『龍之髭』'82年製作、監督・主演:劉忠良ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー劉忠良が監督・主演ばかりか、製作・脚本・武術指導も務めた"オレ"映画。ジミーもそうだが、独立志向の強い我儘なスターは結局のところこういう道をたどるしかないのか。得てしてこの手の作品はトンデモ映画であることが多いが・・・。舞台はアメリカメキシコ国境近くの砂漠、ひとりその砂漠を劉忠良がフラフラと歩いているところから始まる。1886年と字幕が出るが、南北戦争の英雄・グラント将軍が死に、偉大なる酋長・ジェロニモも捕らえられた年だ。「OK牧場の決闘」で有名なドク・ホリデイが死ぬのが翌87年で、アメリカ政府が事実上の開拓終焉を発表するのが89年である。1886年とはようするにそういう時代なのだ。その砂漠を旅するパツキン美女、ラクウェル・ウェルチのように何故か薄物一枚だ。何事もなく通り過ぎるだけのふたり、一体なんやっちゅーねん!ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーとある民家で乾いた喉を潤し、メキシコへとやってきた劉忠良。どうやらお尋ね者らしくガンマンに追われるが、得意のテコンドーで次々と倒す。銃を持っている功夫使いのガンマンと闘い、結局は銃で脅され捕まってしまう。砂漠で拷問を受け、龍のペンダントの在り処を吐くよう詰め寄られるが、それは砂漠で落としてしまっていた。再び砂漠に放り出される。実にまどろっこしい展開だ。最初っから追われていればこんな二度手間な描写は必要ないんだが。広い砂漠のど真ん中でそのペンダントと鋏を拾うパツキン。この砂漠でか・・・凄い確率だな。「ああ・・・これは、あの人の・・・」知り合いだったのかよ!戻って劉忠良を見つけたパツキン、熱で眼を焼かれ盲目となった劉忠良を助ける。ここからパツキンの回想になり、荒野を旅していたパツキンが夫と父を殺されたのを劉忠良に助けられたことを思い出す。どうやら彼は死んだ兄弟の仇を探しているらしいが。意識を快復した劉忠良は、見えぬ目でこれまでのことを語り始めるのだが、どうもふたりのセリフは噛合っていない。回想場面では間違いなく知り合いなのだが、まるで初対面のような会話だ。もしかしてまた英語吹き替えによるストーリー創作か?ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー武状元として皇帝よりその証のペンダントを拝領した劉忠良、帰宅途中を高飛に襲われる。物陰から狙っていた謎の人物に毒のナイフで狙われ、高飛にペンダントを託す。「3才の息子に渡してくれ・・・」高飛も途中で狙われ、彼がどうなったのかも判らないまま、劉忠良の回想は劇的な展開をみせる。アメリカは鉄道開発のため中国人を大量に騙してアメリカへと送った。劉忠良と彼の兄弟も捕まったが、脱走しペンダントの行方を追い始めた。「3才の息子・・・」確かそう言ったはずだよな、何年たっとるんや! で、さらに問題なのは、彼の兄弟というのがセリフだけでしか語られないことで、これがさらなる混乱を招いている。アメリカ中を探し回るが、行く先々で消される証人たち。中国人同胞を助けた時に人を殺し、その同胞も喧嘩でメキシコ人を殺し、妻と子をほったらかしにして逃げる。残された妻はリンチで殺され、息子は行方不明。この状況をずーーっと、ずーーっと陰ながらみている高飛。見ているのはいいが、どうして彼が劉忠良の回想に出てくるのかは不明だし、そもそも彼や劉忠良の父を襲ったのは誰だったのかは永遠に謎だ。これだけの事を語り終えると、盲目の劉忠良はパツキンに助けられ盲目で闘う特訓を始める。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー劉忠良が特訓場面によってはアメリカにいたり、香港にいたりするし、髪型が変わったり髭が生えていたりするのも不思議だ。この特訓場面というのが、卵を割るだけなのに永遠と続き、この映画の意図は全く読めてこない。というか、この映画を説明することはもはや文章として成立しないぞ。ちょっとパツキンが買い物に出かけている間に、必死になってパツキンの行方を捜す劉忠良。散々な特訓の割りに家の近所も這ってでしか歩けないのはどういうこと?町で暴漢に襲われたパツキンを助けたのは高飛。「何かご用?」と聞くパツキンに「今はない」といって立ち去る高飛。パツキンの帰りを待つ間、周囲を飛ぶハエを杖で叩き落す劉忠良。だが、パツキンが帰宅するとまた元の障害者に逆戻りだ。わけわからんよ、もう。ちなみにパツキンは偶然出あった子供を連れて帰ってくるが、その子供が例の行方不明の子。何故か保安官に命を狙われる高飛の描写を挟み、その子の父親と再会する劉忠良。何故かお互いが判らずに闘い続け高飛に止められる。「争っている場合ではない」それだけ言うとまた立ち去った。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーまた特訓に戻る劉忠良、その時々で達人になったり、ならなかったり・・・。砂漠に住んでいたり、海辺だったり、家があったり・・・。いい加減にしろっ!特訓中にパツキンと子供を人質にとられ、保安官一味に捕まり拷問を受ける劉忠良。それを物陰からじっと見ている高飛。劉忠良をビシビシしごいていたはずのパツキンは、何の抵抗もせず彼らにレイプされ、一味はそのまま立ち去る。物陰からじっと見ている高飛、助けんかい!意識が戻った劉忠良、何故か視力が快復し、パツキンがレイプされたことを知る。「復讐だーーーー!」また盲目に戻って特訓・・・・って、もう疲れたましたよ。こんな映画どーでもええわ。特訓中に何時の間にか保安官一味の人質となっているパツキン。それを物陰からじっと見ている高飛。「何故なの?」の問いに「おれは昔中国で兄弟を殺されたんだ」と答える保安官。無差別中国人逆恨み状態かよ!自分の子供も人質となっているにも関わらず、一緒に助けようとの劉忠良の要請を断る親友。決闘を始めるふたり。本気でやっつけてしまい、結局助っ人の要請は断られる。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー人質交換は罠だった。それはいい。何事もなかった様に荷物持参で現場に現れるパツキンと、ハッキリ断ったにも関わらず助けにくる友人。それも、まあいい。そして、砂漠でパツキンが拾ったはずのペンダントは保安官一味が持っていた。それは・・・よくないだろ!女殺し屋を捕まえようとしたら何故かそれを止める高飛。彼は清朝の官吏だった。父親殺しから始まる一連の事件は、全て高飛の仕組んだ・・・・。ここまで酷い映画もそうあるもんじゃないっしょ。だから劉忠良なんかに"オレ"映画を撮らせてはダメなんだよ。劉忠良VS高飛の決闘場面のアクションは良い出来です。この映画、この後も蛇足がダラダラと続くんですが、最後のパツキンのセリフがこの映画の混乱を象徴していますよ。「ねぇ、秘密を教えてあげる、私たち過去にも会っているのよ。それにペンダントは私が持っているの」・・・だって!