旧myroom(香港電影的日常 '01/2/17〜'06/1/29)より移転。

 香港映画を中心に語っていますが、基本的には何でもアリです。
 なお日記に記載の内容は、無断転載、転用はお断りいたしております。ご理解下さい。(by fake)

 ・・・・あと、リンクもフリーではないんです。すんませんなぁ。

『Beerfest』 [2006年10月29日(日)]

『Beerfest』'06年製作、監督:Jay Chandrasekhar、主演:“Broken Lizard”

 日本ではまだ全く無名のコメディ・チーム“Broken Lizard”の新作なんだが、いやはや・・・・これは物凄い映画でしたよ!

 “Broken Lizard”はコルゲイト大学の演劇集団が起こしたコメディ・チームで、メンバーは以下の五人からなる。

 Jay Chandrasekhar
 Paul Soter
 Erick Stolhanske
 Kevin Heffernan
 Steve Lemme

 いずれもどうやって発音するのか判りづらい、日本人泣かせの名前ばかり(苦笑)。彼らのプロとしての活動は'91年から始まる。NYの劇場回りからスタートしているが、早くから短編映画を撮ったりと、フィルム部門の活動を充実させてきた。
 サンダンス映画祭で短編の実力を認められ、TVドラマの監督や、有名アーティストのPVなどで腕を磨き、勇躍TV・映画界に乗り込んできた彼らだったが、その徹底してナンセンスな笑いが観る人を選ぶのか、これまでのところ映画のヒット作はTV番組「爆走!デューク」のリメイク一本のみ。この作品は彼らの本質とはほど遠い作品である。
 リーダー格のJay Chandrasekharが毎回監督を務めるが、基本的に脚本はチームで書き、主演もチームで務めるため、一部ではアメリカの“モンティ・パイソン”との呼び名も。ただし、笑いの質は随分と違うため、大学の同窓生同士によるコメディ・チームという共通点以外はない。

 私も長いことコメディ映画を観ているが、この映画ほどナンセンスに徹しきった映画も珍しいのではないか?どんな映画にもストーリーの中にそれなりの意義や、作品を語る上でのテーマといったものがあるものだが、恐ろしい・・・・いや、面白いことに、この映画にはそんなものは皆無だったといって良い。
 これが短いギャグだけを繋いだ、ショート・コント形式の長編映画だったのならまだ話もわかる。堂々としたストーリー形式の長編映画でありながら、テーマなどとは無縁というのも、中々出来る事ではない。

 ドイツ移民のドナルド・サザーランドがアメリカで死に、その孫たち(Paul Soter & Erick Stolhanske)は、祖母(クロリス・リーチマン!)の頼みで、祖国ドイツまで遺骨を運ぶよう頼まれる。ドイツなんて・・・・とブーたれる孫たちであったが、折りしもドイツでは“オクトーバーフェスト”の開催期間であると知り、酒飲みのふたりは喜んで出かけるのだった・・・・。

 舞台となる“オクトーバーフェスト”とは、九月の第三月曜から、十月の第一日曜までの間に、ミュンヘンで開催される「世界最大のビール祭り」。もとは秋の収穫を祝う為のお祭りだったが、現在ではこの“オクトーバーフェスト”期間中に、世界中から600万人が集まり、500万リットルのビールを消費尽くすという。その為「世界酔っ払い祭り」との異名もあるほどで、映画ではチェビー・チェイスの傑作『ナショナル・ランプーン・ヨーロピアン・ヴァケーション』ドイツ篇にも登場する有名なお祭りなのだ。

 ・・・んで、ドイツへと到着したポールとエリックは、習慣の違いから会場で騒ぎを起こし、案内に来た遠縁の手引きで、別の場所に連れて行かれるのだった。

 そこはドイツのとある場所、地下深く潜った、とある会場。

 遠縁のおじさんの話によれば、サザーランドには兄弟がおり、その兄弟はドイツの有名ビール園を経営する伯爵家の血筋なんだと。初めて聞かされる話に面食らうふたり。更にその兄弟(ユルゲン・プロホノフ)には息子たちがおり、それは当然ながらポールとエリックにとって従兄弟となる存在であるという。
 驚くことだらけだったが、驚くのはまだまだ序の口で、彼らが案内された会場こそ、“オクトーバーフェスト”期間中に、密かに開催されてきた、真の世界一の酔っ払いを決める大会“Beerfest”であった!!

