旧myroom(香港電影的日常 '01/2/17〜'06/1/29)より移転。

 香港映画を中心に語っていますが、基本的には何でもアリです。
 なお日記に記載の内容は、無断転載、転用はお断りいたしております。ご理解下さい。(by fake)

 ・・・・あと、リンクもフリーではないんです。すんませんなぁ。

『達磨鐡指功』 [2008年03月09日(日)]

『達磨鐡指功』'78年製作、監督:南宮勲(汪洪説有り)、主演:呂小龍

 呂小龍の“達磨シリーズ”第一弾!・・では第二弾は?ってことになりますが、それは追々。

 韓国にある上海の日本軍総司令部では、長官の斐壽千によって当地における日本軍の優位性を保つため、日本人武術家による中国武術への挑戦が計画されていた。そしてその第一目標は少林寺である。

 そんなことになっているとはつゆ知らず、“今日も韓国山中にある少林寺で修業している陳星と呂小龍。点穴人形を使って、秘技・達磨鐡指功の修練に余念がない。”

 そこへ、大変だ!と修行仲間の張力が飛び込んできた。日本軍による武術家狩りは始まっており、呂小龍の道場も襲われたという。韓国の山を下りて台湾の街に到着した呂小龍は、無残に潰れた道場を発見。
 “兄貴、俺が必ず仇を討つ!墓の前で張力と誓っている頃、都合良くボコられに日本人がやってきた。まずはこいつらから血祭だ。”

 韓国にある上海に到着した呂小龍、さっそく日本軍将校を吊るし上げる。恥をかかされた将校は切腹、この将校が斐壽千の縁者(?)だったことから、怒りの矛先は完全に呂小龍一人へ。

 “韓国山中の少林寺に帰った呂小龍、師匠の陳星から韓国へと逃げろと勧められる。呂小龍が逃げた後、斐壽千が復讐のために集めた武術家軍団(江島、楊斯、他韓国武師軍団)に襲われた陳星、得意の達磨拳法で闘うが、助けに現れた農夫(張莽)の裏切りにより命を落とす。”

 陳星に紹介され南宮勲のところに身を寄せる呂小龍。娘の金正蘭とはすっかり仲良しだ。韓国に来ても修行を怠らない呂小龍は、陳星と修行していたのと全く同じ場所で修業に明け暮れる・・・・ロケ場所変えんか!(笑)

 “呂小龍の行方を追って韓国に現れた江島軍団、南宮勲を襲撃するもあと一歩で逃げられる。”傷つき倒れたが、反乱軍を指揮し日本人への抵抗を説く南宮勲。すっかり物語上は忘れられていた張力が、斐壽千の動向を知らせ、キーセンに化けて斐壽千を狙う金正蘭だったが、間一髪で呂小龍に救出される。
 江島を倒し、張力の犠牲はあったものの、呂小龍は斐壽千に最後の決戦を挑むのだった・・・。

 うーむ、意外に面白く(呂小龍にしては)、これは屈指の傑作(呂小龍にしては)ではあるまいか?!

 ところで、この映画には『火焼少林門』なる続編があるのですが、いったいどの辺りが“達磨シリーズ”第一弾!ってことになるのかというと、それは『達磨五形拳』という映画の存在があるからなのだ!

 『達磨五形拳』をもう一度読み返して貰いたい。これは明らかに呂小龍得意の再編集作品なのだが、その元ネタとして使われた映画がこの『達磨鐡指功』なのだ。
 今回のレヴューで“ ”で括ったところと、『達磨五形拳』を比較して欲しい。その場面こそ『達磨鐡指功』からの引用部分で、呂小龍の映画作りの一端が垣間見える部分なのである。

 まあ、再編集でないだけ(呂小龍にしては)マシってもんですよ、この映画は。

『截拳鷹爪功』 [2006年10月21日(土)]

『截拳鷹爪功』'79年製作、監督:杜魯波、主演:何宗道

 何宗道もうひとつの“精武門”続編モノ。ストーリー的には『精武門續集/唐山大兄2』と繋がりはなく、あくまでブルース・リーの『精武門/ドラゴン怒りの鉄拳』の続編ということになる。ジャッキーの『新精武門/レッド・ドラゴン』も含む、パラレルな続編ということになるが、この『截拳鷹爪功』がややこしいのは、同じ何宗道による主演ということと、英語タイトルに事情がある。

 前回の『精武門續集/唐山大兄2』もタイトルがヘンだとお気づきだろうが、これは英語題もおかしいのだ。英語題は『Chinese Connection2/Fist of Fury2』なのである。『截拳鷹爪功』の英題は本来、『Jeet Kune the Claws and the Supeme Kung Fu』であったのだが、内容が精武門系列であるため、英題も『Fist of Fury3/Chinese Connection3』と変更され、欧米のビデオタイトルなどはこれで統一されている。英語版を見た人などは、これが『精武門續集/唐山大兄2』の続編だと勘違いしている人もいるくらいだ。

 この混乱はそもそもブルース・リーの映画から来ている。

 我々日本人にとって、『唐山大兄/ドラゴン危機一発』は『The Big Boss』、『精武門/ドラゴン怒りの鉄拳』は『Fist of Fury』である。ところが、『唐山大兄』は『Chinese Connection』という別題も用意されていた。それが欧米へのセールス時に、間違って『精武門』の英題としてセールスされ、逆に『精武門』の英題である『Fist of Fury』が『唐山大兄』の英題とされてしまったのだ。ようするに欧米では『唐山大兄/Chinese Connection/Fist of Fury/The Big Boss』であり、『精武門/Fist of Fury/Chinese Connection』という訳。

 で、『精武門續集/唐山大兄2/Fist of Fury2/Chinese Connection2』というタイトルになったのは、ご丁寧にも勘違いしたままの欧米へ向けてのセールスを考えた、手の込んだタイトルなのである。だから『截拳鷹爪功/Fist of Fury3/Chinese Connection3』もこんなタイトルになっている次第。

 素晴らしかった『精武門續集/唐山大兄2』に比べて、この『截拳鷹爪功』は何ともトホホな出来だ。もっとも、パチもん関係の作品はこの程度の出来なら御の字で、前回が奇跡的なだけだったのだが。

 陳眞の弟・何宗道(今回の役名は“陳善”!)が列車に乗っている。上海で死んだ兄の遺骨と遺影(やっぱりブルース・リー本人の写真)を抱き、生まれ故郷に帰って行くのだ。
 物凄いド田舎に到着。こんな田舎でも日本人は猛威を振るっており、通訳の中国人・魏平澳も虎の威を借りて大威張り。すれ違い様に何宗道の殺気に何かを感じたか、日本人たちをけし掛けるが、何宗道の怒りの鉄拳が火を噴いた。
 雑貨屋を営む盲目の母・王莱と、末弟の韓國才は、何宗道の帰還を喜ぶが、死んだ陳眞のことを気に病む母の為、二度とケンカはしないと誓うのであった。

 何が目的でこんな田舎を制圧しようとしているのかは不明ながら、とりあえず悪事の限りを尽くす日本人武道家No.2の方野(手下にお馴染み山怪、米奇、前回の熱演も帳消しな岑濳波)は、No.1がこの地にくるまでに上海からきた男を捜せと指令を出す。「その男なら多分アレだな・・・」心当たりの有る魏平澳が作戦を練る。
 糞田舎にも関わらず存在する精武体育会。道場主の劉鶴年は久しぶりに帰郷した何宗道と旧交を温める。何宗道が上海に出ている間に入門した唐炎燦が、病弱な劉鶴年に代って師範代を務めているが、娘の蔡瓊輝が紹介すると妙に挑発的な態度をとった。

 「ボスがこっちにくるまでにはカタをつけんと・・・・」心配する方野に、どこでどうやって聞き込んだのかは全く持って不明ながら、「唐炎燦と何宗道は仲が悪いようです、ふたりをけしかけましょう」と提案する魏平澳。
 唐炎燦は蔡瓊輝に惚れていた。彼女が何宗道の顔を見てうれしそうにするのが気に食わなかったのだ。ほとんどストーカーのように蔡瓊輝の行動を監視する唐炎燦。さすがにウザいと感じる蔡瓊輝。
 想いが届かないと、自棄酒飲んで暴れ廻り、大道芸の父娘(ベテラン周小來と米雪)に当り散らす。止めに入った何宗道と闘うが、同門の子弟が何故こうも自分を憎むのか、そもそも蔡瓊輝のことすら眼中に入っていない何宗道には、事態が一向に飲み込めないのだった。

