旧myroom(香港電影的日常 '01/2/17〜'06/1/29)より移転。

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 ・・・・あと、リンクもフリーではないんです。すんませんなぁ。

『Beerfest』 [2006年10月29日(日)]

『Beerfest』'06年製作、監督:Jay Chandrasekhar、主演:“Broken Lizard”

 日本ではまだ全く無名のコメディ・チーム“Broken Lizard”の新作なんだが、いやはや・・・・これは物凄い映画でしたよ!

 “Broken Lizard”はコルゲイト大学の演劇集団が起こしたコメディ・チームで、メンバーは以下の五人からなる。

 Jay Chandrasekhar
 Paul Soter
 Erick Stolhanske
 Kevin Heffernan
 Steve Lemme

 いずれもどうやって発音するのか判りづらい、日本人泣かせの名前ばかり(苦笑)。彼らのプロとしての活動は'91年から始まる。NYの劇場回りからスタートしているが、早くから短編映画を撮ったりと、フィルム部門の活動を充実させてきた。
 サンダンス映画祭で短編の実力を認められ、TVドラマの監督や、有名アーティストのPVなどで腕を磨き、勇躍TV・映画界に乗り込んできた彼らだったが、その徹底してナンセンスな笑いが観る人を選ぶのか、これまでのところ映画のヒット作はTV番組「爆走!デューク」のリメイク一本のみ。この作品は彼らの本質とはほど遠い作品である。
 リーダー格のJay Chandrasekharが毎回監督を務めるが、基本的に脚本はチームで書き、主演もチームで務めるため、一部ではアメリカの“モンティ・パイソン”との呼び名も。ただし、笑いの質は随分と違うため、大学の同窓生同士によるコメディ・チームという共通点以外はない。

 私も長いことコメディ映画を観ているが、この映画ほどナンセンスに徹しきった映画も珍しいのではないか?どんな映画にもストーリーの中にそれなりの意義や、作品を語る上でのテーマといったものがあるものだが、恐ろしい・・・・いや、面白いことに、この映画にはそんなものは皆無だったといって良い。
 これが短いギャグだけを繋いだ、ショート・コント形式の長編映画だったのならまだ話もわかる。堂々としたストーリー形式の長編映画でありながら、テーマなどとは無縁というのも、中々出来る事ではない。

 ドイツ移民のドナルド・サザーランドがアメリカで死に、その孫たち(Paul Soter & Erick Stolhanske)は、祖母(クロリス・リーチマン!)の頼みで、祖国ドイツまで遺骨を運ぶよう頼まれる。ドイツなんて・・・・とブーたれる孫たちであったが、折りしもドイツでは“オクトーバーフェスト”の開催期間であると知り、酒飲みのふたりは喜んで出かけるのだった・・・・。

 舞台となる“オクトーバーフェスト”とは、九月の第三月曜から、十月の第一日曜までの間に、ミュンヘンで開催される「世界最大のビール祭り」。もとは秋の収穫を祝う為のお祭りだったが、現在ではこの“オクトーバーフェスト”期間中に、世界中から600万人が集まり、500万リットルのビールを消費尽くすという。その為「世界酔っ払い祭り」との異名もあるほどで、映画ではチェビー・チェイスの傑作『ナショナル・ランプーン・ヨーロピアン・ヴァケーション』ドイツ篇にも登場する有名なお祭りなのだ。

 ・・・んで、ドイツへと到着したポールとエリックは、習慣の違いから会場で騒ぎを起こし、案内に来た遠縁の手引きで、別の場所に連れて行かれるのだった。

 そこはドイツのとある場所、地下深く潜った、とある会場。

 遠縁のおじさんの話によれば、サザーランドには兄弟がおり、その兄弟はドイツの有名ビール園を経営する伯爵家の血筋なんだと。初めて聞かされる話に面食らうふたり。更にその兄弟(ユルゲン・プロホノフ)には息子たちがおり、それは当然ながらポールとエリックにとって従兄弟となる存在であるという。
 驚くことだらけだったが、驚くのはまだまだ序の口で、彼らが案内された会場こそ、“オクトーバーフェスト”期間中に、密かに開催されてきた、真の世界一の酔っ払いを決める大会“Beerfest”であった!!

 著名なビール園のオーナー・ユルゲン・プロホノフの裏の顔こそ、世界の酔っ払い界を牛耳る、悪の酔っ払いの帝王である。彼は“Beerfest”を主催し、我と我が一族こそ、世界最高にして最強の酔っ払いとして、世界中の酔っ払いをコテンコテンに泥酔させてきた一族の首領であったのだ!