 著名なビール園のオーナー・ユルゲン・プロホノフの裏の顔こそ、世界の酔っ払い界を牛耳る、悪の酔っ払いの帝王である。彼は“Beerfest”を主催し、我と我が一族こそ、世界最高にして最強の酔っ払いとして、世界中の酔っ払いをコテンコテンに泥酔させてきた一族の首領であったのだ!

 正直に言って、もうこの設定でやられましたね。こんなバカバカしい設定の映画なんて過去にはありませんよ。

 ここから映画は急転直下。サザーランドはドイツを出る時、一族に伝わる幻のビール・レシピを盗んでいたため、一族の怨敵として嫌われていた。ポールとエリックは当然ながら快くは迎え入れられない。しかも、祖母のリーチマンは、かつてドイツ史上にその名を轟かせたこともある、“伝説の売春婦”であったという。売春婦の孫、裏切り者の末裔と蔑まれ、酒の勢いに任せて“Beerfest”への挑戦を口にするふたり。

 “Beerfest”で行われるのは、世にもくだらない飲み比べの数々。ただ量を飲むだけではなく、欧米社会ではポピュラーなドリンク・ゲーム(ゲームの罰則が一気飲み、ゲームはコイン投げやダーツ、卓球など)で競われ、酒の量や飲むスピードと共に、ゲームに勝つ資質も問われるのだ。
 といってもね、酔っ払いが酒飲みながらやることですから。途中からは酔っ払ってグダグダになる一方なんですが、映画はそのグタグダ感こそを丁寧に描写していく。

 プロホノフ率いる最強のドイツ・チームに軽くあしらわれ、遺骨の灰を会場にバラまかれ、失意のうちにアメリカに帰国。

 「このままで終われるか!これじゃ爺ちゃんも俺たちもあんまりだ・・・」

 田舎の大食い王の幼馴染(Kevin Heffernan)、何の役に立つのか判らないオタクの科学者(Steve Lemme)、大学の同級生で、かつてはドリンク・ゲームのキングと呼ばれたが、現在はストリートで男のチ〇ポをしゃぶって暮らすJay Chandrasekharを集め、USAチームを結成。一族の名誉を賭けて“Beerfest”への挑戦が始まった!

 ・・・・で、ここまで書くと、はは〜ん、これはスポ根モノのパロディ風に展開するんだなと、勘の良い方ならお解りでしょうが、残念!半分正解!

 確かに、映画の形式はスポ根風ではある。

 だが、彼らがやることといえば、ただ酒を飲むことだけなのだ。しかも途中からは酔っ払ってるだけだし。

 これは前代未聞の映画であります。過去に作られた、ありとあらゆる映画の形態を破壊した、スーパー・ナンセンス・コメディでしょう。
 さすがにギャグを細かく書くわけにはいかないのがアレなのだが、この後の展開は、想像通り。酔っ払いの誇りを取り戻した彼らが、酔っ払ったまんま会場に乗り込み、世界の酔っ払い相手に、ぐでんぐでんに酔っ払ってみせるのだ。

 普通、この手の映画だと、苦しい特訓の末に勝利したり、友情が壊れそうな展開でチームの危機が訪れたりします。友情−団結−勝利−大団円、これがスポ根モノの基本。まあ、確かにそんな展開もあるにはあるんですが、基本的にはただの酔っ払いだから、酔っ払いは常識も良識も欠けているもんです。最後の決戦で円陣組んで、勝利を誓い合う場面で、普通のコメディなら、ちょっとは泣かせること言うもんです。でも彼らはそんなことしませんね。いや酔っ払いだから出来ないというべきか。気の利いたことは言おうとするんですが、結局グダグダで、めいめいが適当な掛け声をかけるだけ。

 ナンセンスの王と呼ばれたキートンの破壊行為も、階級社会への叛逆や、闘争のメタファーでありました。世界最高のナンセンス映画と評価される、マルクス兄弟の『我輩はカモである』ですら、個々のギャグこそともかく、映画には戦争や政治の批判が盛り込まれていた。
 ZAZ映画(『フライング・ハイ』『ホットショット』など)だって、一見ナンセンスに見えても、馬鹿げたハリウッド大作に対する批判が見え隠れした。

 だがこの『Beerfest』には“笑い”以外に描こうとしているものは何も無い。全てのエピソードが、全てのセリフが、演技者の演技の全てが、ただただ人を笑わせようとしているだけの映画。これこそ真のナンセンスであろう。だが、それをここまで徹底した映画というのはこの映画だけではあるまいか。