 こうなってくるとこの映画、別に“精武門”である必要は全く無かったと言っても良いのだが・・・・(苦笑)。

 行く当てのない米雪親子を家に泊める何宗道。周小來が病気となり滞在が伸びる。「そんなに強いのにどうしてコンテストに出ないの?」米雪の問いに答える何宗道は、「兄のようにはなりたくない・・・・母にも心配かけたくないし・・・」歯切れの悪い何宗道に遠慮して話を逸らす米雪。今度は何宗道が質問、「何故旅を?」。「父は・・・その・・・捜している人がいて・・・」米雪も歯切れが悪く、「余計なことだった・・・」と話を逸らす何宗道。今後に向けて何かありそうな感じだが、結局、米雪親子が誰を捜しているのかは最後まで判らなかったりする。

 病気が快復したのか、突然出て行くと言い出す周小來。「何で急に?」米雪は不服顔。蔡瓊輝は好きな(?)何宗道のため服を縫い、いそいそと届けに来た。更に嫉妬の炎を燃やす唐炎燦。またまた自棄酒を煽っているところに、本来の計略をやっと思い出した魏平澳が、「女なんてやってしまえばこっちのもんですよ!」とけしかける。ついでに隙をみて興奮剤を酒に混ぜた。
 その夜、抑え切れなくなった唐炎燦は蔡瓊輝の寝室に忍び込んだが、目を覚ました蔡瓊輝に抵抗され、師匠の劉鶴年からは破門を言い渡された。

 主人公の何宗道とは、かなり遠いところで進められているこの計略に、まんまと嵌る唐炎燦。とにかく何宗道が悪い!恨み骨随となり、魏平澳の誘いに乗って方野陣営に加盟。魏平澳の立てた計略は、顔を隠して連続強姦殺人を犯し、最終的には罪を何宗道に着せてしまおうというもの。市民の訴えで警察の取り調べも厳しくなる頃、蔡瓊輝の縫った服を盗み出し、劉鶴年を殺害。現場を見た蔡瓊輝は、服の模様から犯人は何宗道だと訴え出る。末期に劉鶴年は違うと言い残したのだが・・・・。

 重要参考人として拘置所に入れられる何宗道。しらじらしく劉鶴年の葬儀に現れ、悲嘆に暮れる蔡瓊輝に付け込む唐炎燦。「やりましたな〜」祝杯を挙げる方野一味。そして組織のNo.1である谷峰が登場。このショウブラ派の大物が参加していることが、このぐだぐだな映画唯一の光明である。
 何の説明もなく、突然村に帰って来た周小來と米雪父娘は、蔡瓊輝に何宗道の無実を訴える。そこへ現れた唐炎燦との間に闘いとなるが、父の最後の言葉もあり、訳が解からなくなった蔡瓊輝は祭壇に頭を打ちつけて自殺してしまう。唐炎燦もビックリだが、我々観客もビックリだ!

 罪が確定して刑務所へ送られることになった何宗道。悲観する母と弟。通りすがりの日本人と魏平澳に何故か八つ当たりする韓國才。ストーリーは省略することなく書いているから御理解頂けると思うが、韓國才はこれが日本人の計略だったことは知らない!のだ。とにかく、悪いことは全部日本人のせい!結果的に当ってなくは無いが、この時点では八つ当たりでしかなく、しかも返り討ちで母共々殺されてしまう。

 拘置所から何宗道を救い出した米雪と周小來。一緒に逃げましょうと持ちかけるが、母に挨拶してからだと言い張る何宗道と自宅へ。そこで見た物は、無残な母と弟の亡骸だった・・・・。
 「おのれ、日本人め!」当ってはいるのだが、拘置所にいて誰も事情は知らないはずで、間違えていたらどうするのか?という疑問はさておき、正義の拳を振るうべくとりあえず魏平澳を追う。
 方野の賭場には見当たらず、手下を蹴散らして居場所を聞くと、酒楼を目指す。山怪や米奇、岑濳波をブチ殺し、方野も殺して、逃げた魏平澳を更に追う。
 魏平澳は谷峰に事の次第を注進するも、「手前のケツは手前で拭け!」と一撃で倒される。

 さあ、谷峰はとりあえず何宗道であることを知った。が、彼が何故?どうやって?ここに来たのかは知らない。第一、谷峰はこの村へ来たばっかりで、彼がした悪事らしいことといえば、魏平澳を片付けたことだけである。これまでの方野たちの暗躍も、方野たちが勝手にやっていただけのこと。
 一方の何宗道だ。谷峰とはこの時が初対面、あくまで魏平澳が下手人だと、それも勝手に検討付けて追ってきただけで、唐炎燦との確執のことや、師匠の死の真相、その影で方野一味の果たした役割や、蔡瓊輝が死んだことすら知らない。更に困ったことに、この目の前にいる谷峰が誰で、何のためにここにいるのかは、全く不明であるという点だ(笑)。

 だが、奴を殺すにはもう理由はいらん!何故なら、奴は魏平澳を殺した悪い人物で、何よりその偉そうな態度と、悪そうな顔つきが気に喰わん!

 映画史上に残るモチベーション無き闘いが開始された。

 映画を観ている我々には、まったく伝わらない主人公の気持ちはさておき、何宗道VS谷峰の闘いは素晴らしい出来だ。惜しいな。
 谷峰やや苦戦、そこへ唐炎燦が登場。「おお良いところへ」と喜ぶ谷峰に向う唐炎燦。当たり前だが、事情が皆目検討つかない何宗道は、ただただ黙ってふたりの闘いを見守るばかり(正真正銘、マヌケ面で見ているだけ)。サイまで持ち出して健闘した唐炎燦も、谷峰の日本刀に倒れた。死の間際に全てを告白する唐炎燦。それは何宗道のためにも必要だとは思うが、全部説明するには長い経緯だぞ!

 だがこの長い告白で全てを知った。何宗道も、谷峰も。

 「ゆ、許さん!本当に許さん!」

 此処に来て俄かに燃え上がる何宗道。それはいいが我々観客は・・・・これで燃えろったって、ねぇ。

 日本刀を振り回す谷峰との第二ラウンドも素晴らしいアクションだ。やっぱり惜しいな、これ。吹き矢で相手の視力を奪った何宗道は、殺せ!と喚く谷峰に向かい「俺は中国人だ!殺すのは自分の身を守る時だけだ!」と尤もらしいことを言って止めは刺さない。
 今まで、大した理由も無く方野たちを皆殺しにしてきた男のセリフでは説得力に欠けるのだが、何に感銘を受けたものか、谷峰は自らの命を絶つ。

 こんな映画が“精武門”か・・・・・。でもアクションの出来は良いから、結構観れてしまうんだな、これが(笑)。

『精武門續集/唐山大兄2』 [2006年10月18日(水)]

『精武門續集/唐山大兄2』'77年製作、監督:邵峰、主演:何宗道

 言わずと知れたブルース・リーの『精武門/ドラゴン怒りの鉄拳』の続編だ。“精武門”続編モノといえば、ジャッキーの『新精武門/レッド・ドラゴン』が有名だろう。
 ジャッキー版は、ハーベストと仲違いした監督の羅維が、独立して旗揚げした羅維プロで製作した続編。そもそも、ハーベストでのブルース・リーと羅維との関係が険悪だったことから始まったことだった。『唐山大兄/ドラゴン危機一発』撮影時から、ブルース・リーは羅維の力量を信用していなかった。そしてふたりの間が決定的となったのが『精武門』の時。撮影には参加しなかったが、撮影現場を訪れた多くの業界人が、羅維はほとんどまともに撮影していなかった・・・との証言を残しており、ブルースが激怒したのも止むを得なかったと思われる。

 ふたりは度々ケンカをし、マスコミは面白がってふたりの仲を書きたてた。ハーベストもそれを宣伝に利用したフシがあったらしいが、とにかく大ヒットした『精武門』の手柄を巡って、双方譲らず攻撃し合った。監督・羅維生涯最大のヒットをもたらした『精武門』だったが、ブルース・リーの力ばかりが喧伝されたのは気に食わない。そこで羅維プロの旗揚げに選んだ題材が『新精武門』だったのである。
 結果は、成龍という新しいスターを発掘(育成はできなかったが)したに過ぎず、興行的にも惨敗。ブルース・リーの死後3年を経て、はからずも自らの手で、己の力量を示す結果となった。

