旧myroom(香港電影的日常 '01/2/17〜'06/1/29)より移転。

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『喜怒哀楽』 [2001年10月19日(金)]

『喜怒哀楽』'70年製作、監督:胡金銓(キン・フー)他ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー四話構成のオムニバス作品で、そのうちの一篇をキン・フーが手がけている。元々は友人である監督の李翰祥が借金苦で困っているのを助ける為に企画された作品で、キン・フー以下みんなボランティアで製作した。台湾ではそれなりの収益をあげたらしいが、李翰祥はその金を借金返済とは別の事に使ってしまったらしい。一篇づつ違う監督で撮り、キン・フーは第二話の『怒』を担当。他の三篇がいずれも怪異譚なのに対し、キン・フー作品のみはお得意の"活劇"だ!本来は統一すべきだったのだろうが、製作までに期間が無かったことから京劇を材に取って作られた。本作は日本では'89年に催された「胡金銓電影祭」でのみ上映されて以降は、ビデオ化もTV放映もされておらず、キン・フー・ファンの間で再上映もしくはソフト化が望まれている作品である。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以下に他の三篇の簡単な紹介をしておきます。第一話『喜』監督:白景端、主演:甄珍、岳陽・・・・乱戦の続く中国、気のいい書生が墓荒らしにあった墓をきちんと埋め直してやった。その夜、書生の元に現れた美女は実は昼間の墓に埋められていた骸骨で、書生に恩返しに来たのだった。最初は驚いたものの、美女の歓待に鼻の下を延ばし、ついには・・・・。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー第三話『哀』監督:李行、主演:張美瑶、欧威・・・・ひとりの剣客が荒れ果てた旧家を訪ねて来た。そこにはもはや誰も住んではおらず、旅人たちが雨宿りをしているのみだ。事情を聞けば既に滅んで幾年もたつという。剣客はその家の住人に強い恨みでもあるのか、残された位牌に斬りつけた。そこへ隣家の女主人が現れ、そこであった事を語って聞かせるのだが・・・・。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー第四話『楽』監督:李翰祥、主演:葛香亭、楊羣・・・・水車小屋に住む漁師の老人が身なりのいい青年と知り合いになる。青年は不思議な笛の音で魚の捕れなくなった河に魚を呼び戻した。その青年と世代を越えて肝胆相照らす仲となった老人は、その青年(実は幽霊)より数奇な人生の物語を聞くことになった・・・・。この作品のみ原作は「聊斎志異」。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんで、第二話の『怒』がキン・フー監督作品です。上記の様に他の三話は古典的な怪談である。時間が無かったという単純な理由からキン・フーが選んだのが京劇「三岔口(さんちゃこう)」。既にお話のあるものならば脚本を書く必要が無かったからだ。元は「水滸傳」のいち挿話だったものを京劇として改編、京劇が海外で上演される際に最も多く上演される演目となった。(基本的に動きだけで見せる演目で、謡い語りが少ないから。) 一部資料で'79年の作品とされている(「胡金銓電影祭」の公式プログラムでも)が、それは誤りで'70年が正解。物語は、元帥の有能な部下である焦将軍が人を殺してしまい流刑となった。相手にも非があったので死刑とならなかったのだ。だが被害者の一族は有力者で、怒りの治まらない彼らは護送の役人に手を廻し、護送の途中で殺させる事に。その陰謀を察した元帥は焦将軍の護衛にかつての同僚である任将軍を送った。護送の一行が宿泊した宿の夫婦は、実は盗賊の仲間で金持ちの客が泊まると身ぐるみ矧いで殺していたのだ。そのことを知った護送の役人は宿の夫婦と結託、協力して焦将軍を暗殺することに。そこへ旅客に化けた任将軍もやって来て、狭い宿屋には収まりきらないほどの殺気が充満仕始めていた・・・・。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー時間にして僅か40分ほどのこの作品にはキン・フー作品のエッセンスが満載である。むしろ短篇であるだけに余計に擬縮されている、といってもいい。話の発端は政治闘争の犠牲となった忠臣の護送からで、そこへ悪い役人の陥計がからみ、宿では静から一転して動のアクションヘ。暗く狭い宿屋で、役人、宿の夫婦、任将軍、果ては盗人夫婦が匿っている盗賊仲間、焦将軍まで加わっての大活劇へと発展していくのだ。暗い屋内の闘いで相手も解らずに斬り合いをし、最後は亭主を助けようとした女将の刀が亭主に刺さって幕となるのだが、そこに至るまでの展開はもの凄い緊迫感で貫かれているのだ。(原作の「三岔口」はこういう終わり方ではない。) 全編のほとんどを宿屋に限定したこのスタイルは後年『迎春閣之風波』によって、より成熟した形として披露されることになるのであるが、この短い映画からも十分に堪能させてくれるのだ。巨匠の名に恥じない短篇であった。
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