キネマ旬報 [2008年09月14日(日)]

 ちょいと古い話題で恐縮なのですが、「キネマ旬報」8月下旬号は、“ブルース・リー没後35年の今、クンフー映画が熱い!!”と題して、功夫片の特集を組んでおりました。

 表紙も『燃えよドラゴン』の李小龍、特集の第一部が“再考ブルース・リー”、第二部が“クンフー映画再熱”となっていて、日本における功夫片の歴史を辿りつつ、新作映画を取り上げて現在のクンフー映画ブームを検証している構成となっています。

 特集で取り上げられた作品は、

 『ドラゴン・キングダム』
 『カンフー・パンダ』
 『インビジブル・ターゲット』
 『カンフー・ダンク!』
 『ハムナプトラ3』の五本。

 先に公開された『少林少女』から『カンフーくん』にまで範囲を広げて、今回のブームが、世界的な流れであることを強調しています。

 だが、ちよっと待てよ、と。

 まあ、執筆陣の方々は解っていて書いたんだろうと思います。恐らくはそういう論調で書いてくれと、編集側から依頼があって、その要請に従って書いたのであろうことは、私も大人ですから想像はつきます。

 ブーム(今回のがブームだとは思わないけれど)にならなければ功夫片が語られないというのが、日本における功夫片の問題点のひとつで、今回以前だと『マトリックス』『グリーン・デスティニー』の時をブームと呼んで以来のことになりますか。

 実際のところ、欧米で最後にブームだったのは80年代のことで、それ以降は確実に文化として定着したものが、『マトリックス』へと花開いたというのが現実で、いつまでたってもアクション映画が正当に評価されないまま、いつまでもブーム頼りになってしまっている問題点を指摘されることがないまま、今回の特集本が出てしまった感があります。

 今年、各国で功夫を題材にしたり中国を取り上げた映画が多かったのは、単に北京オリンピックがあったから、中国ブーム(功夫ブームではない)がくるかもと思って足並みを揃えたにすぎない。
 そんなことは各ライター陣もお解りだったのでしょうけどね・・・。ちょっと残念な仕上がりの特集でした。

 今回ちょっと気になったのは、映画のタイトル以外“クンフー”と統一で表記されていたこと。

 手元にキネマ旬報'85年3月下旬号の功夫特集があるのですが、この頃はまだ“クンフー”と“カンフー”の表記が両方使われていて、当時の映画雑誌はみんなそうだったのですが、むしろ“カンフー”の方が多いくらいでした。

 最近は映画雑誌なんて見ることすらしなくなったため、いつ頃から“クンフー”表記で統一され始めたのか解りませんが、外国語の発音なんて絶対日本語化不可能なんだから、漢字表記出来るものは漢字にすればいいと思うのですけどね。同じ漢字文化圏なんだし。

 それにしても、かつてキネマ旬報といえば、1980年に關徳興の『黄飛鴻』シリーズや、胡金銓、劉家良の映画を紹介した香港映画特集を組んだこともあったのですが、同じ雑誌とは思えない、それほど低レベルの特集だったな。

 '80年の特集時(80年ですよ!、同じ号で『拳精』の公開情報が載っている時期!)には、“功夫映画”として統一表記、香港における『黄飛鴻』シリーズの意味や、“功夫映画”の武術指導の重要性について取り上げたことすらあるというのに!

 嗚呼、あのキネマ旬報は何処へ行ってしまったんでしょうね?

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