 続編としての『新精武門』は、前作と同じ“麗兒”役で苗可秀と、警察署長役で羅維が出演しているのが引きなだけで、ストーリー的には新たな物語だった。だが、この有名作の続編を製作するという企画を観た多くの製作者たちが放っておくはずもなく、そっくりさん俳優たちがこぞって出演するという事態を生んだのである。
 その中でも、この何宗道の『精武門續集/唐山大兄2』は傑作中の傑作で、何宗道出演作の中から選んでもベストに推す人は多い。
 監督の邵峰はキャセイでキャリアをスタートさせたベテラン。日本ではTV放映された『小子命大/ドラゴンカンフー龍虎八拳』の監督でもある。

 冒頭、霍元甲と精武門の成り立ちが説明され、『精武門』のスチールをバックに陳眞の活躍までが語られる。そのまま陳眞葬儀の場面となり、前作で精武門門弟役だった田豐、李昆らが、ブルース・リー(本人!)の遺影を持って現れる。
 棺が埋められようとする時、形見のヌンチャクを捧げようとしたら泣き叫ぶ門弟・岑濳波がこれを取り上げる。その時、“麗兒(苗可秀ではない、顔は見せないよう演出)”が棺にすがるようにして自殺した。

 建て直しを計る大日本虹口道場は、死んだ鈴木に代って、羅烈(日本人役)を呼び寄せた。羅烈の腹心には鹿村や南宮勲が控え、門弟にも高飛、李強、杜偉和、史亭根らを揃え、今回の敵は明らかにオリジナルより強そうなのがミソ。
 通訳の李慧樓(前作の魏平澳と同じような役)を従えた羅烈は、精武門制圧に乗り出した。精武門道場へと乗り込んだ羅烈たち、前作と同じ精武門道場のセットを再現し、いい感じに雰囲気を盛り上げるなど、続編としても芸が細かい。
 田豐は掴まり、逃げ散る門弟(岑濳波や龍方)たち。残党狩りが始まり、彼らを匿った薛漢や余松照はとばっちりを受けた。

 羅烈たちの言い分は、「鈴木の仇を討つつもりだったが、日中の友好のため矛を収めた。それなのに抵抗するとはけしからん!」これ以上騒ぎを大きくしたくなければ屈せよと、調印書に署名させられる田豐。多くの犠牲を出し、仕方なくサインする田豐だったが、同時に中国人の誇りも失ってしまう。
 時は流れ、道場を乗っ取られ、廃屋を住まいに生活する門弟たち。アル中となった田豐に、精武門再建は不可能だった。
 不気味な嵐が訪れ、彼らの前途にも更なる不安が増す頃、ひとりの男が上海に現れた・・・・。

 ここまでが導入部で、開始20分過ぎまで何宗道は登場しない。田豐たち前作キャラのストーリーと、陳眞亡き後を丹念に描くことで、只の便乗作ではない、この作品ならではの気概を示している。

 陳眞の墓にひとり訪れる岑濳波。そこへやってきた謎の男・何宗道に、ここへ訪れてはいけないと諭す。何故か?と訪ねる何宗道に、俺たち精武門の一員と間違われては気の毒だと次げる。「俺は陳眞の弟・陳山だ、兄の死因を探る為、上海にきたんだ」驚愕の岑濳波、じゃあ尚更逃げないとダメだ!その時、高飛、杜偉和ら虹口道場一味が現れ、岑濳波をいたぶり始めた。我慢の限界に達した何宗道が拳を振るい、今まで誰も勝てなかった日本人に、中国人でも勝てるということを見せ付ける。

 謎の男の情報に驚いた羅烈は、上海署の署長・曹健(前作で羅維が演じた役)を呼び出し、探るよう命じる。同時に李慧樓に指令を出し、市中に隠れ住む精武門師弟を炙り出す作戦を決行。
 田豐に知らせが飛んだが、プライドを捨ててしまい腰抜けとなった彼には事態が飲み込めなかった。岑濳波に連れられてやってきた何宗道は、現状を知って彼らの助けは借りれないことを知る。
 曹健も精武門に現れ、事件のあらましに何宗道が関わっていたことを知るが、「そもそも悪いのは日本人だろう、彼らを逮捕するなら出頭する」という何宗道に、かつてひとりで闘った陳眞の面影を見出す。

 何宗道の抵抗活動は続き、精武門狩りの度合いは激しさを増す。何宗道の手出しで兄を殺された葉海清は、「お前が余計なことをしているから・・・」と憎しみを吐露。事態の収拾に乗り出した武術界の長老連中(薛漢、余松照)らも、心情は理解出来るが、事をこれ以上荒立てたくないという事無かれ主義に陥っていた。
 羅烈の催促で捜査を続けている曹健だったが、言いなりになるばかりが中国人ではない!と言い置く。
 中国人武術家への無差別攻撃が開始され、田豐も現実に目覚め立ち直りをみせる。田豐に後を託し、ひとりで決着をつけるという何宗道だったが、長老たちの苦情と、曹健の薦めもあって、上海を去る決意を固める。
 列車で見送る曹健、「忘れるな、俺も中国人だ」と何宗道に語る。黙ってうなずく何宗道を乗せて列車が出発。だが、列車には何宗道を恨む葉海清の注進で、鹿村と南宮勲が刺客として乗り込んでいた。

 走る列車内で、それも他の観客がぎっしりと乗っている状況で繰り広げられるアクションがいい。深手を負った何宗道は列車から落ち、川に転落したのを見届けた鹿村は殺したと報告した。それを聞いた羅烈は、全中国武術界制圧のために抹殺指令を飛ばす。薛漢や余松照らも襲われ、自分たちには手を出さないという密約のあった葉海清は、裏切りの責任をとって薛漢を逃し息絶えた。
 深手の何宗道は岑濳波のもとへ舞い戻り、田豐や曹健に「兄と同じ末路を辿るな」と説得されるも、「俺が始めたことには、俺が決着をつける」と言い残す。

 襲撃の時期を窺い虹口道場を探る。薛漢らが匿われている場所に襲撃をかけると知りこれを救出。包囲網の敷かれた精武門を救い、鹿村&南宮勲を倒したものの、兄のヌンチャクを守った岑濳波だけは救えなかった。
 残すは羅烈のみ!虹口道場へと乗り込んだ何宗道に対し、武術家らしく正々堂々の決着をつけようとする羅烈。『龍虎鬥/吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー』以来の日本人演技に磨きがかかるが、羅烈の顔は中国人からは日本人顔だったのか?
 日本刀を捨て、あえて素手で勝負した羅烈と、一進一退の攻防が続く。一瞬の隙をつき、両手両足の筋を断ち切った何宗道は、あえて止めを刺さず「我々中国人は弱者ではない!」と伝え立ち去った。残された羅烈は切腹して果てるのだった。
 
 精武門は再建され、長老達も協力して中国人のため立ち上がった。だが、日本軍が支配する上海で、日本人を殺してしまった何宗道に隠れる場所などなかった。これ以上の追求が精武門に及ばぬ為、出頭していく何宗道。霍元甲と陳眞が祭られた祭壇には、誇らしげに形見のヌンチャクが掲げられていた・・・・。

 ところで、タイトルが『精武門續集/唐山大兄2』っていうのはヘンでしょ?これにつきましては、もうひとつの“精武門”続編モノ『截拳鷹爪功』にて!

