旧myroom(香港電影的日常 '01/2/17〜'06/1/29)より移転。

 香港映画を中心に語っていますが、基本的には何でもアリです。
 なお日記に記載の内容は、無断転載、転用はお断りいたしております。ご理解下さい。(by fake)

 ・・・・あと、リンクもフリーではないんです。すんませんなぁ。

倉田保昭(4)『餓虎狂龍』 [2006年03月25日(土)]

倉田保昭(4)『餓虎狂龍』'72年製作、監督:呉思遠、主演:陳星

 『蕩寇灘』大ヒット後、倉田保昭はホゾを噛んでいた。“しまった!あの男の才能を読めなかった・・・” 後悔既に遅し、である。

 映画をヒットさせ、一躍時の人になった呉思遠も、実は悔やんでいた。“陳星の相手役は倉田しかいないのに!”前作に倉田を出演させられなかったことは痛恨事だったのだ。

 呉思遠は新作『餓虎狂龍』の企画を持って再び倉田の元を訪れた。

 暴力が百花繚乱に咲き乱れる時代に、暴力そのもののダイナミズムを描き出すこと、それが呉思遠の理想だった。目標が理想に到達するための現実的な段階点であるとするなら、倉田への出演依頼は、目標に向って進む第一歩だ。再度の出演依頼には、応える必要があると倉田も感じていた。

 倉田保昭は行動する男である。何故なら、行動は言葉よりも雄弁だからだ。呉思遠もまた、そういう男であった。彼らの行動こそが、彼らの理想を明らかにすることを知っていた。倉田は出演を快諾し、作られるはずだった『蕩寇灘』の理想形を実現すべく、『餓虎狂龍』の撮影が始まった。

 <ストーリー>
 大日本空手道總道場師範の倉田保昭は、来るべき中国侵攻の先兵としてスパイ活動に従事すべく上海に派遣される。ただし、これは国家の秘事であり、その身分はあくまで民間のものとして取り扱われるとの指令だ。上海を支配するギャング・姜南の組織に用心棒として雇われ、その裏で侵攻計画を極秘裏に進めるのが倉田の任務である。あくまで民間の立場であるため、君もしくは君の仲間が掴まり、或いは殺されても、当局は一切関知しないことを念押された。

 一方、こちらは中国。南京特殊部隊体長・陳星は、部下の訓練途中、総司令部へと呼びだされる。上海のギャング組織に手を焼く警察からの要請で、組織に潜入し彼らの悪事を暴くよう要請されたのだ。過去何人もの秘密捜査官が命を落としたため、特殊部隊に御鉢が回ってきたものだが、潜入捜査であるため、やっぱり当局はその生命を保証しないのであった。

 このOPのそれぞれの対比が上手く、倉田、陳星共に試験されるような形でアクションを披露。倉田は湛少雄、錢月笙、陳星は梁小龍、黄元申とそれぞれ闘う。

 波止場の労働者・韓國才、郭榮勝は、黎愛蓮と自転車で出勤。波止場で靴磨きを営む韓國才は不審な積荷に近寄って袋叩き。その積荷は姜南が取り扱っているものであった。陳星は上海に到着すると、波止場の現状と、自分の苦境を部下の黄元申に手紙で訴える。
 倉田も到着し、さっそく用心棒として組織に雇われる。弟子の解元も一緒だ。相変わらず虐められている韓國才を助けたのは、陳星の手紙を見て上海へとやってきた黄元申。お礼参りにやってくる姜南一味、息子役で陳惠敏が出演しているが、同年デヴューしたばかりの陳惠敏、実に初々しい。

 陳惠敏と互角に闘った黄元申は、仕事が欲しいと姜南にアピールするが、警察のスパイではないか?と疑いをかけられる。そこへやってきたのが陳星、黒社会の暗号と挨拶を披露し味方であることを証明。いちおう腕前を試されるのだが、ここで登場するのが李家鼎、李銘、梁小龍の三人。彼らが本作の武術指導なのだ。
 姜南の屋敷で更なる試験を受けたが、倉田と解元は今イチ信用していない様子。それでもその夜は歓迎会が開かれたが、誘拐されて連れて来られた黎愛蓮を見て、黄元申の怒りが爆発。一味には不穏な空気が漂う。

