『黒名單』'72年製作、監督:羅文、主演:陳星ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー'72年の年間配収ベスト10の9位にランクインした作品だ。その年のトップは李小龍の『精武門(ドラゴン怒りの鉄拳)』だが、新興のゴールデンハーベストがベスト10圏内に送り込めたのはこの1本のみ(集計期間の違う資料だと『猛龍過江(ドラゴンへの道)』が入る場合もある。)で、この『黒名單』と同じ陳星主演の『餓虎狂龍』『蕩寇灘』以外は全てショウブラザース作品だ。だがそのなみいるSB作品(この年には張徹の
『馬永貞』『水滸傳』
『悪客』を筆頭に、李翰祥の『風月奇譚』『大軍閥』や程剛の
『十四女英豪』があった。)を向こうに回し、3本もの主演作をランクインさせた陳星にとってこの'72年は最良の年であったろう。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー主演の陳星は既にこの項には何度も登場している功夫映画の大物スターだが、元はSB出身で最初はカラミの悪役だった。同年にベスト10入りしている張徹の『悪客』では、楊斯と共に倉田保昭の子分を務めていたりしたが、その程度の役しか貰えなかった陳星に注目したのは、前年にSBを退社して独立プロを旗揚げしていた呉思遠である。陳星の男臭い個性を存分に生かし、現代的でハードなアクション満載の作品を作り上げた。『餓虎狂龍』も『蕩寇灘』も呉思遠の作品である。この『黒名單』は呉思遠はかかわっていないが、作品的なイメージは呉思遠の延長線上にあるものだ。監督の羅文は、歌手の羅文(『死亡遊戯』の香港版主題歌で有名。)と同名異人で、SB作品『唐山五虎』や『人魚伝説』の監督。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー話はいたってシンプルだ。罠にはめられ無実の罪で投獄させられた陳星。苦渋の思いを胸に出所した彼を迎えたのは弟の于洋(『過客(カラテ愚連隊)』)だ。陳星が刑務所に入る間に事件のことを調べ上げた于洋は、兄に名前の書かれた紙を渡す。その紙に書かれた名前こそ、陳星を刑務所に送り込んだ張本人達である。復讐に燃える陳星は、その名前の乗っているリスト("黒名單")を元に復讐に乗り出した。私の所有するビデオは英語版だが、ダヒングの状態が非常に悪く、何の罪で陳星が服役していたのかはよくは解らないのだ、しかし話の筋といえるものは上にあげたものだけで、後はリストに乗っている名前をひとりづつ探し出し復讐するだけだ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー事件の首謀者は4人で、山怪、陳元、陳惠敏、そして黒幕の方野だ。この4人を順番に追い詰めて行くのだ。山怪は
『酔拳』の鉄頭鼡役で有名なベテラン俳優。手下で李文泰(『蛇鶴八拳』)が出ている。陳元はSB出身のマレーシア華僑。『死亡的遊戯』で李小龍と共に塔に登る男のひとり。作品によっては解元名義のこともある。手下役で李家鼎(『サイクロンZ』)が出演。陳惠敏については
8/21の日記を参照してもらうとして、この場面では陳流(『カンフーゾンビ』)が手下役で出演している。こうして中々マニアックな面子をひとりづつ倒した陳星と于洋は残る黒幕の方野の元へ。この映画で一番解せないのはここである。何故に方野をメインの悪役に据えたのか?このアクションの出来ない、いつも孫嵐とか姜南とかの後ろで太鼓持ちをやっているだけの男が、堂々と陳星と渡り合う悪役には到底見えないのだ。この配役のせいで最後のアクションが随分とショボいものになってしまった感は否めない。この映画の製作者達は"終わり良ければ全て良し"という言葉は知らなかったようだ。