『龍的影子』 [2005年10月17日(月)]

『龍的影子』'81年製作、監督、主演:何宗道ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーこの映画のウリはたったひとつ、"ダン・イノサント in そっくさん映画!!"である。『死亡遊戯』を除くイノサント先生唯一の香港映画出演がそっくりさん映画とは・・・。まあ俗に言う"そっくりさん映画"とは違う作品とはいえ、何を思って何宗道の映画になんか出たんだろうか? 弟子のジョン・ラダルスキーが助演で出ているので、たまたま香港を訪れた時かなんかに、ついでに出演して帰ったというのが本当のところだろうが、それにしても"そっくりさん映画"史上に残る快挙であり、ニセ・ブルース・リーと直系&本物の弟子の対戦というのは、ありそうでなかったレア対戦なのである。 後で紹介する映画ストーリーの出来は、正直に言って芳しいものではないのだが、何宗道VSラダルスキー、イノサントVS ラダルスキー、何宗道VSイノサントだけはたっぷりと堪能できる。 そっくさん役者相手に炸裂するカリ&JKDスタイル、それだけでこの映画の価値は決まったようなものである。 ところでこの映画にはいくつか謎が存在する。クレジットに出ている江島が本編に発見出来ないこと、とある資料によれば共同監督の名前に呂小龍の名前が見えることがそれだ。何宗道映画の共同監督が呂小龍!、結構凄くないか?コレ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー冒頭、たいした意味もなく何宗道とジョン・ラダルスキーの対戦が始まる。そのままクレジットになり、負けたラダルスキーは何宗道の舎弟に。 突然その場に電話がかかり、就職の決まった何宗道は、ロクに人物を見ない内に人事を決定する上司・張充文によって、保険会社の調査員に。営業部長・江洋の下で働くことになるが、口八丁で有閑マダム(趙[女亭])を勧誘する江洋を見て、現実の厳しさを知る。 ボンクラ時代の連れ(孫壽山、廖學明、本作の武術指導)を訪ねると、道場破りに間違えられて呉傑強に喧嘩を売られた。 映画会社を経営する魏平澳は、不渡りの出そうな会社を立て直す為、資金融資を受ける目的で何故か保険会社を訪れる。 対応に出た江洋は、"保険かけてあんたが自殺すれば会社は助かる"などと、冗談抜きの恐ろしい商談を始めるが、それにヒントを得た魏平澳は、自社のアクション・スター・"シェイキング・イーグル"司馬龍に多額の保険を掛け、その傷害保険で金を稼ごうと目論む。もちろん江洋もその話に乗った上だ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー有名スターからの大口契約に喜ぶ張充文は、怪我の危険が伴うアクション・スターを見張るべく何宗道を現場に送った。"保険屋なんて・・・"スターらしい傲慢な態度を取る司馬龍だったが、話の弾みでお互いの腕を確かめ合うと、体育会系らしく"朋友!"と呼び合う仲に。仕事のボーナスを貰った何宗道に、この話は旨過ぎるぜ!と忠告を送るラダルスキー。 将軍令をBGMに黄飛鴻映画らしきものを撮影している司馬龍。監督の魏平澳は、武術指導の彭剛と武師たちに言いくるめて、現場で事故が起こるよう仕組んであった。"ここはスタントを使うところだろ、俺は南派だから北派の動きは出来んよ"渋る司馬龍を説き伏せて、無理やり二階から飛び降りさせる魏平澳。 翌日、張充文に呼び出された何宗道は、現場で事故が起きないよう見張る指令を受けた。"怪我をされては適わん、保険屋は保険料は払わんものだ・・・"釈然としない指令だが、仕事なら仕方ない。 怪我が大したことなかったため傷害保険の給付金は微々たるもの。だがこれで儲けになることを知った江洋、魏平澳にもっと怪我させるんだ!と急き立てる。 恐らく、功夫映画史上最もスケールの小さい悪事である。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー練功小子片風の映画を撮影している司馬龍に合わせて、カットバックで意味もなく挿入される何宗道とラダルスキーの特訓風景。 司馬龍の出来ないアクションを求めて、彭剛の師匠・イノサントをフィリピンから呼び寄せた魏平澳。総武術指導として無茶な要求を現場に持ち込むが、何宗道が現場でストップをかけていく。"こんな危険なアクションはさせられん"、"貴様に危険かどうか何故わかる?"そんなやり取りの後、実は昔スタントマンだったと告白する何宗道。じゃあお前がやってみろ!という訳で司馬龍専属スタントに採用される。 こうなるともう傷害給付金は貰えない。そこでまず何宗道を怪我させてから・・・・。悪事のスケールが小さいと段取りも悪くなるのか。 現場を覗きに来たラダルスキーがイジメに遭っている何宗道のためにキレた。結局、武師軍団に袋にされるがイイ奴だラダルスキー。野外ロケで高所スタントに使うマットに針を仕込まれ、魏平澳の思惑通り怪我で戦線離脱する何宗道。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーところが、アメリカの会社から魏平澳の会社に提携話が持ち込まれたことから、事情は一変する。撮影中のラッシュを見たアメリカ人に、もっと激しいアクションを入れないと駄目だと言われ、どうしても何宗道のスタントが必要になってしまうのだ。 連絡不徹底から現場の方は当初目的通り司馬龍を追い込んでいた。喧嘩をふっかけるイノサントと司馬龍の間で闘いが開始。これも凄いレア対戦だ。 魏平澳に頼まれ怪我をおして現場に復帰する何宗道。その間にラダルスキーが狙われ、裏に何かあると睨む何宗道。遅いよ! 何宗道が凄いスタントを成功させて映画は完成。アメリカのバイヤーは大喜びだ。このスタントマンを売り出せよ、無責任なアメリカ人の発言はこの物語をいっそうの混迷に導くのである。 魏平澳もその気になり、落ち込んで女に慰められる司馬龍。マネージャーも務める女は"私が何とかしてあげるわ"と安請け合い。仕事を奪われたイノサントたちにも恨まれ、各地で狙われる何宗道とラダルスキー。イノサントVSラダルスキーに続いて、何宗道戦が実現。本作最大の見所たが、ここだけのために見る価値はある!ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー司馬龍のマネージャーは元・アクションスターで、現在は殺し屋のハロルド坂田に頼み何宗道暗殺を企む。危機を脱した何宗道が知った真実は、保険金詐欺をしていたが事情が変わったたため手を引いた魏平澳&江洋と、スターの座を奪われそうになって親友を殺そうとした司馬龍という悪事の構図だった・・・。 今イチどこに怒りをぶつけたら良いのか分り難いのが難点だが、社会的悪事(魏平澳&江洋)と個人的な怒り(司馬龍)を秤にかけ、全ての元凶は司馬龍だった!?ということにしてしまう何宗道。台湾の映画村に乗り込み、オープンセットを破壊しながら闘うふたり。何宗道VS司馬龍というのもレアな顔合わせ。最後はスタントの差で勝利し、アクションスターは普段から軽いスタントのひとつもこなさんとイカンという教訓を残し、ひとり静かに去って行く何宗道であった。  

ブルース・リーという名の商売(7)『決鬥死亡塔』 [2004年11月30日(火)]