 最後に、映画『Beerfest』の中で好きなギャグの場面をひとつ。

  Jay Chandrasekharはかつてドリンク・ゲーム・キングと呼ばれたが、今はストリートの男娼にまで落ちぶれていた。とりわけドリンク・ピンポン(テーブルにビールの入ったグラスを置き、玉がそこに入ったら一気飲み)の腕前では並ぶものがなかった。

 だが、何故かJay Chandrasekharは卓球のラケットを握ろうとはしない。その時の仲間との会話。

 「どうしてなんだ?」
 「昔、フィリピンでのことだ・・・・俺はいつものようにゲームをやった」
 「負けたのか?」
 「ああ・・・そのとき、ちょいとした賭けをしててね、負けた方がケツにラケットを突っ込まれるってやつさ・・・・」
 「・・・そりゃぁ・・・・酷いな。何と言ったらいいか・・・ケツにあの硬いグリップを突っ込まれるなんて、想像も出来んが、だからといって・・・」

 「グリップの方じゃないんだよ!」

 ここまででも笑えるんですが、この後、話を聞いていたクロリス・リーチマン(ドイツ史上に轟く“伝説の売春婦”という設定です、念のため)が駆け寄り、やさしくJay Chandrasekharを抱きしめ、こう言った。

 「あんたがやられたのよりデカイものを突っ込んだ人間もいるんだよ・・・」

 この後の場面で全員涙を流して感動しているんですよ!んなアホな!?(笑)

 ビバ!『Beerfest』!、ビバ!Broken Lizard!

 今から断言しておく。これが今年公開された映画のNo.1だ!

『截拳鷹爪功』 [2006年10月21日(土)]

『截拳鷹爪功』'79年製作、監督:杜魯波、主演:何宗道

 何宗道もうひとつの“精武門”続編モノ。ストーリー的には『精武門續集/唐山大兄2』と繋がりはなく、あくまでブルース・リーの『精武門/ドラゴン怒りの鉄拳』の続編ということになる。ジャッキーの『新精武門/レッド・ドラゴン』も含む、パラレルな続編ということになるが、この『截拳鷹爪功』がややこしいのは、同じ何宗道による主演ということと、英語タイトルに事情がある。

 前回の『精武門續集/唐山大兄2』もタイトルがヘンだとお気づきだろうが、これは英語題もおかしいのだ。英語題は『Chinese Connection2/Fist of Fury2』なのである。『截拳鷹爪功』の英題は本来、『Jeet Kune the Claws and the Supeme Kung Fu』であったのだが、内容が精武門系列であるため、英題も『Fist of Fury3/Chinese Connection3』と変更され、欧米のビデオタイトルなどはこれで統一されている。英語版を見た人などは、これが『精武門續集/唐山大兄2』の続編だと勘違いしている人もいるくらいだ。

 この混乱はそもそもブルース・リーの映画から来ている。

 我々日本人にとって、『唐山大兄/ドラゴン危機一発』は『The Big Boss』、『精武門/ドラゴン怒りの鉄拳』は『Fist of Fury』である。ところが、『唐山大兄』は『Chinese Connection』という別題も用意されていた。それが欧米へのセールス時に、間違って『精武門』の英題としてセールスされ、逆に『精武門』の英題である『Fist of Fury』が『唐山大兄』の英題とされてしまったのだ。ようするに欧米では『唐山大兄/Chinese Connection/Fist of Fury/The Big Boss』であり、『精武門/Fist of Fury/Chinese Connection』という訳。

 で、『精武門續集/唐山大兄2/Fist of Fury2/Chinese Connection2』というタイトルになったのは、ご丁寧にも勘違いしたままの欧米へ向けてのセールスを考えた、手の込んだタイトルなのである。だから『截拳鷹爪功/Fist of Fury3/Chinese Connection3』もこんなタイトルになっている次第。

 素晴らしかった『精武門續集/唐山大兄2』に比べて、この『截拳鷹爪功』は何ともトホホな出来だ。もっとも、パチもん関係の作品はこの程度の出来なら御の字で、前回が奇跡的なだけだったのだが。