 正直に言って、もうこの設定でやられましたね。こんなバカバカしい設定の映画なんて過去にはありませんよ。

 ここから映画は急転直下。サザーランドはドイツを出る時、一族に伝わる幻のビール・レシピを盗んでいたため、一族の怨敵として嫌われていた。ポールとエリックは当然ながら快くは迎え入れられない。しかも、祖母のリーチマンは、かつてドイツ史上にその名を轟かせたこともある、“伝説の売春婦”であったという。売春婦の孫、裏切り者の末裔と蔑まれ、酒の勢いに任せて“Beerfest”への挑戦を口にするふたり。

 “Beerfest”で行われるのは、世にもくだらない飲み比べの数々。ただ量を飲むだけではなく、欧米社会ではポピュラーなドリンク・ゲーム(ゲームの罰則が一気飲み、ゲームはコイン投げやダーツ、卓球など)で競われ、酒の量や飲むスピードと共に、ゲームに勝つ資質も問われるのだ。
 といってもね、酔っ払いが酒飲みながらやることですから。途中からは酔っ払ってグダグダになる一方なんですが、映画はそのグタグダ感こそを丁寧に描写していく。

 プロホノフ率いる最強のドイツ・チームに軽くあしらわれ、遺骨の灰を会場にバラまかれ、失意のうちにアメリカに帰国。

 「このままで終われるか!これじゃ爺ちゃんも俺たちもあんまりだ・・・」

 田舎の大食い王の幼馴染(Kevin Heffernan)、何の役に立つのか判らないオタクの科学者(Steve Lemme)、大学の同級生で、かつてはドリンク・ゲームのキングと呼ばれたが、現在はストリートで男のチ〇ポをしゃぶって暮らすJay Chandrasekharを集め、USAチームを結成。一族の名誉を賭けて“Beerfest”への挑戦が始まった!

 ・・・・で、ここまで書くと、はは〜ん、これはスポ根モノのパロディ風に展開するんだなと、勘の良い方ならお解りでしょうが、残念!半分正解!

 確かに、映画の形式はスポ根風ではある。

 だが、彼らがやることといえば、ただ酒を飲むことだけなのだ。しかも途中からは酔っ払ってるだけだし。

 これは前代未聞の映画であります。過去に作られた、ありとあらゆる映画の形態を破壊した、スーパー・ナンセンス・コメディでしょう。
 さすがにギャグを細かく書くわけにはいかないのがアレなのだが、この後の展開は、想像通り。酔っ払いの誇りを取り戻した彼らが、酔っ払ったまんま会場に乗り込み、世界の酔っ払い相手に、ぐでんぐでんに酔っ払ってみせるのだ。

 普通、この手の映画だと、苦しい特訓の末に勝利したり、友情が壊れそうな展開でチームの危機が訪れたりします。友情−団結−勝利−大団円、これがスポ根モノの基本。まあ、確かにそんな展開もあるにはあるんですが、基本的にはただの酔っ払いだから、酔っ払いは常識も良識も欠けているもんです。最後の決戦で円陣組んで、勝利を誓い合う場面で、普通のコメディなら、ちょっとは泣かせること言うもんです。でも彼らはそんなことしませんね。いや酔っ払いだから出来ないというべきか。気の利いたことは言おうとするんですが、結局グダグダで、めいめいが適当な掛け声をかけるだけ。

 ナンセンスの王と呼ばれたキートンの破壊行為も、階級社会への叛逆や、闘争のメタファーでありました。世界最高のナンセンス映画と評価される、マルクス兄弟の『我輩はカモである』ですら、個々のギャグこそともかく、映画には戦争や政治の批判が盛り込まれていた。
 ZAZ映画(『フライング・ハイ』『ホットショット』など)だって、一見ナンセンスに見えても、馬鹿げたハリウッド大作に対する批判が見え隠れした。

 だがこの『Beerfest』には“笑い”以外に描こうとしているものは何も無い。全てのエピソードが、全てのセリフが、演技者の演技の全てが、ただただ人を笑わせようとしているだけの映画。これこそ真のナンセンスであろう。だが、それをここまで徹底した映画というのはこの映画だけではあるまいか。

 最後に、映画『Beerfest』の中で好きなギャグの場面をひとつ。

  Jay Chandrasekharはかつてドリンク・ゲーム・キングと呼ばれたが、今はストリートの男娼にまで落ちぶれていた。とりわけドリンク・ピンポン(テーブルにビールの入ったグラスを置き、玉がそこに入ったら一気飲み)の腕前では並ぶものがなかった。

 だが、何故かJay Chandrasekharは卓球のラケットを握ろうとはしない。その時の仲間との会話。

 「どうしてなんだ?」
 「昔、フィリピンでのことだ・・・・俺はいつものようにゲームをやった」
 「負けたのか?」
 「ああ・・・そのとき、ちょいとした賭けをしててね、負けた方がケツにラケットを突っ込まれるってやつさ・・・・」
 「・・・そりゃぁ・・・・酷いな。何と言ったらいいか・・・ケツにあの硬いグリップを突っ込まれるなんて、想像も出来んが、だからといって・・・」

 「グリップの方じゃないんだよ!」

 ここまででも笑えるんですが、この後、話を聞いていたクロリス・リーチマン(ドイツ史上に轟く“伝説の売春婦”という設定です、念のため)が駆け寄り、やさしくJay Chandrasekharを抱きしめ、こう言った。

 「あんたがやられたのよりデカイものを突っ込んだ人間もいるんだよ・・・」

 この後の場面で全員涙を流して感動しているんですよ!んなアホな!?(笑)

 ビバ!『Beerfest』!、ビバ!Broken Lizard!

 今から断言しておく。これが今年公開された映画のNo.1だ!
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