劉家良(29) [2005年08月31日(水)]
劉家良(29)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー『酔拳3』は、"『酔拳2』を途中降板させられた劉家良がジャッキーへの対抗心で、ジャッキー抜きの『酔拳』続編を作った・・・"といわれていた。これは真っ赤な嘘である。『酔拳3』が最初から『酔拳3』であったのかどうかは判らないし、そればかりか、黄飛鴻を主人公にした映画であったかどうかも不明なのだ。 当初この映画を指揮していたのは蕭榮というベテラン映画人である。ショウブラで助監督として程剛作品『十二金牌』に関わり、独立してからはケ光榮の『血洗唐人街』や、秦祥林の『追殺』などを監督。 その蕭榮が新人・季天笙を主演に、『酔拳2』に便乗した映画を撮ろうとしていたのだけは確かなのだ。ところが、季天笙のネームバリューを考えて大物ゲストを客演(劉徳華、任達華)させていたことが現場を混乱させてしまった。その混乱を抑えるためか、最初からそれが目的で混乱させていたのかは不明ながら、『酔拳2』を外された劉家良が呼ばれた時点で、この映画の方向性が決定したのだ。現場に到着した劉家良を待っていたのは、底の着いた製作費に、出演契約日数が残っていない客演俳優だった。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー劉徳華は2日、任達華は3日しか現場に残れず、大陸ロケの武術指導を担当していた胡堅強もずっと現場にいる訳ではない。 仕方なく劉家輝や劉家勇を呼び寄せて協力させたが、これではまともな作品に仕上がるはずもなく、劉家良にとっても悔いの残る作品となってしまったのである。 映画の出来を見て判断されたものか、それとも最初から狙って仕組んだものか、劉家良が作品に加わったことでこの映画は"『酔拳2』への対抗心で作られた・・・"という宣伝プランが立てられた(元・成家班の李建生が製作に加わっていたことも噂に拍車を掛けた)。それ以外に売る方法が無かったとはいえ、『酔拳2』公開後に手打ちを済ませた劉家良とジャッキーにしてみれば、随分と心外だったに違いない。後に蕭榮はやはり季天笙主演で『小酔拳』という映画を撮っているが、蕭榮が本来やりたかったのはこれだったのではないだろうか? 『酔拳3』の話を伝え聞いたジャッキーは、自分なりの黄飛鴻三作目として"黄飛鴻西部へ行く!"のアイディアをインタヴュー中で語っていたが、このネタを話した徐克とサモによって『黄飛鴻之西域雄獅/ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ・アンド・アメリカ天地風雲』としてパクられてしまう。 結局このネタは『SHANGHAI NOON/シャンハイ・ヌーン』として実現するが、これが当初の企画通り『酔拳3』であったとしたらどうであろうか。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーこの映画の後、劉家良は沈黙をしてしまう。理由は喉頭癌である。94年の『酔拳3』撮影時点で57歳、10代から映画界で働いてきた劉家良は、ゆっくりと静養して身体を労わる事にしたのだ。 90年代に花開いた古装片ブームは、94年の『酔拳2』を最後に収束したが、80年代の一時期のように銀幕から消えてしまうようなことにはならなかった。新しい手法が確立されたこと、CGなどの技術も発達して全然別の映像表現が可能になったことも大きかった。 2000年初頭、『風雲 雄覇天下/風雲ストームライダーズ』や『臥虎藏龍/グリーン・デスティニー』のヒットに刺激された徐克は、今一度の古装片ブームを仕掛けるべく「電影工作室」の次期ラインナップに『天涯』(古龍武侠小説「天涯・名月・刀」01/7/20日記)、『三少爺的劍』などの企画を立ち上げる。 手始めに自作のリメイクである『蜀山傳』を製作し、続いて金庸の武侠小説『書劍恩仇録』を映画化すると発表。徐克の長い映画人生の中で、唯一接点の無かった劉家良との仕事を切望していた徐克は、病気療養後快復に努めていた劉家良を武術指導に選んだ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーキャスティングも固まり、ロケ班も行い、劉家良は武術指導以外にも同作中最大の悪役である張召重を演じることまで決まっていたが、『蜀山傳』が思いの外ヒットしなかったことで資金が集まらず、また長期に渡る砂漠でのロケに劉家良の体力がもたないとのことで撮影直前にキャンセルされてしまったのだ。結局この企画は日の目を見なかったが、徐克は劉家良との仕事を諦めた訳ではなかった・・・・。 長い沈黙を経て劉家良が再出発の場に選んだのは古巣ショウブラであった。 『酔馬[馬留]/酔猴』は大陸の映画会社と合作ながら、因縁の方逸華(モナ・フォン)もプロデューサーとして参加した作品で、長い年月がふたりの恩讐を押し流していたのだった。映画の内容は79年の『瘋猴』からほとんど進歩していないことに、かえって新鮮な驚きを覚えるくらいの作品で、2002年に作られた映画には全く見えない。 信頼していた人間に裏切られ、負傷して世間から身を隠し、街の若者に猴拳を教えて復讐に乗り出すというストーリーの骨子もまるで『瘋猴』そのままで、違うのは『瘋猴』の主人公は酒で身を持ち崩し、『酔馬[馬留]/酔猴』は酒で新技を編み出すのだ。いうなれば、これこそが劉家良にとって『酔拳3』への弔い合戦でもある。 それにしても猴拳少女・姚瑤は、劉師傅好みの・・・・作中の描写もアブねぇな(苦笑)。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー『酔馬[馬留]/酔猴』はあまりヒットはしなかったが、劉家良ここにあり!を満天下に示すことには成功した。さすがにロングの絵やスタントにはダブルを使っているものの、撮影当時67歳とは思えない劉家良の動きは実に素晴らしいものであった。 古装片ブームは起きなかったが、『臥虎藏龍/グリーン・デスティニー』以降海外資本で大作として作られるようになる。『英雄/HERO』『十面埋伏/LOVERS』などがそれで、徐克がこの動きを見逃すはずはなかった。 金庸、古龍と並ぶ新派武侠小説御三家のひとり梁羽生(代表作は映画化もされた『白髪魔女傳』や『雲海玉弓縁』)原作の「七劍下天山」を映画化すると発表。武術指導として劉家良の名前が発表されたが、徐克はついに念願のコラボレーションを果たしたことになる。 映画は既に完成し香港で先頃公開されたばかりだが、甄子丹(ドニー・イエン)も共演するこの映画がいかなるものかは、近々(2005/9下旬ワーナー系)日本でも『七劍/セブン・ソード』として公開されるので各自確認されたし!ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー五月から続けていた劉家良特集も一旦はここで筆を起きます。彼の映画人生の総括はまだ行わない(だからNo.も29のままなのだ)。これからも多くの映画を製作して欲しいし、現に最新作が公開される目前なのだから。 劉師傅、いつまでもお元気で!








