'08年・夏の興行戦争〜コメディ編(2) [2008年09月01日(月)]
昨日の続きです。
『40歳の童貞男』がスマッシュ・ヒットとなり、一躍時の人となったスティーブ・カレル。彼も96年から「SNL」に出ているんですが、この時代は彼にとって不遇の時代。最近では「The Office」というTVのシットコムを自分で製作してヒットさせています。
そんな彼が新作として選んだのは、往年のTV番組「それ行けスマート」のリメイク。
ドン・アダムス主演の懐かしいスパイ・コメディですが、この番組が放送された65年当時はTVはスパイ物全盛期でして、他にも「0011/ナポレオン・ソロ」やテーマ曲が格好いい「秘密諜報員ジョン・ドレーク」、言わずと知れた「スパイ大作戦」、ロバート・ランシングの「過去のない男」は面白かったなー、そういえば「アイ・スパイ」も同じ時期か。
TV版「スマート」は、ドン・アダムス演じるエージェント86こと、マックス・スマートが、ピリっとしたスーツ姿でフォードのスポーツ・カーに乗り込み出動するお馴染みのOPでスタート。部長のエドワード・プラットに怒られ、相棒のエージェント99(バーバラ・フェルドン)に呆れられながらも、靴に仕込んだ電話などの珍妙な小道具を駆使して共産主義と戦う30分番組でした。
スマート役のスティーブ・カレルが、一念発起してヤル気を出し、伝説のスパイが使っていたものとして、組織のビルに展示してあるスーツや車(オリジナル・スマートの物)を使い、世界の危機を救うべく出動する場面で、往年のテーマ曲に乗せて、フォードのスポーツ・カーを走らせる場面のカット割が、TVシリーズそっくりで笑わせます。
脚本をメル・ブルックスとバック・ヘンリーが担当していたのは有名ですが、バック・ヘンリーが書いた『卒業』の脚本でアカデミー賞を取ったのが監督のマイク・ニコルズ。マイク・ニコルズといえばマイヤーズの項で出たコメデイ劇団「SC」出身でしたが、そんなとこから今回チーフ役に抜擢されたアラン・アーキンに繋がったのかも。実はアーキンも「SC」出身なんですね。
ダメ・スパイのスティーブ・カレルが、憧れのエージェント23(“ザ・ロック”ことドウェイン・ジョンソン)のようなスパイを目指し、エージェント99(アン・ハサウェイ)と共にロシアに潜入、数々のドジを繰り返しながら、アメリカを揺るがす陰謀を防ぐべく活躍する・・・。
オリジナルの「スマート」は89年にオリジナル・メンバーによるTVスペシャル「それ行けスマート0086笑いの番号」があり、95年にはTV新シリーズとしても復活。エレイン・ヘンドリックス扮する若いエージェント66をサポートする役で、ドン・アダムスとバーバラ・フェルドンも出演しました。アメリカ人にとってはずっと続いてきた感のあるコメディですが、日本ではどうでしょうかね?
今回の映画版は、スマート役のスティーブ・カレルも適役で、ギャグやアクションの配分も適度にブレンド、もしかしたら当たり役としてシリーズ化されるかも。
期待に違わぬ面白さを見せてくれたのが、ベン・スティーラー『Tropic Thuder』でした。
フランシス・フォード・コッポラの『地獄の黙示録』が撮影現場で相当の混乱をきたしたことは有名ですが、『Tropic Thuder』はその混乱の裏話をパロディ化して一本の映画にしてしまった。とはいってもこの映画の笑いのネタはそれだけではない。
ベン・スティーラーの演じる元・アクション・スターは、スタローンのような筋肉系の映画シリーズに出演。人気が落ちた所で演技派転向を目指し、ショーン・ペンが演じたような知恵遅れの主人公を演じて酷評される。再起を賭けて『プラトーン』のウィリアム・デフォーのような役でタイ・ロケに参加。
ロバート・デ・ニーロのようなアクターズ・スタジオ仕込みのメソッド演技を披露する名優役は『アイアンマン』でブレイクしたロバート・ダウニーJr。
あんまり役にのめり込み過ぎて、最早自分が誰だったのか訳が分からなくなっている男という設定で、今回は整形で黒人になっているというキャラ。
ダウニーの役は更に凝っていて、オーストラリア人という設定なのですが、私生活は酒と女で滅茶苦茶、パパラッチに追い回されている人物。これってラッセル・クロウかメル・ギブソンがモデル。ちなみに黒人化したダウニーの顔は、『リーサル・ウエポン』シリーズのダニー・グローバーそっくり!