 陳眞の弟・何宗道(今回の役名は“陳善”!)が列車に乗っている。上海で死んだ兄の遺骨と遺影(やっぱりブルース・リー本人の写真)を抱き、生まれ故郷に帰って行くのだ。
 物凄いド田舎に到着。こんな田舎でも日本人は猛威を振るっており、通訳の中国人・魏平澳も虎の威を借りて大威張り。すれ違い様に何宗道の殺気に何かを感じたか、日本人たちをけし掛けるが、何宗道の怒りの鉄拳が火を噴いた。
 雑貨屋を営む盲目の母・王莱と、末弟の韓國才は、何宗道の帰還を喜ぶが、死んだ陳眞のことを気に病む母の為、二度とケンカはしないと誓うのであった。

 何が目的でこんな田舎を制圧しようとしているのかは不明ながら、とりあえず悪事の限りを尽くす日本人武道家No.2の方野(手下にお馴染み山怪、米奇、前回の熱演も帳消しな岑濳波)は、No.1がこの地にくるまでに上海からきた男を捜せと指令を出す。「その男なら多分アレだな・・・」心当たりの有る魏平澳が作戦を練る。
 糞田舎にも関わらず存在する精武体育会。道場主の劉鶴年は久しぶりに帰郷した何宗道と旧交を温める。何宗道が上海に出ている間に入門した唐炎燦が、病弱な劉鶴年に代って師範代を務めているが、娘の蔡瓊輝が紹介すると妙に挑発的な態度をとった。

 「ボスがこっちにくるまでにはカタをつけんと・・・・」心配する方野に、どこでどうやって聞き込んだのかは全く持って不明ながら、「唐炎燦と何宗道は仲が悪いようです、ふたりをけしかけましょう」と提案する魏平澳。
 唐炎燦は蔡瓊輝に惚れていた。彼女が何宗道の顔を見てうれしそうにするのが気に食わなかったのだ。ほとんどストーカーのように蔡瓊輝の行動を監視する唐炎燦。さすがにウザいと感じる蔡瓊輝。
 想いが届かないと、自棄酒飲んで暴れ廻り、大道芸の父娘(ベテラン周小來と米雪)に当り散らす。止めに入った何宗道と闘うが、同門の子弟が何故こうも自分を憎むのか、そもそも蔡瓊輝のことすら眼中に入っていない何宗道には、事態が一向に飲み込めないのだった。

 こうなってくるとこの映画、別に“精武門”である必要は全く無かったと言っても良いのだが・・・・(苦笑)。

 行く当てのない米雪親子を家に泊める何宗道。周小來が病気となり滞在が伸びる。「そんなに強いのにどうしてコンテストに出ないの?」米雪の問いに答える何宗道は、「兄のようにはなりたくない・・・・母にも心配かけたくないし・・・」歯切れの悪い何宗道に遠慮して話を逸らす米雪。今度は何宗道が質問、「何故旅を?」。「父は・・・その・・・捜している人がいて・・・」米雪も歯切れが悪く、「余計なことだった・・・」と話を逸らす何宗道。今後に向けて何かありそうな感じだが、結局、米雪親子が誰を捜しているのかは最後まで判らなかったりする。

 病気が快復したのか、突然出て行くと言い出す周小來。「何で急に?」米雪は不服顔。蔡瓊輝は好きな(?)何宗道のため服を縫い、いそいそと届けに来た。更に嫉妬の炎を燃やす唐炎燦。またまた自棄酒を煽っているところに、本来の計略をやっと思い出した魏平澳が、「女なんてやってしまえばこっちのもんですよ!」とけしかける。ついでに隙をみて興奮剤を酒に混ぜた。
 その夜、抑え切れなくなった唐炎燦は蔡瓊輝の寝室に忍び込んだが、目を覚ました蔡瓊輝に抵抗され、師匠の劉鶴年からは破門を言い渡された。

 主人公の何宗道とは、かなり遠いところで進められているこの計略に、まんまと嵌る唐炎燦。とにかく何宗道が悪い!恨み骨随となり、魏平澳の誘いに乗って方野陣営に加盟。魏平澳の立てた計略は、顔を隠して連続強姦殺人を犯し、最終的には罪を何宗道に着せてしまおうというもの。市民の訴えで警察の取り調べも厳しくなる頃、蔡瓊輝の縫った服を盗み出し、劉鶴年を殺害。現場を見た蔡瓊輝は、服の模様から犯人は何宗道だと訴え出る。末期に劉鶴年は違うと言い残したのだが・・・・。

 重要参考人として拘置所に入れられる何宗道。しらじらしく劉鶴年の葬儀に現れ、悲嘆に暮れる蔡瓊輝に付け込む唐炎燦。「やりましたな〜」祝杯を挙げる方野一味。そして組織のNo.1である谷峰が登場。このショウブラ派の大物が参加していることが、このぐだぐだな映画唯一の光明である。
 何の説明もなく、突然村に帰って来た周小來と米雪父娘は、蔡瓊輝に何宗道の無実を訴える。そこへ現れた唐炎燦との間に闘いとなるが、父の最後の言葉もあり、訳が解からなくなった蔡瓊輝は祭壇に頭を打ちつけて自殺してしまう。唐炎燦もビックリだが、我々観客もビックリだ!

