『血芙蓉』'78年製作、監督:何夢華、主演:陳萍ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー芳賀書店から刊行された「香港電影百科」('84/8)P.134に、この映画の新聞広告が載っている。おどろおどろしい図案に、"残酷""兇殺"といった活字が躍る広告は、当時の功夫片の中では奇異な感じを抱かせ、まだまだ情報の少なかった時代のファンに期待感を持たせた。私自身、その頃にはショウブラのビデオを集め始めていたため、この『血芙蓉』は欲しい作品リストの筆頭にランクしていた。ところが、大概の作品はブートで探すことが可能であったが、海外のコレクターに打診してもこの作品の存在は確認出来なかったのだ。この度ついにリリースの運びとなったが、20年目にしてようやく見ることが叶った作品は、果たして如何なるものであったのか?ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーまずパッケージを見て驚かされるのがそのタイトルだ。『血芙蓉・血滴子延續篇』とあるからには、何夢華の
『血滴子』の続篇ということになるではないか。もっともショウブラのリリースをしている「天映娯楽」は、張徹の
『唐人街小子』を『唐人街"功夫"小子』などと勝手に改題していたりもするため、後から付け加えられた可能性も大なのだが。先の新聞広告には"血滴子延續篇"の文字は見当たらないし、この会社がカット問題も含めて信用度の低い会社であるのは間違いない。実際の内容は微妙に『血滴子』ともリンクしており、続篇であるのは確かなのだ。『血滴子』の続篇というからには、これも"雍正帝"物ではないかっ!?と喜ばれる雍正帝フェチの方もおられるかも知れないが、今回は雍正帝の出番は少なく印象も薄い。残念である。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー前回、陳觀泰によって全滅させられた血滴子軍団であったが、懲りない雍正帝(韋弘)は新たな血滴子軍団を組織し、暗殺団長に羅烈を指名。しかし羅烈も良く出ているよな、"雍正帝"物に。
『酔猴女』では
"爛頭何"、
『江南八大侠』では"年羹堯"、怪作『鬼馬大侠』では念願の"雍正帝"にと、羅烈なくしてはこのジャンルは語れないほどだ。手始めに政敵を暗殺させるが、そんな雍正帝を諌めようとした保安隊長一家を惨殺させる。その時師父の墓参りに行っていた妻の陳萍だけは難を逃れた。後難を恐れた雍正帝は、羅烈に間違いなく皆殺しにしたか?と念押しする。陳萍を討ち洩らしたことを知っている羅烈だったが、雍正帝には手抜かりないことを述べ、秘密が漏れないように自分の息子たちを使って、隠密裏に事を運ぶ手筈を整える。一家を惨殺された陳萍の怒りは凄まじく、彼女は復讐鬼・血芙蓉として血滴子軍団を一人一殺にしていく。(彼女の役名は蓉秋燕といい、芙蓉花というあだ名があった。その芙蓉花が血に染まり血芙蓉となるわけである)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー主役の陳萍はショウブラの人気女優だったが、激しいアクション場面に耐えられるほどの技量はない。功夫・武侠片への出演も多いが、大抵は主人公の彼女とかそういう役が主だった。それが今回に限ってハードな武侠片の主役に抜擢されたのは何故か?それは彼女が香港のスター女優には珍しくヌードも辞さなかったからである。中盤に徐小強とのラブシーンがあり、
『油鬼子』に続いてヌードを披露している。看板を張れるスター女優でヌードにもなれる人はそう多くはいない。そんなところから彼女にこの映画の主役が回ってきたのだろうが、それが従来のショウブラ武侠片にはない風景を作り出すことに寄与しているのだ。これだから映画作りというものは不思議なのだな。羅烈の子供たち(王龍威、林輝煌ら)の襲撃をかわしつつ、同門の弟弟子・岳華や、かつての血滴子軍団から抜けてやはり羅烈から命を狙われている徐小強の助けを借る。この徐小強が前作からの引きなのだが、彼は前作で死んだような気が・・・・・。復讐を果たすため血に染まる芙蓉花は、家族の仇を討つことが出来るのであろうか?ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「--悪は必要である。もし悪が存在しなければ善もまた存在しないことになる。悪こそは善の唯一の存在理由なのである。」と言ったのは作家であり批評家でもあるアナトール・フランス(仏:1844〜1924)。呂四娘ら江南八大侠の活躍が語り続けられる限り、雍正帝の悪事もまた語り継がれるのだ。今日もまた、世界のどこかで、血滴子の恐怖があなたを襲う!
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