ジャック・ブラックは、ひとりで何役も演じるコメディアンというエディ・マーフィーのパロなんだけど、実は強度のコカイン中毒で、一時もじっとしていられない。常に自分に注目が集まっていないと寂しくて、コカインによる躁鬱を繰り返すことで笑いを取っているデブ・コメディアンといえば、アダム・サンドラーと同期の「SNL」コメディアン・クリス・ファーレイ。
この三人が主役なんですが、どのキャラも二つ以上がミックスされているのは訴訟対策か!?(笑)
映画はベトナム帰還兵のニック・ノルティが書いた自伝の映画化という設定で、タイのジャングルでロケ。新人監督役のスティーブ・クーガンが、ハーベイ・ワインシュタインを思わせる冷徹なプロデューサー(誰が演じているかはお楽しみに!)に、予算超過、撮影日数超過でクビを宣告され、「本物のジャングルでリアリティあふれるゲリラ撮影をしよう・・・」というニック・ノルティの悪魔の囁きに乗ってしまうことから、悪夢がスタート。
実はニック・ノルティは、ベトナム戦争になんか行ったことがないニセ帰還兵なんですが、これは本物のベトナム帰還兵B・G・バーケット著による「盗まれた武勲」から。彼の著書によれば、ベトナム帰還兵としてホームレスになっていたり、犯罪を犯したり、PTSDを訴えて補償金をせしめている人間のうち二千人が、実戦経験の無い後方任務か、軍隊にすら入ったことがない人間だったことが突き止められたのだ。TVや映画で見る、ベトナム帰還兵のほとんどが、ニセ帰還兵によって作られた事実が、ニック・ノルティの役に反映されている。
ジャングルに乗り込んだのは監督、主役三人に、同じ小隊のメンバー役の新人俳優Jay Baruchelと、ラッパーから俳優に転じたBrandon T. Jackson。脚本も読まない大物俳優を批判する役回りのJay Baruchelと、黒人に成りきったロバート・ダウニーJrを批判する本物の黒人Brandon T. Jacksonを加えた一行は、タイの麻薬マフィアが支配するジャングルで、本物の戦闘に巻き込まれるのだが、映画のロケと信じ込んだベン・スティーラーはご機嫌だ。段々と状況を飲みこめてくる彼らが、タイのジャングルで見たものは・・・。
監督も務めたベン・スティーラーも、87年から「SNL」に出演していたが、ここでの彼は人気が出ずに終わった。そういえばロバート・ダウニーJrも「SNL」85-86年組だった。
アダム・サンドラーやマイク・マイヤーズのような「SNL」成功組の再起作VSスティーブ・カレル、ベン・スティーラーの「SNL」不成功組による興行合戦というのが、この夏の裏テーマだったということですな。
結果は既に示した通り「SNL」不成功組の圧勝だったのですが、この興行合戦自体はコメディ・ファンにとって非常にうれしい出来事でした。実は夏前にはティナ・フェイとエイミー・ポウラー主演の『Baby Mama』があったし、未見なのですがウィル・フェレルの『Step Brothers』も夏の公開でした、そしてついこの間にエディ・マーフィーの『Meet Dave』も公開されたばかり。初夏からずっと、「SNL」新旧スターによる興行が続いた2008年という年は、長年「SNL」を追いかけてきた私には忘れられない年になりました。
『40歳の童貞男』がスマッシュ・ヒットとなり、一躍時の人となったスティーブ・カレル。彼も96年から「SNL」に出ているんですが、この時代は彼にとって不遇の時代。最近では「The Office」というTVのシットコムを自分で製作してヒットさせています。
そんな彼が新作として選んだのは、往年のTV番組「それ行けスマート」のリメイク。