 罪が確定して刑務所へ送られることになった何宗道。悲観する母と弟。通りすがりの日本人と魏平澳に何故か八つ当たりする韓國才。ストーリーは省略することなく書いているから御理解頂けると思うが、韓國才はこれが日本人の計略だったことは知らない!のだ。とにかく、悪いことは全部日本人のせい!結果的に当ってなくは無いが、この時点では八つ当たりでしかなく、しかも返り討ちで母共々殺されてしまう。

 拘置所から何宗道を救い出した米雪と周小來。一緒に逃げましょうと持ちかけるが、母に挨拶してからだと言い張る何宗道と自宅へ。そこで見た物は、無残な母と弟の亡骸だった・・・・。
 「おのれ、日本人め!」当ってはいるのだが、拘置所にいて誰も事情は知らないはずで、間違えていたらどうするのか?という疑問はさておき、正義の拳を振るうべくとりあえず魏平澳を追う。
 方野の賭場には見当たらず、手下を蹴散らして居場所を聞くと、酒楼を目指す。山怪や米奇、岑濳波をブチ殺し、方野も殺して、逃げた魏平澳を更に追う。
 魏平澳は谷峰に事の次第を注進するも、「手前のケツは手前で拭け!」と一撃で倒される。

 さあ、谷峰はとりあえず何宗道であることを知った。が、彼が何故?どうやって?ここに来たのかは知らない。第一、谷峰はこの村へ来たばっかりで、彼がした悪事らしいことといえば、魏平澳を片付けたことだけである。これまでの方野たちの暗躍も、方野たちが勝手にやっていただけのこと。
 一方の何宗道だ。谷峰とはこの時が初対面、あくまで魏平澳が下手人だと、それも勝手に検討付けて追ってきただけで、唐炎燦との確執のことや、師匠の死の真相、その影で方野一味の果たした役割や、蔡瓊輝が死んだことすら知らない。更に困ったことに、この目の前にいる谷峰が誰で、何のためにここにいるのかは、全く不明であるという点だ(笑)。

 だが、奴を殺すにはもう理由はいらん!何故なら、奴は魏平澳を殺した悪い人物で、何よりその偉そうな態度と、悪そうな顔つきが気に喰わん!

 映画史上に残るモチベーション無き闘いが開始された。

 映画を観ている我々には、まったく伝わらない主人公の気持ちはさておき、何宗道VS谷峰の闘いは素晴らしい出来だ。惜しいな。
 谷峰やや苦戦、そこへ唐炎燦が登場。「おお良いところへ」と喜ぶ谷峰に向う唐炎燦。当たり前だが、事情が皆目検討つかない何宗道は、ただただ黙ってふたりの闘いを見守るばかり(正真正銘、マヌケ面で見ているだけ)。サイまで持ち出して健闘した唐炎燦も、谷峰の日本刀に倒れた。死の間際に全てを告白する唐炎燦。それは何宗道のためにも必要だとは思うが、全部説明するには長い経緯だぞ!

 だがこの長い告白で全てを知った。何宗道も、谷峰も。

 「ゆ、許さん!本当に許さん!」

 此処に来て俄かに燃え上がる何宗道。それはいいが我々観客は・・・・これで燃えろったって、ねぇ。

 日本刀を振り回す谷峰との第二ラウンドも素晴らしいアクションだ。やっぱり惜しいな、これ。吹き矢で相手の視力を奪った何宗道は、殺せ!と喚く谷峰に向かい「俺は中国人だ!殺すのは自分の身を守る時だけだ!」と尤もらしいことを言って止めは刺さない。
 今まで、大した理由も無く方野たちを皆殺しにしてきた男のセリフでは説得力に欠けるのだが、何に感銘を受けたものか、谷峰は自らの命を絶つ。

