『鬼馬功夫』'78年製作、監督:劉家榮、主演:汪禹ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー日本でも公開された『ガッツフィスト魔宮拳(一胆二力三功夫)』と同じく「劉氏兄弟公司」の作品であるが、主演の汪禹をはじめキャストの多くはショウブラザース出身者で占められている。しかし映画のテイストは劉家榮主演作である『Mr.ノーボディー(無名小卒)』に近く、笑い・7:アクション・3といった感じ。『Mr.ノーボディー』は後に「シネマシティ」を設立<−−この経緯は
9/6日記参照のこと−−>する連中(麥嘉、石天、黄百鳴)が全員揃って作り上げた功夫コメディで、従来の香港コメディには無いスマートさが売りであった。このことからも「シネマシティ」旗揚げに関連した連中が狙っていた路線が、はなから近代的なものであったことが伺える。アクション・3とは書いたが、そうはいっても劉家班担当の武術指導によるアクションは素晴らしい出来である。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー主演の汪禹は、欧米では"Jimmy Wang Yu(もしくはYue)"と呼ばれているため、日本の功夫ファンの間でしばしばジミー・ウォング(王羽)と誤解されることがある。王羽の"ジミー"は日本の配給会社が勝手に付けたものなので、海外の功夫サイトなどでJimmy Wangと見かけても汪禹のことなのでお間違えの無いよう。汪禹は劉家良によって見いだされデビューを飾ったショウブラの功夫スターで、デビュー作『神打』(監督はもちろん
劉家良!)は本格功夫にコメディを持ち込んだ最初の作品と云われていて、香港の「功夫映画ベスト10」などではかならず選ばれる名作である。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(注意:変わっていて面白いストーリーであるので少し詳しく書きますが、結末も含めてネタバレしています。) 汪禹は腕はからきしダメだがいつも一発当て込もうとしている賞金稼ぎ。警察署に貼られた手配書を見てはその犯人を探しているが、元々いい加減なイラストが頼りの上捕まえるだけの技量も無い。手配書によく似た男(陳龍、本当の犯人は高崗)を捕まえようとしたり、他人の死体で間に合わせようとしたりするが旨くはいかない。大口ばかりで何の成果も挙げられない汪禹はすっかり仲間内からの信頼を無くし、おまけに死体泥棒の罪で逆に手配される始末。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー手配書の犯人(馮克安)をやっと見つけたが相手は強く、同業者の中から凄腕の助っ人(劉家榮)を雇い賞金を折半するよう持ちかけた。この時の劉家榮の格好がファイトスタイルも含めて『モンキーフィスト猿拳(雑家小子)』と同様(大きなキセルを使いながらの蛇拳)のもの。『猿拳』の製作は翌'79年であるので、この時に好評だったので再演したものと思われる。馮克安を捕まえてみたものの手配中の身では賞金の受け取りもままならず賞金はまんまと劉家榮の手に。他の仲間にも同様に持ちかけるが結果はいつも同じ。賭博場で捕まえた小物(石天)もギャンブルのかたにとられた。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーしかしその事が暗黒街に思わぬ波紋を呼んだ。賞金1000ドルの大物(唐偉成)が仲間の鄭康業が石天を売ったと誤解、自分の身を守るため口封じに殺そうとしていた。その現場を目撃した汪禹は機転を利かせ唐偉成の手によって絶命しかけていた鄭康業を戸板に乗せると一路警察署へ。大物の片割れを逮捕したと意気揚々だったが、賞金を受け取る前に死んでしまった。賞金で自分にかかった罪の罰金を払おうとしたのだが貰えずにガッカリ。詰め寄る警察所長(麥嘉、この時の麥嘉が『Mr.ノーボディー』や『猿拳』の時の役と同じ。)に、唐偉成を逮捕すると大見栄を切る。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー凄腕の唐偉成を前に皆尻込みするが、名乗り出た宋錦成と共に唐偉成の隠れ家へ。しかし唐偉成は恐ろしく強く宋錦成は返り討ちにあってしまう。恐ろしくなって逃げ帰った汪禹は宋錦成を見殺しにしたことがバレない内に劉家榮を連れて再度乗り込んだ。劉家榮の蛇拳はさすがに強く唐偉成を追い込むが、唐偉成は体をブルブルと震わせて大地を蹴ると突然神がかり的に強くなった。そうこれこそ大地を蹴って精霊を呼び込み無敵の力を得る"神打"の技だったのだ!(神打はこれまでにも『龍の忍者』などで登場しています。汪禹のデビュー作がその『神打』だったのもお忘れなく!)形勢不利とみた劉家榮は汪禹を逃がすと息絶えた。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー劉家榮の仇討ちのため三度助っ人剣士(徐小強)を連れて赴くが、剣をとってもスゴ腕の唐偉成には歯が立たない。ガールフレンド(黄杏秀)に、かなわないのなら何故修行しない?といわれて、生まれて初めて自分の為に努力することを知る。劉家榮の蛇拳がいいところまで追い詰めていたので蛇拳を習おうと蛇屋のところに行く汪禹。意気込みはあっても行動は今イチずれているままだった。しかし実際の蛇は恐ろしくとても蛇拳を習えそうに無い。(当たり前なのだが・・)そこで蛇に良く似た"鰻"でガマンすることにした。ここに世にも珍しい"鰻"(本物)に弟子入りした男の話が生まれたのであった・・・・・。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー手製のプールに鰻様を放し、側の池で鰻の生態を真似しながら生活する汪禹。ひたすら鰻と同化しようとした結果、寝ていても鰻の動きが出来るようにまでなった。ついに天下無敵の"鰻拳"を編み出したと思い込んだ汪禹は唐偉成に挑戦、みごとにこれを破るのではあったが、やっぱり賞金は貰えないのであった。なお鰻様は決戦前の汪禹のお腹に収まり、最後まで愛弟子の手助けをなさったという事を付け加えておく。