ブルース・リーという名の商売(7)『決鬥死亡塔』'78(79説有り)年製作、監督:陳天泰、主演:龍天翔ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー本物のブルースの写真にナレーションが被り、ブルースの死が説明される。OPから葬儀の場面へと繋がり、『大蛟龍/大天二』の製作発表、そしてまた葬儀の場面。これらは全て無断使用によるものだ。 映画の撮影現場、ブルースの役は龍天翔。張徹門徒のショウブラ・スターだが、この時の芸名は"Bruce Lee 小龍"、舐めた芸名である。 この撮影現場で羅維が夫人の劉亮華に、不審な電話が続いているからブルースの動向に注意するよう促す。撮影終了後リンダが迎えにきて、帰宅しようとするブルースにマフィアの手下・スタイナーが近づいてくる。彼らはブルースに新しい契約を迫っているのだ。 しつこく追いまわすスタイナーは、深夜家に忍び込みリンダに妥協案を出す。「別の会社のプロモーションが済むまで奴を眠らせてろ、さもないと大変なことになるぜ!」渡された薬が毒ではないと念を押されたリンダだったが・・・。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー何故か『ドラゴンへの道』の映像が延々と挿入され、深夜にも関わらずふたりで出かけていく。ナイトクラブではゲストの丁珮(ベティ・ティンペイ)が歌を唄っていた。電話で呼び出されたブルースが席を立つと、以前からリンダに言い寄っていた張崇陽がやってきた。「あの丁珮と旦那はデキているんだぜ」張崇陽を突き放すリンダ。またも『ドラ道』映像、意味判らん。 帰宅したブルースがシャワーを浴びていると張崇陽が銃を突きつけ例の薬を飲ませろと迫る。物陰から銃で狙われたリンダは渋々ながらコーヒーに薬を混ぜる。SEXの最中に突然苦しみ始めたブルースはそのまま死亡。後にはリンダがそのまま残された。 悲しみにくれるリンダのところへ新しい老召使が仕事の報告に。 その頃、ブルースの新作映画『死亡遊戯』(本物の新聞記事使用)がゴールデンハーベストから発表された。驚くランド社長はスタイナーに真相を探るよう命じた。アメリカの葬儀に使われた棺の中が空だったとの報告を受けたスタイナーは、リンダの後を追う。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー独り佇むリンダのもとへあの老召使が近づき、ブルースの死の真相を問いただす。悲しみにくれるリンダは全てを告白。「・・・私が殺したのよ!」ショックを受ける老召使。変装の下から現れた素顔は・・・・ブルースであった。どうやって毒を見破ったのか、どうやって今までリンダに死んだと信じ込ませたのかの説明は、無い! 騙されたと知って逆ギレのリンダは、車に飛び乗り去っていく。妻に殺されていたと知ったブルースは、李文泰のところで修行をしている唐家拳に因縁をつけてこれを倒す。唐突に行われるこの場面の説明はセリフひとつ存在しない。 リンダは張崇陽に捕まりレッドペッパータワーへと連れ去られる。リンダ救出に向かうブルースは、波止場で例のトラックスーツをきたバイカーと対決。バイクと一緒に黄色のトラックスーツを奪い、レッドペッパータワーへと向かう。イノサント、相撲取り、ボクサーを倒し、駐車場で手下を蹴散らしたブルースは、ランド社長を追い詰める。ランドをボコっているとパトカーのサイレンが聞こえ、ブルースが逃げ出したところで唐突にThe End。 場面は変わり龍天翔のトレーニング場面が挿入され、この映画の主役"Bruce Lee 小龍"が紹介される。「彼はこれからブルース・リーのように成功するでしょう」とナレーション。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー酷い、最悪かつ悪趣味である。ストーリーも酷いが、ほとんど無名の役者ばかり登場する画面の安っぽさ、陳腐でチープな演技、映画の演出技術も滅茶苦茶だ。この映画を製作したのは「和欣有限公司」、プロデューサーは張繼元と張宗陽。この映画が黒社会がらみであるとの噂は、映画の作りからいっても間違いないところであろう。 アクション場面は良く出来ている。それもそのはずで、武術指導はサモ洪金寶なのだ。 ハーベストでクローズ版『死亡遊戯』を撮影していたサモは、台湾の映画会社に大金で招かれ(拉致の噂あり)、クローズ版と同じアクションを作るよう強要された。 バイクチェイスからタワーへと至る場面、イノサント(本人ではない)戦の展開は本家とほぼ同じである。 これが拉致だという噂を裏付けるのは、いくら大金とはいえ、それだけでクローズ版撮影途中に台湾で映画を撮るとは思えないということだ。ハーベストは秘密保持のため何重にも契約書を書かせていたというし、ハーベストから貰っていた金も相当のものだろう。 サモが台湾でモドキ映画に関わったことが鄒文懐(レイモンド・チョウ)の耳に入らないはずはなく、それによってサモが何らかのペナルティをも受けてはいない事からも、この映画は黒社会によって拉致されたサモが、無理やり作らされたという噂を肯定するのである。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーブルース・リーという名の商売、それは今後とも半永久的に続けられる闇のビジネス、その闇は深く、そしてとてつもなく広いのである。

ブルース・リーという名の商売(6)『詠春興截拳/詠春截拳』 [2004年11月29日(月)]

ブルース・リーという名の商売(6)『詠春興截拳/詠春截拳』'76年製作、監督:陳華、主演:何宗道ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー何宗道(黎小龍=ブルース・ライ)主演作だ。呂小龍(ブルース・レ)、巨龍(ドラゴン・リー)とくれば何宗道も登場しなくてはなるまい。 数ある何宗道作品からは、やはり彼の最大の特徴たる"傳奇"モノを紹介したい。真摯に作られた『李小龍傳奇/ブルース・リー物語』は、最初のブルース・リー傳奇であった。 この映画だけであれば、彼もブルース・リーをやらされていたことがトラウマにはならなかったかもしれないのだが、02/10/26に紹介した『唐山截拳道』や、この作品のような傳奇映画のようなモノにまで出演してきたことが彼を苦しめた。 ところでこの映画、中国題でも二通りあるが、英語になると五通りも存在するため、タイトルに騙されて同じ作品を何度も購入する被害が続出している。『STORY OF THE DRAGON』『BRUCE LEE'S SECRET』『BRUCE LI'S JEET KUNE DO』『A DRAGON STORY』『HE'S A LEGEND HE'S A HERO』これらは全て『詠春興截拳/詠春截拳』のことだ。 ややこしいことに『BRUCE LEE A DRAGON STORY』という別の映画も存在し、これが『一代猛龍/詠春大兄』のことだったり、『HE'S A LEGEND HE'S A HERO』というタイトルで『奪命截拳道』が出ていたりするため、更に混乱の度合を深めている。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーこの手のパチもん傳奇の楽しみは、本物のブルース・リー傳奇に近づけようとする努力と、そこから脱輪していく逸脱感にある。となると、ブルース・リーその人に精通していることが映画を楽しむ条件になってくるため、案外と見る人を選ぶ映画でもあるのだ。 この映画はブルース・リーがアメリカに到着してから始まるので、まずはそこの所だけは抑えてから話を進めたい。 サンフランシスコへとやってきたブルースは、父の知人を頼ったがそこを飛び出しシアトルへ。有名なルビー・チヨウのレストランはここで、住み込み店員として学業を修める。ワシントン州立大学へ進み、駐車場の片隅で最初の功夫教室を開く。ターキー木村の挑戦を受け、これを倒して尊敬されたブルースは、彼と親友になり「振藩國術館」を開設。キャンパスで出会ったリンダとの結婚を機に大学を中退、李峻九の進めもあってオークランドへ。 中国人以外には門外不出であった武術を、アメリカ人に教授していることから、在米中国人から抗議を受ける。意に介さないブルースにウォン・ジャックマンという代表者が挑戦に現れた。すぐに片付けられると踏んでいたブルースだったが、勝てないと感じたジャックマンは逃げ回って仕留められない。クロース・イン・ファイトを身上とする詠春拳がベースのブルースにはこれがショックで、この経験が截拳道創始に繋がっていくのである。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーこの映画『詠春興截拳/詠春截拳』はこの部分を下敷きにして作られている。 サンフランシスコにあるルビー・チョウ(呉燕)のレストランで働く何宗道と親友の曾明昌。ふたりは大学そっちのけでひとやま当てることに余念がない。功夫オタの何宗道は、トレーニングに熱中するあまりバイトにすら身が入らない。遅れてやってきた何宗道、店で暴れる白人客を蹴散らしたが、バイトはクビになり、白人からは恨まれた。 港の労働者として働く日々、社長(蘇祥)の娘・泰之敏はワガママで、ボンクラな二人を明らかに見下していた。白人たちは空手の師匠である"黒人"の林仲に相談。怒った林仲は波止場に乗り込んできたが、泰之敏のいとこ・黄家達(カーター・ワン)が登場。おいしい所は全部持っていった。やっぱりボンクラね!泰之敏に罵られるが、何がやっぱりなのか、そもそも何でそんなに嫌われているのかが、何宗道はおろか、観客にも一切伝わらない。 林仲は師匠のロイ・ホランに相談し、そのホランは何宗道が倒したことで、中国人社会のヒーローへとなっていく。マカオに「振藩國術館」を設立した何宗道に激しくジェラシーを燃やす黄家達。そりゃそーだ、だって最初にやっつけたのは黄家達だもんな。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー中国人以外に功夫を教えることはならん!中国人社会を代表して挑戦を表明した黄家達だったが、あっさりと軍門に下り、インストラクターとして働く日々。ウォン・ジャックマンとターキー木村を足したキャラを一人で担う黄家達、大変だな。 ロイ・ホランの師匠・ロバート・カーバーは、アメリカの面子をかけてマカオの「振藩國術館」を潰すことを宣言、韓国から黄正利を呼び寄せた。ここで黄家達VS黄正利、何宗道VS黄正利が実現。これを喜ぶ人がどのくらいいるかは不明ながら、レア対戦マニア垂涎の顔合わせだ。黄正利のテコンドー攻撃に、踏み込めない詠春の何宗道。 一敗地にまみれ失意の何宗道に、師匠・葉問の言葉が響く。木人相手の打ち込みと、師匠との"チーサオ"からヒントを得て、何故かステップワークでテコンドーの攻撃レンジをかわすことを思いつく。ちなみにだが、葉問とのチーサオ場面は、残されたブルースと葉問のスチールに似た画を作っています。細かいね。 改めて黄正利を倒し、ロバート・カーバーのところへ『燃えよドラゴン』のように乗り込んだ何宗道は、傲慢な白人に截拳道の教えを体でわからせるのだった。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー当時もそうだったろうが、今見ても一体何が目的でこんな傳奇モノを作っていたのかが不思議である。ストーリーを読んで貰えばわかると思うが、実際のブルース・リーの人生を実に中途半端になぞっているのだ。ブルースが好きな人なら周知の事実であり、その人たちからはおそらくこの映画は認めては貰えないだろうし、知らない人には説明不足だったりマニアックだったりして、何のことだか分からない。 何宗道に限ってこんな傳奇が何本もあるのも不思議だし、その全部を並べて見ると、どの映画も整合性がとれていないことに驚くばかりである。ブルース・リー・ビジネスとして最も深いところでこれと関わり合った何宗道、彼は自分の人生を非常に恥じて悔やんでいるのだ。観客は気持ちを切り替えさえすれば、こんな映画でも楽しむことは出来る。実はこの人が一番の犠牲者ではないか。次回へ