 こんな映画が“精武門”か・・・・・。でもアクションの出来は良いから、結構観れてしまうんだな、これが(笑)。

『精武門續集/唐山大兄2』 [2006年10月18日(水)]

『精武門續集/唐山大兄2』'77年製作、監督:邵峰、主演:何宗道

 言わずと知れたブルース・リーの『精武門/ドラゴン怒りの鉄拳』の続編だ。“精武門”続編モノといえば、ジャッキーの『新精武門/レッド・ドラゴン』が有名だろう。
 ジャッキー版は、ハーベストと仲違いした監督の羅維が、独立して旗揚げした羅維プロで製作した続編。そもそも、ハーベストでのブルース・リーと羅維との関係が険悪だったことから始まったことだった。『唐山大兄/ドラゴン危機一発』撮影時から、ブルース・リーは羅維の力量を信用していなかった。そしてふたりの間が決定的となったのが『精武門』の時。撮影には参加しなかったが、撮影現場を訪れた多くの業界人が、羅維はほとんどまともに撮影していなかった・・・との証言を残しており、ブルースが激怒したのも止むを得なかったと思われる。

 ふたりは度々ケンカをし、マスコミは面白がってふたりの仲を書きたてた。ハーベストもそれを宣伝に利用したフシがあったらしいが、とにかく大ヒットした『精武門』の手柄を巡って、双方譲らず攻撃し合った。監督・羅維生涯最大のヒットをもたらした『精武門』だったが、ブルース・リーの力ばかりが喧伝されたのは気に食わない。そこで羅維プロの旗揚げに選んだ題材が『新精武門』だったのである。
 結果は、成龍という新しいスターを発掘(育成はできなかったが)したに過ぎず、興行的にも惨敗。ブルース・リーの死後3年を経て、はからずも自らの手で、己の力量を示す結果となった。

 続編としての『新精武門』は、前作と同じ“麗兒”役で苗可秀と、警察署長役で羅維が出演しているのが引きなだけで、ストーリー的には新たな物語だった。だが、この有名作の続編を製作するという企画を観た多くの製作者たちが放っておくはずもなく、そっくりさん俳優たちがこぞって出演するという事態を生んだのである。
 その中でも、この何宗道の『精武門續集/唐山大兄2』は傑作中の傑作で、何宗道出演作の中から選んでもベストに推す人は多い。
 監督の邵峰はキャセイでキャリアをスタートさせたベテラン。日本ではTV放映された『小子命大/ドラゴンカンフー龍虎八拳』の監督でもある。

 冒頭、霍元甲と精武門の成り立ちが説明され、『精武門』のスチールをバックに陳眞の活躍までが語られる。そのまま陳眞葬儀の場面となり、前作で精武門門弟役だった田豐、李昆らが、ブルース・リー(本人!)の遺影を持って現れる。
 棺が埋められようとする時、形見のヌンチャクを捧げようとしたら泣き叫ぶ門弟・岑濳波がこれを取り上げる。その時、“麗兒(苗可秀ではない、顔は見せないよう演出)”が棺にすがるようにして自殺した。

 建て直しを計る大日本虹口道場は、死んだ鈴木に代って、羅烈(日本人役)を呼び寄せた。羅烈の腹心には鹿村や南宮勲が控え、門弟にも高飛、李強、杜偉和、史亭根らを揃え、今回の敵は明らかにオリジナルより強そうなのがミソ。
 通訳の李慧樓(前作の魏平澳と同じような役)を従えた羅烈は、精武門制圧に乗り出した。精武門道場へと乗り込んだ羅烈たち、前作と同じ精武門道場のセットを再現し、いい感じに雰囲気を盛り上げるなど、続編としても芸が細かい。
 田豐は掴まり、逃げ散る門弟(岑濳波や龍方)たち。残党狩りが始まり、彼らを匿った薛漢や余松照はとばっちりを受けた。

 羅烈たちの言い分は、「鈴木の仇を討つつもりだったが、日中の友好のため矛を収めた。それなのに抵抗するとはけしからん!」これ以上騒ぎを大きくしたくなければ屈せよと、調印書に署名させられる田豐。多くの犠牲を出し、仕方なくサインする田豐だったが、同時に中国人の誇りも失ってしまう。
 時は流れ、道場を乗っ取られ、廃屋を住まいに生活する門弟たち。アル中となった田豐に、精武門再建は不可能だった。
 不気味な嵐が訪れ、彼らの前途にも更なる不安が増す頃、ひとりの男が上海に現れた・・・・。

