『龍形刀手金鐘罩』 [2008年03月31日(月)]

『龍形刀手金鐘罩』'79年製作、監督:陳少鵬、主演:黄家達

 雪原を馬で疾駆する陳星にナレーションが被る。

 清朝が倒れ、中華民国となったが、清朝復古を目指して暗躍する一部勢力が存在する。その中心人物が清朝八旗軍を握る陳星将軍だ。

 韓国ロケの大雪原が非常に効果的で、雪原で陳星が刺客に襲われる秀抜なOPからこの映画への期待が高まる。
 刺客をひとり、またひとりと倒す陳星、最後の刺客として登場するのは[上/下]薩伐(カサノヴァ)・王虎。激しい死闘の末、陳星が王虎を倒したところでOPが終わる。

 この映画最大の魅力は、その顔合わせにある。

 悪の将軍役に陳星、国民党政府の役人に黄家達、清朝の血をひく王女に龍君兒、OPの時点では生死不明の王虎は黄家達の同志。ジャッキーのそっくりさん陳少龍と、ブルース・リーのそっくりさん巨龍が他の同志で、陳星派の敵キャラには劉鶴年、陳燦華、湯錦棠、李發源、林克明、元徳など。
 敵か、味方か?両陣営のスパイとして暗躍する何誌強、他に鄭眞化や 崔旻奎も登場。ちょっとこれだけバラエティにとんだ顔合わせは珍しい。

 顔合わせだけで終わる映画ではない。武術指導も担当した監督の陳少鵬にとってはベストに近い仕事と言ってもいい。

 王虎を倒した陳星は、清朝皇帝の血をひく魯鴻の元へ。皇帝への意欲を見せる魯鴻に対し、現実派の娘・龍君兒は父を嗜めるが・・・。陳星との密約により蜂起を約束する魯鴻の元には、国民党政府の密偵が忍び込んでおり、彼らを監視する黄家達にもその報告はもたらされる。
 すぐさま駆けつける黄家達、「よもや良からぬことをお考えでは?」問い詰める黄家達だったが、素っ惚ける魯鴻。

 屋敷の囲いを破って侵入する王虎と陳少龍との間にひと悶着あったが、共に同志と知り行動を共に。王虎の報告では、間違いなく当地に陳星が潜伏していると言うが・・・。

 父の行動を監視する政府のやり方に反発を覚える龍君兒、ひそかに親衛隊を組織するが、腹心の劉鶴年や陳燦華は何やら企む様子。
 陳星の動向を探る政府の密偵・巨龍と崔旻奎は、魯鴻の外出に同行する情報を掴み陳星を襲う。“金鐘罩”という鐡布杉のような技を使う陳星は無敵で、崔旻奎は返り討ちにあい、巨龍の行動を嗜める黄家達。

 武術指導を兼任する陳少鵬の仕事が素晴らしく、ロケーション効果とカメラアングルを考え、バリエーション豊かなアクションを構築しているのだ。例えば、陳星と黄家達、陳少龍、王虎が対戦する場面では、手技の黄家達、足技の王虎、オールラウンド・プレイヤーの陳少龍と動きを振り分け、陳星には金鐘罩という防御技を使わせることで、同一の動きで演者が被らないように心掛けているなど、手抜かりがない。
 更に武術顧問として“大聖劈掛門”の大家・陳秀中が名を連ねており、そのせいかいつもの陳少鵬の表演的殺陣に比べて、ずっと実戦的なのである。

 黄家達は陳星を追うが、金鐘罩の秘技を破れずに取り逃がす。その間に魯鴻も監視の目を潜り脱出するが、何誌強や劉鶴年らの裏切りにあい囚われの身に。

 陳星を問いただす魯鴻だったが、清朝復興など興味は無いとうそぶく陳星は、八旗軍を動かすための印章が欲しいだけだった。騙されたと知った魯鴻は、あくまで印章の在り処を黙秘するが・・・。

 陳星と魯鴻の行方を追う黄家達と王虎。刀術軍団、槍術軍団などを蹴散らし、二手に分かれても王虎には龍君兒の親衛隊、黄家達には龍君兒その人が迫る。黄家達と龍君兒の対戦をセッティングした劉鶴年は、ふたりを船倉に閉じ込め火を放つ。
 罠と知った龍君兒は、黄家達と協力して虎口を脱出、父の行方不明に陳星の陰謀を見抜く。

 「陳星は恐るべき使い手だ、彼の技の秘密が解れば・・・あれは鐡布杉か?」問いかける黄家達に「あれは確か金鐘罩という技よ」と教える龍君兒。正直言ってどっちでも似たようなもんだが(笑)、金鐘罩破りの技を二人で特訓。
 ここで黄家達の修得する技が“龍形”、龍君兒の技が“刀手”となり、龍形と刀手で金鐘罩を討つ!という題名であることがわかる。

 かつて鐡布杉を操る無敵の銀魔王として君臨した黄家達が、今度は同じような技を破るために特訓するのだが、ここのバックで流れる音楽が何と『ドラゴン太極拳/太極元功/太極氣功』のテーマ曲と同じ!音楽担当は曾廣華、センスいいぞ!

 この特訓場面、黄家達が特訓に励む場面と、陳星が金鐘罩の演武をしている場面がカットバックで描かれ、黄家達の成長に合わせ、陳星の金鐘罩の弱点も判るようになっている演出が出色で、最低でも二人ひと組でないと陳星は倒せないことが観客には伝わるのだ。

 一通り技を会得した黄家達と龍君兒、いったんは役所に帰るが、長きの不在に裏切りの不信を抱かれ、陳少龍と仲たがい。役所を出た陳少龍を利用しようと企む陳星一派だったが、これは黄家達の芝居でスパイとして送り込んだのだった。
 魯鴻の居所を探るためだったが、これを逆手にとって龍君兒らをおびき出す陳星、どこまでも悪辣だ。
 ひとりでは危ないと王虎も同行するが、陳星にやられ、人質となる龍君兒。

 娘の命と引き換えに印章の引き渡しを企む陳星は、要塞に立てこもり魯鴻を拷問にかける。ついには印章の在り処を白状して息耐える魯鴻。黄家達がひとりで要塞に乗り込んできたが、龍君兒は囚われのまま。

 さて如何にして黄家達は陳星の金鐘罩を破るのであろうか?ここからは観てのお楽しみなのであります!

 製作の通用影業は台湾で立ち上げられた会社(香港にも支社はあるが)で、「AN ASSO ASIA FILM」という名前の方が通りがいいか。
 プロデューサーのケ格恩(トーマス・タン)は黎幸麟(ジョセフ・ライ)と共に活動していた、一説には韓国人だとの噂もあるが・・・。初期には『黒豹飛客』などのちゃんとした韓国産功夫片をたくさん作っているが、後に「通用=AN ASSO ASIA FILM」は「IFD」や「フィルマーク」を立ち上げ、怪しい映画作りに手を染めていく。
 そのせいか、王虎、巨龍を筆頭に韓国系スターが大量に投入されていますが、テコンドー映画にありがちな一本調子にならなかったのは、やはり陳少鵬の構成力のおかげか。

 この映画、かなりお薦めです。
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