ブルース・リーという名の商売(5)『THE GOLDEN CHAKU/THE GOLDEN KARATE CHAKU』 [2004年11月22日(月)]

ブルース・リーという名の商売(5)『THE GOLDEN CHAKU/THE GOLDEN KARATE CHAKU』製作年度不明(70年代?)、監督不明、主演:Ray Malonso(Bruce Ly)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーこの映画はフィリピンで作られた"ブルースプロイテーション"映画である。フィリピンは東南アジアではインドと並ぶ功夫映画大国で、その歴史も古い。その初期の形態は60年代頃から見られ、日本でも名の知られたトニー・フェラー(『黒龍/激突!ドラゴン稲妻の対決』)などその頃からのスターだ。 "スティックファイター"ローランド・ダンテス(フィリピン・ロケしたチャック・ノリス作品『デルタフォース2』において、ノリスとのアクションが一瞬だが確認出来る)、そのダンテスと人気を二分したラモン・ザモラ、このふたりがフィリピン70年代の功夫の歴史である。他にもロベルト・ゴンザレス、トロバダー・ラモス(『絶招/怒れタイガー必殺空手拳』)、ガブリエル・ロムーロなどが覇権を競った。 フィリピン功夫の監督で最も有名なのはシリオ・H・サンチャゴであろう。欧米の出稼ぎ役者(リチャード・ハリスンとか、あとリチャード・ハリスンとか・笑)を使いグローバル感を演出するのは無論、香港映画界での修行の成果を生かし、手馴れたエンターテイメントを見せた。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー80年代の"アキノ革命"による経済危機で一時凋落した映画産業だったが、90年代には持ち直したといわれている。70年代の最盛期のように年間250本もの製作こそしなくなったが、それでも100本ほどの国内映画製作のほとんどが娯楽作品なのだ。 現在も元彪主演の『怒海威龍』に出演したモンサワー・デル・ロザリオなど、優秀な功夫スターを輩出している国である。 この映画の主演スター・"メイヤー"レイ・マロンゾは、欧米ではブルース・レイ、もしくはレイモンド・キンと呼ばれている。フィリピン功夫界のブルース・リー"そっくりさん"の草分けであり、この『THE GOLDEN CHAKU/THE GOLDEN KARATE CHAKU』の他にも、『CHAKU MASTER』という"ブルースプロイテーション"に主演していることが判明している。ちなみに、"CHAKU"というのはどうやらヌンチャクのことを指すらしい。フィリピン語なんだろうか?気になるところではある。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーフィリピンの空港に降り立つレイ・マロンゾ、バックの音楽は何故か和風だ。ちょっと羅烈に似たタクシーの運ちゃんに捕まり、無理矢理フィリピン観光。やたら愛想のいい羅烈・・・もとい運ちゃん、どこでも行きますよ旦那!ってなことを言っているに違いない。 『精武門/ドラゴン怒りの鉄拳』のOPスタイルに、ブルース・リー・サングラスといういでたちのマロンゾ、俺の行きたいところへ連れて行け!と運ちゃんを一喝。着いた先は生徒全員が"怪鳥音"の練習をしている適度に狂ったスポーツ・ジム。 小型の比産ロン・ジェレミーに案内され、ジムの会長と商談に入った。金は持ってきたか?という会長に、札束の入ったアタッシュケースを渡すマロンゾ。どうやら彼は伝説のゴールデン・チャク、すなわち金のヌンチャクを探しているのだった。 取り出されたのはやたら鎖の長いヌンチャク。ニセモンじゃねぇか!金返せ!当然のことながら怒るマロンゾに、会長は一言"返せませんな"。やがて始まる大乱闘、運ちゃんも加勢に加わった。その間に金持って逃げる会長。ところでマロンゾ、アクションの方は中々である。多分テコンドーやってたんだろうな。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー手下を締め上げ会長の居所を吐かせるマロンゾ。さ、行きますか。運ちゃん商売上手である。 金持って逃げた会長一味、"困ったことになりましたな"、"仕方ありませんな"と、気のない会話を続けている。金は返したくないし、我々もゴールデン・チャク探しますか?という提案にとりあえず乗った。 田舎町でヤクザに絡まれる運ちゃん、『燃えよドラゴン』のサントラ・バックに大暴れ!でも警察にしょっぴかれた。警察で70年のミス・フィリピン(OPクレジットに記載)に助けられ釈放された運ちゃん、帰宅して父親に女神に会ったと話す。ミス・フィリピンはヤクザの娘で・・・・マロンゾはどうした!マロンゾは!と思っていたらマロンゾ登場。理由は不明ながら何故か闘っているぞ。ここでもバック・ミュージックは『燃えよドラゴン』だ。取りあえず敵を蹴散らしたマロンゾ、公園を掃除しているおじさんに運ちゃんの行方を尋ねる。知っているとは思えなかったが、何故かおじさんは知っていた。友達と再会し海で・・・・ヌンチャクはどうした!ヌンチャクは! 行きがかりとはいえ真面目にヌンチャクの行方を追っている会長一味。それに引き換えマロンゾの奴は、運ちゃんの妹エミリーとの許されない恋に身を焦がしていたのだった・・・。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー運ちゃんの父親が何者かに殺され、何の理由もなく真っ先にマロンゾを疑う運ちゃん。奴がやったんだ!苦悩するエミリー。 しかしヌンチャク探すか、せめて会長の行方を追えよ。 いつのまにか知り合いになっているミス・フィリピンとエミリー。苦悩を打ち明けるエミリーをミス・フィリピンが慰めているところへ、会長一味が乗り込んできた。ミス・フィリピンのヤクザな父親が、どうやらヌンチャクを持っているらしい。 仲間割れしていたが闘っているうちに何時の間にか仲良くなるマロンゾと運ちゃん。疑いは晴れたのか? そこへ、助けて!ミス・フィリピンが攫われたの、とエミリーが。三人が駆けつけるとそこにはミス・フィリピンの父親が瀕死で倒れていた。 すまん親父さんを殺したのはワシなんだ。娘を頼む、ヌンチャクも関係してるからさ・・・。映画の全てに整合性をつけるための告白をし、観客を置き去りにしたままミス・フィリピンの親父は死んだ。 ヌンチャクは運ちゃんの親父が埋葬された棺に隠してあった!そこへ押し寄せる会長一味・・・・・もういいっしょ?この映画これ以上書かなくても。 ちなみにではあるが、レイ・マロンゾって誰に似てるかっつーと、ブサイクで色の浅黒い松村雄基という感じ。松村雄基とブルース・リー・・・・判断は皆様にお任せいたします。次回へ

ブルース・リーという名の商売(4)『太極拳』 [2004年11月21日(日)]