 ここまでが導入部で、開始20分過ぎまで何宗道は登場しない。田豐たち前作キャラのストーリーと、陳眞亡き後を丹念に描くことで、只の便乗作ではない、この作品ならではの気概を示している。

 陳眞の墓にひとり訪れる岑濳波。そこへやってきた謎の男・何宗道に、ここへ訪れてはいけないと諭す。何故か?と訪ねる何宗道に、俺たち精武門の一員と間違われては気の毒だと次げる。「俺は陳眞の弟・陳山だ、兄の死因を探る為、上海にきたんだ」驚愕の岑濳波、じゃあ尚更逃げないとダメだ!その時、高飛、杜偉和ら虹口道場一味が現れ、岑濳波をいたぶり始めた。我慢の限界に達した何宗道が拳を振るい、今まで誰も勝てなかった日本人に、中国人でも勝てるということを見せ付ける。

 謎の男の情報に驚いた羅烈は、上海署の署長・曹健(前作で羅維が演じた役)を呼び出し、探るよう命じる。同時に李慧樓に指令を出し、市中に隠れ住む精武門師弟を炙り出す作戦を決行。
 田豐に知らせが飛んだが、プライドを捨ててしまい腰抜けとなった彼には事態が飲み込めなかった。岑濳波に連れられてやってきた何宗道は、現状を知って彼らの助けは借りれないことを知る。
 曹健も精武門に現れ、事件のあらましに何宗道が関わっていたことを知るが、「そもそも悪いのは日本人だろう、彼らを逮捕するなら出頭する」という何宗道に、かつてひとりで闘った陳眞の面影を見出す。

 何宗道の抵抗活動は続き、精武門狩りの度合いは激しさを増す。何宗道の手出しで兄を殺された葉海清は、「お前が余計なことをしているから・・・」と憎しみを吐露。事態の収拾に乗り出した武術界の長老連中(薛漢、余松照)らも、心情は理解出来るが、事をこれ以上荒立てたくないという事無かれ主義に陥っていた。
 羅烈の催促で捜査を続けている曹健だったが、言いなりになるばかりが中国人ではない!と言い置く。
 中国人武術家への無差別攻撃が開始され、田豐も現実に目覚め立ち直りをみせる。田豐に後を託し、ひとりで決着をつけるという何宗道だったが、長老たちの苦情と、曹健の薦めもあって、上海を去る決意を固める。
 列車で見送る曹健、「忘れるな、俺も中国人だ」と何宗道に語る。黙ってうなずく何宗道を乗せて列車が出発。だが、列車には何宗道を恨む葉海清の注進で、鹿村と南宮勲が刺客として乗り込んでいた。

 走る列車内で、それも他の観客がぎっしりと乗っている状況で繰り広げられるアクションがいい。深手を負った何宗道は列車から落ち、川に転落したのを見届けた鹿村は殺したと報告した。それを聞いた羅烈は、全中国武術界制圧のために抹殺指令を飛ばす。薛漢や余松照らも襲われ、自分たちには手を出さないという密約のあった葉海清は、裏切りの責任をとって薛漢を逃し息絶えた。
 深手の何宗道は岑濳波のもとへ舞い戻り、田豐や曹健に「兄と同じ末路を辿るな」と説得されるも、「俺が始めたことには、俺が決着をつける」と言い残す。

 襲撃の時期を窺い虹口道場を探る。薛漢らが匿われている場所に襲撃をかけると知りこれを救出。包囲網の敷かれた精武門を救い、鹿村&南宮勲を倒したものの、兄のヌンチャクを守った岑濳波だけは救えなかった。
 残すは羅烈のみ!虹口道場へと乗り込んだ何宗道に対し、武術家らしく正々堂々の決着をつけようとする羅烈。『龍虎鬥/吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー』以来の日本人演技に磨きがかかるが、羅烈の顔は中国人からは日本人顔だったのか?
 日本刀を捨て、あえて素手で勝負した羅烈と、一進一退の攻防が続く。一瞬の隙をつき、両手両足の筋を断ち切った何宗道は、あえて止めを刺さず「我々中国人は弱者ではない!」と伝え立ち去った。残された羅烈は切腹して果てるのだった。
 
 精武門は再建され、長老達も協力して中国人のため立ち上がった。だが、日本軍が支配する上海で、日本人を殺してしまった何宗道に隠れる場所などなかった。これ以上の追求が精武門に及ばぬ為、出頭していく何宗道。霍元甲と陳眞が祭られた祭壇には、誇らしげに形見のヌンチャクが掲げられていた・・・・。

 ところで、タイトルが『精武門續集/唐山大兄2』っていうのはヘンでしょ?これにつきましては、もうひとつの“精武門”続編モノ『截拳鷹爪功』にて!

