争っている最中。有名人の治療で注目を浴びれば、スター導師になれると意気込むが・・・。

 ホッケー・チームのオーナーに旬の女優ジェシカ・アルバを起用、マルコの恋人を寝取ったライバルにジャスティン・ティンバーレイクという布陣は、これがマイク・マイヤーズの再起に賭ける意気込みを表していたように思うが。

 不発でした。何というかな・・・ギャグの感覚がズレてしまっているというか・・。ミニー・ミーいじめも相変わらずだったし、往年のギャグをやるか!と思わせてスカすあたりはマイヤーズらしかったのですが、それ以外の部分がどうにも乗り切れない。

 一番面白かったのは、ジャスティン・ティンバーレイクのキャラクター。ホッケー界1の巨根として有名な彼が目指しているのが、アメリカン・ポルノ界伝説の男・ジョン・ホームズ。ポール・トーマス・アンダーソンの『ブギーナイツ』が彼をモデルとしていたことは有名だし、ホームズその人についてはヴァル・キルマーによって『ワンダーランド』なんて映画も作られました。
 ジャスティンは、その風貌から喋り方、体の動き、ファッションまでジョン・ホームズをトレースしており、登場の音楽まで'70年代アメリカン・ハードコア風。

 若いアメリカ人にはこのキャラクター何の事だか解らなかったらしく、映画館でウケていたのは私だけでした(苦笑)。 〜以下、続きます。

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