ドン・アダムス主演の懐かしいスパイ・コメディですが、この番組が放送された65年当時はTVはスパイ物全盛期でして、他にも「0011/ナポレオン・ソロ」やテーマ曲が格好いい「秘密諜報員ジョン・ドレーク」、言わずと知れた「スパイ大作戦」、ロバート・ランシングの「過去のない男」は面白かったなー、そういえば「アイ・スパイ」も同じ時期か。
TV版「スマート」は、ドン・アダムス演じるエージェント86こと、マックス・スマートが、ピリっとしたスーツ姿でフォードのスポーツ・カーに乗り込み出動するお馴染みのOPでスタート。部長のエドワード・プラットに怒られ、相棒のエージェント99(バーバラ・フェルドン)に呆れられながらも、靴に仕込んだ電話などの珍妙な小道具を駆使して共産主義と戦う30分番組でした。
スマート役のスティーブ・カレルが、一念発起してヤル気を出し、伝説のスパイが使っていたものとして、組織のビルに展示してあるスーツや車(オリジナル・スマートの物)を使い、世界の危機を救うべく出動する場面で、往年のテーマ曲に乗せて、フォードのスポーツ・カーを走らせる場面のカット割が、TVシリーズそっくりで笑わせます。
脚本をメル・ブルックスとバック・ヘンリーが担当していたのは有名ですが、バック・ヘンリーが書いた『卒業』の脚本でアカデミー賞を取ったのが監督のマイク・ニコルズ。マイク・ニコルズといえばマイヤーズの項で出たコメデイ劇団「SC」出身でしたが、そんなとこから今回チーフ役に抜擢されたアラン・アーキンに繋がったのかも。実はアーキンも「SC」出身なんですね。
ダメ・スパイのスティーブ・カレルが、憧れのエージェント23(“ザ・ロック”ことドウェイン・ジョンソン)のようなスパイを目指し、エージェント99(アン・ハサウェイ)と共にロシアに潜入、数々のドジを繰り返しながら、アメリカを揺るがす陰謀を防ぐべく活躍する・・・。
オリジナルの「スマート」は89年にオリジナル・メンバーによるTVスペシャル「それ行けスマート0086笑いの番号」があり、95年にはTV新シリーズとしても復活。エレイン・ヘンドリックス扮する若いエージェント66をサポートする役で、ドン・アダムスとバーバラ・フェルドンも出演しました。アメリカ人にとってはずっと続いてきた感のあるコメディですが、日本ではどうでしょうかね?
今回の映画版は、スマート役のスティーブ・カレルも適役で、ギャグやアクションの配分も適度にブレンド、もしかしたら当たり役としてシリーズ化されるかも。
期待に違わぬ面白さを見せてくれたのが、ベン・スティーラー『Tropic Thuder』でした。
フランシス・フォード・コッポラの『地獄の黙示録』が撮影現場で相当の混乱をきたしたことは有名ですが、『Tropic Thuder』はその混乱の裏話をパロディ化して一本の映画にしてしまった。とはいってもこの映画の笑いのネタはそれだけではない。
ベン・スティーラーの演じる元・アクション・スターは、スタローンのような筋肉系の映画シリーズに出演。人気が落ちた所で演技派転向を目指し、ショーン・ペンが演じたような知恵遅れの主人公を演じて酷評される。再起を賭けて『プラトーン』のウィリアム・デフォーのような役でタイ・ロケに参加。
ロバート・デ・ニーロのようなアクターズ・スタジオ仕込みのメソッド演技を披露する名優役は『アイアンマン』でブレイクしたロバート・ダウニーJr。
あんまり役にのめり込み過ぎて、最早自分が誰だったのか訳が分からなくなっている男という設定で、今回は整形で黒人になっているというキャラ。
ダウニーの役は更に凝っていて、オーストラリア人という設定なのですが、私生活は酒と女で滅茶苦茶、パパラッチに追い回されている人物。これってラッセル・クロウかメル・ギブソンがモデル。ちなみに黒人化したダウニーの顔は、『リーサル・ウエポン』シリーズのダニー・グローバーそっくり!