『鰐魚頭K殺星/鉅鑽風雲』 [2006年10月15日(日)]

『鰐魚頭K殺星/鉅鑽風雲』'78年製作、監督:李作楠、主演:JIM KELLY

 * タイトルの“鰐”並びに“殺”の字は、いずれも旧字体が正字。

 英題は『The Tattoo Connection』だが、欧米では『Black Belt Jones 2』として知られている。これは、ジム・ケリーが'74年に主演した『黒帯ドラゴン』の原題が元になっている。本作は別に続編ではない、共通点といえばジム・ケリーが主演していること、そして両作共に『燃えよドラゴン』の匂いを残しているというところか。

 『黒帯ドラゴン』は、正しく『燃えよドラゴン』のスタッフによって作られた作品である。製作のフレッド・ワイントロープ、ポール・へラー、監督のロバート・クローズまで同じ、配給もワーナー・ブラザースだった。
 そもそも『燃えよドラゴン』にジム・ケリーがキャスティングされていたのは、当時の世相が黒人台頭の世だったからで、映画界も黒人スターたちによる“ブラックスプロイテーション”に席捲されていた。
 当時のアメリカで、香港映画を含むこれらB級アクションを支えたのは、当の黒人観客を主流とするヒスパニックら有色人種で、ワーナー極東配給担当・リチャード・マーが、チャイナタウンの映画館でショウブラ映画に熱狂している、アメリカ人観客の姿に衝撃を受けたことから、ワーナーによって『燃えよドラゴン』の製作が開始されたことが、歴史の始まりなのだ。

 『燃えよドラゴン』が大ヒットを記録して後、同スタッフ・キャストによって作られたのが『黒帯ドラゴン』で、白人スターのジョン・サクソンではなく、ジム・ケリーを主演に抜擢した事実が“ブラックスプロイテーション”の時代を物語っていた。

 ケンタッキー州にあるルイズビル大学で、パーカー・シェルドンより空手を学んだジム・ケリーは、'71年にインターナショナル・トーナメントにおいて、ミドル級のタイトルを獲得。もとよりスポーツ万能だったケリーは、野球、フットボールなど別の道に進む手もあった。だがケリーは空手家を選択、ロスに道場を開くかたわら、190cm近い長身を生かし、雑誌のモデルやCMタレントとして活躍していた。
 彼が『燃えよドラゴン』への出演キップを掴んだことで、“ブラックスプロイテーション”とマーシャルアーツ映画の人気が、思わぬ相乗効果を生んだ。現在に至るも、アメリカ国内でマーシャルアーツ映画の人気を支えているのは黒人観客層である。

 『鰐魚頭K殺星/鉅鑽風雲』は、『燃えよドラゴン』とも『黒帯ドラゴン』とも直接の関わりは持たない。だが、ジム・ケリーが出演し、香港へ訪れることが、嫌でも連想させるのも事実だ。唸るほど面白い映画でもないが、ベテラン李作楠の手堅い演出が、この映画を佳作にしている。

 香港で奪われたダイヤモンドの行方を捜して、ジム・ケリーが香港へと飛ぶ。ケリーは、秘密を売ろうとして殺された組員・梁小熊の身体にあった刺青を手がかりに捜査を開始。そのジム・ケリーの捜査と平行する形で、ダイヤモンド強奪犯一味の首領・陳星と、その子分・譚道良の葛藤が横軸として展開される。
 譚道良は、陳星一味の幹部クラスだが、優しい性格が災いし組織から浮き始めていた。組織を悪事を仕切るのは江島と楊斯のふたりで、彼らは目撃者や裏切り者に容赦がない。譚道良は恋人の李海姫に愚痴る毎日だが、陳星が李海姫に目を付けたことから、譚道良の忠誠心は揺らぎ始める・・・・。

 やはりこの映画最大の見せ場は、『燃えよドラゴン』では実現しなかった、ジム・ケリーVS楊斯であろう。もちろん、ジム・ケリーVS譚道良、ジム・ケリー、譚道良VS陳星なども実現し、功夫映画ファンの興味は十分に満たされるのだ。
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