旧myroom(香港電影的日常 '01/2/17〜'06/1/29)より移転。

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更新 [2005年11月25日(金)]

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 11/25日記更新。本日は、順番が前後しましたが、
『邪鬥邪』の前編『邪』の登場です。やはりこれは書
いておかねば!

『邪』 [2005年11月25日(金)]

『邪』'80年製作、監督:桂治洪、主演:恬[女尼]、陳思佳ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーこの映画は前回紹介した『邪鬥邪』の前編なんですが・・・・とはいってもストーリー上の繋がりは全くない。が、香港でも三本目の『邪完再邪』を含めて"桂治洪「邪」之三部曲"と、シリーズ扱いされてもいる。 ちなみにだが、『邪鬥邪』と『邪完再邪』は一応話しに繋がりはあるため、この第一作のみが別物なのだ。コメディ・タッチの二、三作目に比べて、本格ホラーなのもこれだけであり、三部作とはいえ、最初の作品だけが番外っぽい。 クライマックスの除霊場面で、全裸の体中に呪文を書いた陳思佳が登場するが、このヌードは巧みに吹き替えの全裸と編集で繋いだもの。あんまり編集が良く出来ているので、一瞬、本人か?!と見間違えそうだが、やはりこれは吹き替えなのだ。古いショウブラの機関紙「南國電影」に、吹き替えの女優に呪文を書いているスナップが残されています。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーこの映画、ネタバレをしないことには何も解説が出来ない為、オチの部分も含めて完全にネタバレしています。バレは嫌だ!という方は以下の文章は読まないように! 恬[女尼]の実家はかつて威容を誇ったかつての旧家。今は落ちぶれて見る影もないが、それなりの格式は保っている。財産目当てで結婚した入り婿の王戎は穀潰しの上、病弱な恬[女尼]にドメスティック・バイオレンスの嵐。 町の人たち(沈勞、韓國才ら)は総じて恬[女尼]に同情的だが・・・・。召使がいびり出され、出入りの商人・韓國才に遠くに住む妹への言付けを頼む恬[女尼]。 そんなところへ表れたのが、かつて恬[女尼]の家に旧恩を得た娘・陳思佳。恬[女尼]の姿に同情した彼女、王戎の暴力にも耐え、女主人に甲斐甲斐しく使える。 財産を売り払い、夜な夜な散財して歩く王戎。反抗的な陳思佳を追い出す為、暴力で彼女を征服。恬[女尼]の目の前で犯される陳思佳だが、恬[女尼]を置いて出て行くことは出来ないと歯をくいしばる。 金目の物を探していた王戎が目をつけたのが母の形見の腕輪、それを巡って嵐の夜に揉み合いとなり、瓶に落ちた王戎をそのまま溺死させる女ふたり。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーこのままではいけないと腹を括った陳思佳、尻込みする恬[女尼]を叱咤し、布団に包んで家の向かいにある水路に死体を投げ入れる。全ては豪雨が押し流してしまうはずだった・・・・。 元々気の弱い恬[女尼]、翌日から罪の意識に苛まれ水路にお供えをしたりと奇矯な行動を取りはじめる。その都度庇う陳思佳だったが、恬[女尼]の周りには更に奇怪な出来事が続発するのだ。彼女が狂っているのか、本当に幽霊が現れたのか・・・判別しないまま狂気だけが肥大していく。 王戎の幽霊に復讐される!との妄想を振り切れない恬[女尼]を襲う怪人。病に臥せって身体も心も衰えていた彼女は、その恐怖の重圧に押しつぶされるようにこの世を去った。 葬儀の客で溢れかえる屋敷、亡き女主人を偲ぶ陳思佳の横には、死んだはずの王戎が!恬[女尼]の財産を受け継ぎほくそ笑む王戎と陳思佳。そう、ふたりは最初から共謀して病弱な恬[女尼]を死に追い込んでいったのだ。 すっかり女主人気取りで屋敷の采配を振るう陳思佳。だが今度は彼女の身の回りに恬[女尼]の影が!ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー恬[女尼]の姿を見たものは陳思佳だけではなかった。恬[女尼]の遺品を始末させるために雇った人夫たちは、屋敷の主人と名乗る女から荷物を元通りにするよう命令を受ける。混乱する人夫たち、「しかし、あの女の人は確かにここに・・・・」振り返った彼らの目に映るのは恬[女尼]の遺影! 今度は逆に王戎と陳思佳が恬[女尼]の幽霊に怯える日々を送ることに。奇怪な現象は続き、その都度恬[女尼]の存在が示唆されるが、果たして本当に彼女の幽霊なのか?恬[女尼]が死んだことだけは間違いないが、ならばあれは本当に・・・・? 徐々に姿を現してくる恬[女尼]に追い詰められ、不要な殺人(恬[女尼]の死に疑問を持った韓國才)を犯し、精神も立場も弱まっていく王戎。 或る夜、寝所に入った王戎を待っていたのは陳思佳ではなく恬[女尼]だった!恐怖のあまり二階から足を滑らせ転落死してしまう王戎。ひとり残された陳思佳はもはや精神の限界に達し、霊媒の陳立品にすがる。体中に呪文を書き祈り続ける陳思佳だったが、耳のところだけ書き忘れた(というより故意)ため、恬[女尼]の幽霊に耳を千切られてしまうのだった。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー全ては恬[女尼]の妹(二役)の犯行だった。姉からの便りを韓國才より貰い窮状を知った彼女は、姉を助けるために駆けつけたが、屋敷で彼女が見たものは、病気の姉が幽霊に化けた王戎に狂い死にさせられる瞬間だった。 双子の姉妹で顔がそっくりであることを生かした彼女は、姉の幽霊を演じることで復讐を果たしたのだった。 耳のところだけ呪文を書いていない・・・・という場面は、嫌でも「耳無し芳一」を思い起こさせる。小泉八雲ことラフカディオ・ハーンが日本の民間伝承を集めて構成した作品集「怪談」に収められた有名な一編は、実際に読んだことは無い人でも大抵は聞いたことあるだろう。 実際のところ怪談の多くは中国からきたものの翻案であることが多く、どれが日本原案かは不明だ。ハーンの作品は中国でも翻訳されているし、「聊斎志異」との絡みも含めて、似たような話が混合している感はある。本作は「廣州西關奇案」という実話の翻案であるとの説も有り、そうだとすると実録路線の側面もあるが・・・。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー設定が民国初であるため、その時代性を背景とした怪奇ムードは満点であり、結局本物の幽霊は最後まで登場しないものの、ホラー映画としての密度も完成度も高い。 香港の映画評には、映像的に中川信夫の『東海道四谷怪談』('59)の影響がある、と書かれている。確かに雨の中の場面や、王戎を水路に流す場面などにその影響が感じられるが、全体のテイストにはヨーロッパ・ホラーの影響が見て取れるのだ。 王戎の暴力に追い詰められた女二人の狂気が爆発し、ついには殺人に至る場面の迫力は出色で、恬[女尼]、陳思佳の熱演も相まって背筋を凍りつかせる。 この暴力にさらされる女ふたりの殺人という設定は嫌でも『悪魔のような女』('55仏)を思い起こさせるし、ふたりが狂気に走る場面では『地獄の貴婦人』('74仏=伊=独合作)の影響も見えるのだ。二段、三段のオチ構成や、殺人者が過去の犯罪の影に追い詰められていく展開は『生きていた男』('58英)そのままだ。 いい加減幽霊話で引っ張っておきながら、途中までがどれほど有得ない展開であっても、合理的な推理オチを付け加えてスリラーにしてしまうという演出も、イタリアン・ホラーの雄・ダリオ・アルジェントを連想させるのだ。 映画としては非常に良く出来た作品で、桂治洪の代表作の一本であろう。ファンにとってはこのホラーの習作に、桂治洪が何を手本としていたのかが垣間見えて、楽しめることも請け合いであります。
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