ジャック・ブラックは、ひとりで何役も演じるコメディアンというエディ・マーフィーのパロなんだけど、実は強度のコカイン中毒で、一時もじっとしていられない。常に自分に注目が集まっていないと寂しくて、コカインによる躁鬱を繰り返すことで笑いを取っているデブ・コメディアンといえば、アダム・サンドラーと同期の「SNL」コメディアン・クリス・ファーレイ。
この三人が主役なんですが、どのキャラも二つ以上がミックスされているのは訴訟対策か!?(笑)
映画はベトナム帰還兵のニック・ノルティが書いた自伝の映画化という設定で、タイのジャングルでロケ。新人監督役のスティーブ・クーガンが、ハーベイ・ワインシュタインを思わせる冷徹なプロデューサー(誰が演じているかはお楽しみに!)に、予算超過、撮影日数超過でクビを宣告され、「本物のジャングルでリアリティあふれるゲリラ撮影をしよう・・・」というニック・ノルティの悪魔の囁きに乗ってしまうことから、悪夢がスタート。
実はニック・ノルティは、ベトナム戦争になんか行ったことがないニセ帰還兵なんですが、これは本物のベトナム帰還兵B・G・バーケット著による「盗まれた武勲」から。彼の著書によれば、ベトナム帰還兵としてホームレスになっていたり、犯罪を犯したり、PTSDを訴えて補償金をせしめている人間のうち二千人が、実戦経験の無い後方任務か、軍隊にすら入ったことがない人間だったことが突き止められたのだ。TVや映画で見る、ベトナム帰還兵のほとんどが、ニセ帰還兵によって作られた事実が、ニック・ノルティの役に反映されている。
ジャングルに乗り込んだのは監督、主役三人に、同じ小隊のメンバー役の新人俳優Jay Baruchelと、ラッパーから俳優に転じたBrandon T. Jackson。脚本も読まない大物俳優を批判する役回りのJay Baruchelと、黒人に成りきったロバート・ダウニーJrを批判する本物の黒人Brandon T. Jacksonを加えた一行は、タイの麻薬マフィアが支配するジャングルで、本物の戦闘に巻き込まれるのだが、映画のロケと信じ込んだベン・スティーラーはご機嫌だ。段々と状況を飲みこめてくる彼らが、タイのジャングルで見たものは・・・。
監督も務めたベン・スティーラーも、87年から「SNL」に出演していたが、ここでの彼は人気が出ずに終わった。そういえばロバート・ダウニーJrも「SNL」85-86年組だった。
アダム・サンドラーやマイク・マイヤーズのような「SNL」成功組の再起作VSスティーブ・カレル、ベン・スティーラーの「SNL」不成功組による興行合戦というのが、この夏の裏テーマだったということですな。
結果は既に示した通り「SNL」不成功組の圧勝だったのですが、この興行合戦自体はコメディ・ファンにとって非常にうれしい出来事でした。実は夏前にはティナ・フェイとエイミー・ポウラー主演の『Baby Mama』があったし、未見なのですがウィル・フェレルの『Step Brothers』も夏の公開でした、そしてついこの間にエディ・マーフィーの『Meet Dave』も公開されたばかり。初夏からずっと、「SNL」新旧スターによる興行が続いた2008年という年は、長年「SNL」を追いかけてきた私には忘れられない年になりました。