ブルース・リーという名の商売(4)『太極拳』'74年製作、監督:鮑學禮、主演:陳沃夫ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーブルース・リーの死後、世界中が"ブルースプロイテーション"に沸いた。アメリカ、ヨーロッパは無論、中東、アフリカ、東南アジア、日本に至るまで、何らかの形でブルース・リーをビジネスにしたといっても過言ではない。とりわけ香港・台湾が熱心だったのはいうまでもなく、"そっくりさん"という特異なビジネスが、最も成立したのは皮肉にもブルースのホームグラウンドであった。 ブルース・リーを擁立していた嘉禾(ゴールデンハーベスト)も第二のブルース・リーを追い求めたし、独立プロに至っては言わずもがなだ。 ところで、アメリカから凱旋したブルース・リーが、最初に接触した映画会社は邵氏(ショウブラザース)であった。交渉は不首尾に終わり、ブルースは新興のハーベストと契約。大ブームを起こしたことは良く知られている。 その時ショウブラは何をしていたのか? その答えがこの『太極拳』の中にあるのだ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー70年代の大ブームの最中、それに背を向けた会社はショウブラくらいのものであったろう。それには理由がある。 胡金銓(キン・フー)によって武侠映画の新世紀を開き、ブルース・リー登場以前に"陽剛"ブームを起こしていたショウブラは、姜大衛、狄龍を筆頭に、陳觀泰、傅聲等々自前のスターにはこと欠かなかった。監督、武術指導もしかりで、皆が皆ブルース・リーの後を追うなら、老舗の意地にかけても安易に真似をしないだけの陣容は保有していたのである。 そのショウブラが作った唯一の"ブルースプロイテーション"は、李修賢(ダニー・リー)主演の『一代巨星/実録ブルース・リーの死』くらいのものであろう。これとて本来は自社の女優である丁珮(ベティ・ティンペイ)の側から見た伝記である。 実はこの『太極拳』こそが、ブルース・リー・ブームの影響下で作られた唯一の映画なのである。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー冒頭、鄭天熊による太極拳の演武がある。本編には登場しないこの人物は一体何者か? 武術に詳しい人ならばご存知であろう。呉鑑泉門派の太極拳師傳・鄭天熊は、楊露禅から受け継がれる実戦派太極拳の正統である。彼の著述「太極拳述要」は、太極拳の実戦要諦を説く武術の名著として知られている。現在も子息・鄭鑑恩に受け継がれた彼の理論は、香港太極拳協会で中心を成している。 この映画は香港太極拳協会の全面バックアップによって製作されたのだ。その理由はブルース・リーにある。 日本でもそうだったが、ブルース・リー・ブームの副産物として、空手や少林寺拳法の入門者が激増したことが挙げられる。それは香港でも同じであった。特に香港でブルース・リーが入門していた詠春拳は盛況で、太極拳協会がこの事実を見逃すはずはなかった。 武術家としてかどうかはともかく、競技人口が最も多い中国武術は、今も昔も太極拳であろう。映画製作者もこの事実に目をつけた。 "太極拳の映画を作ればその門弟達が大挙として劇場に駆けつけるに違いない" こうして両者の思惑は一致し、鄭天熊を映画の技術顧問に迎え、この企画がスタートしたのである。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーブルース・リー・ブームが起こしたもうひとつの副産物は、映画界で武術畑の人間に脚光が当たったところだろう。従来なら地味な俳優だったり、悪役面だったりした人間でも、武術の腕が確かなら主役が貰える様になったのである。陳星、梁小龍、李錦坤、譚道良、金剛・・・・・etc、"そっくりさん"とは違うが、彼らもまた間接的にはブルース・リーのフォロワーだったといえる。 この映画の主役・陳沃夫は実際の太極拳有段者で、香港太極拳協会からのお墨付きでデヴュー。実は、ほんのちょっとだけブルース・リーに似ている。(本当は"そっくりさん"俳優・何宗道の方に似ている) 映画もブルース・リーもどきだ。 不戦の誓いを立てた工員・陳沃夫、彼の働く工場では工場長・楊澤霖と工員との間で対立が続いていた。激派の工員・何漢洲は工員を指導する精神的支柱だ。工員のひとり沈勞の娘・陳美華は、病気の母のため資本家・韋弘の家にメイドとして働きに出る。武術オタクの韋弘は家に巣食うゴロツキ・森とその手下・王光裕から、太極拳の実戦性を聞かされ、その師傳である楊志卿に面会を申し出る。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーメイドの陳美華をレイプし、面会を断られた腹いせに森に楊志卿暗殺を指示。工場長の楊澤霖もヤクザの李敏郎に何漢洲殺しを依頼していた。だまし討ちに遭った楊志卿は瀕死の状態で帰り着くと、娘の施思と一番弟子の陳沃夫に逃げるよう命じた。逃げた陳沃夫は臆病者の謗りを受けるが、最後は施思と共に復讐に立ち上がり、呉池欽、雷龍、梁尚雲、鮑嘉文、利榕傑、袁信義、元奎らを連れた韋弘と対決する。 前半の工員と資本家の対立は『唐山大兄/ドラゴン危機一発』風、後半の復讐行は『精武門/ドラゴン怒りの鉄拳』風である。 呉派太極拳の実戦性と、ブルース・リーに似た容姿、ブルース・リー映画に似たストーリー、陳沃夫とこの映画は立派に"ブルースプロイテーション"の条件を満たしているのだ。ではこの映画は成功したのか? 74年の興行成績では21万HKドル、製作費の多寡にもよるだろうが、この年のヒット基準は最低でも45万HKドルであろう。(1位は『鬼馬雙星/Mr.B00!ギャンブル大将』の620万HKドル)とてもではないがヒットと呼べるレベルではない。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーその原因はひとえに太極拳協会の全面協力にあるのではなかろうか。劇中にも楊志卿と陳沃夫の練習場面で明示されるが、太極拳は専守防衛を基本とする技であり、あくまでその技は己の身を守るためのものだ。それゆえストーリー上で主人公の陳沃夫は全く闘わない男であり、その彼を復讐に立ち上がらせるまでにかなりの犠牲を強いることになる。この時代の功夫映画は、表面的にはどれもこの映画と同じようなストーリーではある。だが受動的な主人公を奮い立たせるためとはいえ、町中の人間はおろか、師匠の娘にまで腰抜け呼ばわりされるというのはどうかと思う。 陳沃夫はこの映画一本にしか出演していない。それは映画がヒットしなかったからでは、ない。撮影終了後、ショウブラの宿舎で風呂に入っていた彼は事故で死亡してしまったのだ。その事故がどういうものであったものかは不明(当時の映画雑誌でこの映画について書かれた記事にも事故としか書かれていない)で、転倒による殴打が原因か、入浴中の睡眠による水死か、心臓発作等によるものか一切わかっていない。彼はこの映画の完成上映にすら立ち会わずに世を去ったのである。このことが原因か、映画がヒットしなかったが理由かは不明だが、香港太極拳協会が全面的に映画に関わる事は以後なかった。次回へ

ブルース・リーという名の商売(3)『鷹拳』 [2004年11月10日(水)]