 姜南の組織を隠蓑に、中国に潜入していたスパイとコンタクトを取る倉田。侵攻計画書を渡し、来るべき蜂起に備えるよう指示。黎愛蓮と仲良くなり、波止場の情報を入手する黄元申。姜南の船が不審な積荷を出荷させる日を探るよう頼んだ。
 倉田の動向を探っていた陳星は、姜南の仕事とは違う動きに不審を覚えるが、倉田は尻尾を掴ませない。倉田は倉田で、陳星らの動きに警察のスパイではないかとの確信を強め、姜南に提言して罠を仕掛ける。

 船の出港日が判明、陳星は罠ではないかと疑うが、別の手を打つだけの材料も日数もなかった。韓國才、郭栄勝らを連絡要因に使い、警察と連携。
 出港の夜、姜南の家に監禁される陳星たち。船の積荷は別の所に移動させ、爆弾を仕掛けたという。警察がくれば陳星たちはサツの犬、その警察も爆弾で吹っ飛ばすという算段だったが、陳星たちの連絡がないことを不審に思った韓國才の機転で救われる。

 郭栄勝は波止場でスリをして暮らしていた。止めよう、止めようと思ってはいたのだが、懐の暖かそうな人物を見かけるとついつい手が動いた。だがこれが思わぬ展開を生んだのだった。郭栄勝が掏り取ったのは、倉田からスパイに渡された侵攻計画書。こうなると人身売買のギャング組織など後回しだ。祖国を守る為立ち上がった陳星は、日本軍のスパイ・倉田を追い詰める!

 ここから映画史上初めての本格的なマラソンバトルが開始される。

 逃げる倉田、追う陳星。野原で闘い、階段の途中で闘い、石畳を越え、広場で闘い、建物を昇り降りしながら続けられる激しいド突き合い。前回の武術指導・袁和平に変わって、武術指導として抜擢された梁小龍は、粤劇出身で詠春拳を修得し、テコンドー、空手を学んだ。共に空手出身の陳星と倉田にとって、実戦武打の映画的表演という新しいジャンルを確立した梁小龍の武術指導は、願ってもない立ち回りであった。

 闘いは続く。解元が車で救出に現れるが、陳星も車にしがみついて逃がさない。郭栄勝、韓國才、黄元申も助っ人に登場。黄元申が解元を倒すが、韓國才が倉田にやられた。
 港に逃げる倉田を待ち受ける陳星。船で、波止場で、海岸で、更に続くド突き合い。狄龍や姜大衛相手には遠慮気味だった倉田も、陳星相手には実力全開だ。殴り合いに飽きた倉田がトンファーを取り出し、対抗した陳星がサイで応戦。お互いが一進一退を繰り返し、トンファーもサイも弾き飛ばされる。再び素手での闘いになったと見えたが、倉田は更にゴールデン・トンファーを取り出し、陳星はボコボコ。だが永遠に続くかと思われる闘いも、陳星が倉田の腕をヘシ折り決着をつけた。

 ゴールデン・ハーベストの独立は確かに事件だった。だが真の独立とは? ハーベストもショウブラから独立し、新たな会社を創造したが、会社の方向性としてはもうひとつのショウブラを創造したに過ぎない。それは独創とは呼ばないのだ。
 絶え間の無い創造の行為を、独りで繰り返し、その後に生まれるものが独創であり、それこそが真の独立である。
 未曾有の功夫ブームにおいて、その誰もがショウブラの縮小コピーか、ブルース・リーの真似事に終始するなかで、まったく別の方向性を現出し得た呉思遠の情熱と、それに応え得た倉田保昭のアクションなくして、この映画の成功はなかったろう。

 『餓虎狂龍』は、低予算の独立プロ作品ながら、120万HKドルを越す大ヒットを記録し、'72年の年間興収記録第8位にランクされた。

 次回は、こんな映画あったっけ?『龍虎雙雄』です。
trackback Blog by isao.net