ブルース・リーという名の商売(3)『鷹拳』'79年製作、監督:何誌強、主演:巨龍、黄家達ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーこの映画は、とある資料によると79年製作の台湾映画で、監督は何誌強(ゴッドフリー・ホー)ということになっている。多分全部嘘っぱちだ。黄家達が出演しているので台灣か香港の資本も入っているのかもしれないが、出演者の顔触れからみても間違いなく韓国映画だ。79年製作という点も引っかかる。黄家達は79年頃といえば、『雍正命喪少林門』や『天羅・飛沙・夕陽紅/叛徒』に出演していた頃だが、その頃にくらべてやや太っているようだ。アメリカで『ゴーストハンターズ』(86)に出演していた頃ほどではないが、79年というのもどうかと思う。(カットによって太り方も違う気が・・・追加撮影か?) 監督については言うまでもない。何誌強名義で発表された映画のほとんどが、韓国映画を買い付けて勝手に自分名義に変更、台湾や欧米に売っていたものだったのだから。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーこの映画くらいになると、ブルース・リーは最早何の関係もない。巨龍(ドラゴン・リー)にしてからが、リー・スタイルではなくなってしまっている。タイトルは『鷹拳』だが、螳螂拳になったり蛇拳に変化したりする動きで、しかも基本はテコンドーだ。まあ、これでも欧米ではブルースプロイテーション映画として売られているのだから、何誌強ばかりは責められないのだが。この映画最大のセールスポイントは巨龍と黄家達の顔合わせにあると思うが、ふたりの出番はあまり多くはない。行方不明の父と、消えた秘宝を探る物語は、町の警察長官=黄家達、その息子たち=巨龍、マーティン・チュイの三人でバラバラに進むのだ。一番出番が多いのは韓国俳優のマーティン・チュイで、その間は韓国の俳優ばかりで物語が進行していくのだが、これってやっぱ別撮りなのか?別の映画をツギハギしたとも思えないが、三班体制で作っていたのだろうか?ま、何にせよ安っぽい謎の多い映画ではある。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー韓国のとある田舎町では"中国の秘宝"が発掘されていた。その作業をしている人足の中に秘宝を横流ししているものがおり、直情径行で正義感の強いマーティン・チュイは怪しい人足をド突いていた。町の警察長官・黄家達は「程々にしておけよ」というばかりだ。発掘現場で作業をしていたマーティンの父が、謎のオガワゴム・マスクの男に襲われ、秘宝と共に姿を消す。後には人足の死体が残されていた。巨龍の父も姿を消し、黄家達を含むそれぞれの捜索活動が、てんでバラバラに開始される。お互いの疑心暗鬼は対立を生み、小さな田舎町は騒然となるのだ。避けられない対立に発展したマーティンと巨龍を止めたのは黄家達だ。証拠がない以上、法を遵守しなければならないと、最もらしいことを言うのだ。発掘作業に関わっていたマーティンの叔父の動きは不審だったが、ついにその正体を顕わにした。実は秘宝の盗掘を指図していたのは黄家達で・・・・って、この映画の展開ならそれ以外有り得ない訳だが、突然誰が見ても怪しい行動をとりはじめる叔父ってのもなぁ。叔父を疑ってその動向を追うマーティンに比べ、全く真相に近づいてもいなかった巨龍は呑気に洞窟探検をしていた。止せばいいのに、そんな巨龍に刺客を送り、感づかれてしまう盗掘団。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー秘宝の独り占めを企む黄家達は、村はずれで叔父を殺し、全ての罪を擦り付けるつもりでいた。が、致命的なことに止めを刺さない!というミスを犯してしまう。かなり真相に近づいたはずなのに、この後に及んでまだ巨龍を疑うマーティン。脚本が破綻していると言ってしまえばそれまでなのだが・・・・・。蛇猴拳使いのマーティンVSもはや何拳だか判らない動きの巨龍の闘いは、決着がつかない。叔父の死体(力尽きて発見し易い場所で死んでいた)を発見した巨龍の手下は、死体の側にあった秘宝を手にする。都合が悪いことにそこをマーティンに発見されなぶり殺しに。その頃、巨龍は黄家達にマーティン犯人説を力説していたのだった。しかし、そこで黄家達の手下が泥に汚れた靴を履いているのを発見! だからどうしたとも言えそうだが、ここで巨龍は全ての真相に行き着くのであった。最後は、何時の間にか真相に気づいたマーティンが黄家達にやられ、巨龍との一騎打ちに。全然歯が立たない巨龍を救ったのは黄家達の妹だった。負けた巨龍を色仕掛けで慰め、とりあえず兄を巨龍の復讐から救おうとする妹であった。兄にも悪事を止めるよう説得を試みるが、ふたりとも耳を貸す気は全くなかった。闘いの途中で、完全に別の衣装に着替えてきた黄家達の弱点を制して、これを倒す巨龍。バカ映画、といえるほど弾けてはいないが、それなりに楽しめる映画なのだ。次回へ

ブルース・リーという名の商売(2)『新龍争虎鬥』 [2004年11月09日(火)]

ブルース・リーという名の商売(2)『新龍争虎鬥』'80年製作、監督:朴佑箱、主演:李俊九ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアメリカ・テコンドー界の父といわれる李俊九の韓国での主演作。李俊九といえばアメリカでのブルース・リーとの親交が有名で、ゴールデン・ハーベストはその知名度から茅瑛(アンジェラ・マオ)と共演させた『[足台]拳震九州』を製作。リーの死後である73/9月に公開、100万HKドルを越すヒットを記録。だがその後、李俊九は香港映画界に定着することはなく武術の世界へ帰っていった。何故彼は映画界を去ったのか?それは明らかにされていないので分らない。李俊九の技は確かに凄いのだが、この人見た目は実に貧相なおっさんなのだ。スター性の欠落、これが大きな要因だったことは間違いではあるまい。李俊九自身が映画界の水に馴染まなかったという事もあるだろう。それを示すエピソードがこの映画の冒頭に出てくるのだ。映画のアクション場面を撮影している李俊九、やりすぎで何度も監督、武術指導から注意を受け、現場を投げ出してしまうのである。案外と本人にも似たような出来事があったのではないだろうか?ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーこの映画は韓国で作られた『龍争虎鬥/燃えよドラゴン』だ。ストーリーは全編ハングルで字幕も無いため細かい内容はまるで解らない。俳優の名前も李俊九以外はほとんど判らないため、役者名の判らない俳優は『龍争虎鬥/燃えよドラゴン』に当てはめて紹介します。白人空手家のランディ・アンダースは、アーノルド・ユキーデに似たマーシャルアーティストと対戦。ハンの島での試合についての情報を得る。大道芸の親父はヤクザにショバ代を要求されボコられる。失職した親父、軽業を生かして映画界入り、スタントマンになった。そこで李俊九と出会い、彼の生き方に共感して勝手に付きまとう。大掛かりなトーナメントが開催されるハンの島。多くの男たちが道着で組み手を披露、それを満足気に見ているハン。旧友のチャック・ノリス似のジャップ・スミスと組み手を見せるハンの動きは凄い。ふたりは回想に浸る。若きハンの修行中、父の死亡の知らせが入る。スミスは優しく励ましてくれたのだった。そんなスミスをウナギを目の前で捌いてもてなすハン、ふたりは熱い友情で結ばれているのだ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーナイトクラブでテコンドーの演武をして暮らす李俊九。勝手についてきて離れない親父はすっかりマネージャー気取りだ。そこへ、やっぱりというか何というか・・・ヤクザがショバ代を取りにやってきた。得意気にそれを蹴散らす李俊九であった。モンゴル人を連れてお礼参りにくるヤクザと擂台戦で闘う、その姿をランディとスミスがじっと見ていた。会場でスミスをみつけたランディ、後をつけて襲い掛かる。ふたりの間には遺恨があった、らしい。それにしてもテコンドーばっかりで代わり映えはせんが、皆アクションは素晴らしいのだ。負傷したランディを助けたのは林銀珠、運良く彼女は針名人だった。モンゴル人はハンの手下だった、ナイトクラブのショーに乗り込んだハンとスミスは、李俊九に挑戦。気功を披露する李俊九をボコったスミス、ステージの間こそ耐えた李俊九だったが幕後に倒れ込む。親父は近くの針医師に李俊九をみせるが、そこが林銀珠のところ。勝利に酔うハンたち、何故か『グリース』の"恋のデュエット"が無許可で流れる中ダンスを披露するスミス。それを見つめる親友のハンもうれしそう。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー李俊九はすっかりラブラブの林銀珠とランディに頼まれ、テコンドーのコーチをすることに。その頃、ハンの島にも続々と世界の武術家達が集結し始めていた。モンゴル人に捕まった親父はハンの島で家畜扱い。ひとりハンの島乗り込むランディ、林銀珠の知らせで李俊九も後を追った。コリアン・ムード満点のハンの島に潜入した李俊九、楊斯モドキやジム・ケリー・モドキと闘い、島の中心を目指す。ランディはスミスと一騎打ちだ。映画上格段に腕を上げたことになっているランディだが、動きは明らかにスミスの方が上だ。立場上ランディに倒されるスミス、親友ハンの怒りが炸裂した。短い間でも弟子は弟子、ランディの窮地を救うべく李俊九はハンに挑む。李俊九に遠慮したのか今イチ動きの悪いハンを倒し・・・・たところでプツっと終わるのですが、それはこのビデオだけなのかどうか。別バージョンを取り寄せてまで確認する気にはならないのだが、昨今の"韓流ブーム"とやらで騒いでいる人間に、見せてやりたい気はするのだった。次回へ
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