『Let's Go To Prison』 [2008年02月20日(水)]
『Let's Go To Prison』'06年製作、監督:BOB ODENKIRK、主演:DAX SHEPARD
“システムなんて糞喰らえ!!”
「このシステムという奴が、満杯のレイカーズ・スタジアム三個分の犯罪者を毎年量産しているんだ・・・」と、本編の主人公ジョン・リシッスキー(DAX SHEPARD)氏は力説する。
彼の経歴を見てみよう。
八歳:TVショウの賞金を強奪、目録として贈られるデカい小切手を換金しようと試み逮捕。
彼はここで運命の出会いをする。地元の名士としても知られた名判事・ネルソン・ビーダーマン三世その人である。
判事曰く、「全ての少年には将来への夢があるだろう、私は地域の住人として、法を司るものとしてこれを守る必要がある。特に、君のような人間からはな!」
「少年刑務所で7年。これが“法”というシステムってやつさ」ジョン・リシッスキー談。
更に出所後、18歳で拳銃強盗未遂、懲役4年。
「結局、24歳の時にもう7年半喰らい、31年生きてきて、ムショで過ごした合計は18年だ。この判決は全てあのいまいましいネルソン・ビーダーマン三世判事が俺に与えたものだ。システムってやつを守るために・・・」
The Naked Tracker,T-Bones with The Dickaround Gang and Tommy Morgan(何というバンド名!・笑)が歌う軽快なC&W曲「Let's Go To Prison!」に乗せて、アルカトラズのカットインから、オジー・オズボーン、マイク・タイソン、マーサ・スチュワートそしてチャーリー・マンソンまで、著名な犯罪者の顔が並ぶOPがテンポ良くスタート。
JIM HOGSHIREの同名原作を映画化したものだが、監督のBOB ODENKIRKの手際もさることながら、脚本を担当したROBERT BEN GARANT、THOMAS LENNON、MICHAEL PATRICK JANNの「RENO 911」チームの手腕が光る傑作コメディである。やっぱこいつら監督はしない方がいい。
思えば2006年のアメリカ映画界はコメディの当たり年であった。
同年のマイ・フェイバリット『Bearfest』から、『タラデガナイト オーバルの狼』、ロビン・ウィリアムスの『RV』、『リトル・ミス・サンシャイン』、『Tenacious D in The Pick of Destiny』、『ナイト・ミュージアム』に本作『Let's Go To Prison』等、良作だらけだった。
この内、日本で劇場公開されたのは『リトル・ミス・サンシャイン』に『ナイト・ミュージアム』だけで、そのほとんどが未公開の上に、誰の口にも上ることなく消えていったのは非常に残念である。
『Let's Go To Prison』に出合ったのはアメリカのTVだった。もし劇場で観ていたら2006年のベストは間違いなく違うものになっていただろう。『Bearfest』がバカ映画の極北だったとするなら、この『Let's Go To Prison』はシチュエーション・コメディの傑作で、この映画が日本公開されなかった理由は、その地味なキャスティングにあるとしか思えない。
シチュエーション・コメディというからには、そのシチュエーションが大事で、ここにどれだけのアイディアを持ってこられるかで、映画の命運が決まる。
主人公を演じるダックス・シェパードの最初のモノローグから、彼が出所後に因縁のビーダーマン判事を殺そうと企んでいることまでが、いわばプロローグ的パート。
記者を装い判事の動向を探るが、事務所から返ってきた答えは非情なものだった。「ビーダーマン判事なら、三日前に亡くなりましたが・・・・」
こうしてあっけなく人生最大の目標を失くしたジョン・リシッスキー、ふらりと立ち寄ったバーで、ビーダーマン判事の息子・ネルソン・ビーダーマン四世(WILL ARNET)による、ビーダーマン基金設立のニュースを見つける。
「俺が人生の大半を刑務所ですごしている間に、奴の息子はぬくぬくと育ってやがったのか・・・」逆恨みもいいとこなのだが、復讐の相手を四世に定め行動を開始する。
様々な工作を施し、ビーダーマン四世を冤罪で刑務所送りにしたものの、ジョンの心は何故か晴れない。「三世ではなかったからか?・・・違う、シャバの暮らしになれていないからだ!奴(四世)がいるなら、俺もムショへ帰ろう!」
脱獄モノってのは良くあるジャンルですが、入獄モノってのは珍しい。まずここでコメディの基本である価値観の逆転が登場、このシナリオが秀抜なのは、この後も様々な形で、一度出来あがった価値観を逆転させていく点にある。
拘置所でも裁判所でも大口を叩いていたビーダーマン四世だったが、さすがに刑務所送りが決まって、バスに乗せられた頃にはすっかり怯えた子犬に変身。ハッパ取引で、最大刑を引き受ける代わりにビーダーマン四世と同じ刑務所送りにしてもらったジョン、しょげかえるビーダーマン四世をバスで見つけるや、親切な振りをして近づいた。
「何だムショは初めてか?俺の言う通りにしていれば間違いないよ」地獄に仏と、初めて笑顔を見せるビーダーマン四世。これが悪魔の計略とも知らずに・・・。
ホーム・スイート・ホーム!人生の半分以上を刑務所で暮らしてきたジョンにとって、刑務所こそ我が家だ。看守も、衛生係りも、囚人もみ〜んな友達!素晴らしきかな我がプリズン!
ジョンの計略とも知らず、刑務所のしきたりを教えられるビーダーマン、ただ「刑務所では誰も信じるな」というジョンの言葉は真実だったのだが。
入所の日に見た死体袋、刑期を終える前にここを出るには、アレに入るしかないという囚人の説明を聞いて、落ち込むビーダーマン四世。
一方のジョンはウキウキだ。看守にいつもの囚人服を用意してもらい、ビーダーマンと同じ部屋、着いたそうそうに手紙も差し入れも届いた。後はこの野郎をここでいたぶるだけ。
ビーダーマンに毎朝喧嘩をしかけさせ、ホモの囚人をけしかけてケツを狙わせる。配膳係はビーダーマンにだけスープにコンドームを浮かす。
「ああ、最高だ、人生最良の日だ・・・」
ジョンがそんなことを考えていた頃、ネオナチ・グループの囚人とビーダーマンが揉め事を起こしたことから、少しずつ歯車が狂い始める。
ネオナチ・グループのリーダーを告げ口して独房送りにしたビーダーマンはネオナチからの復讐に怯えていた。初めは面白がって煽っていたジョンだったが、段々とビーダーマンの様子もおかしくなってきていた。
ネオナチの嫌がらせを避けるためと入れ知恵して、ビーダーマンを独房送りにするが、帰ってきた時には完全にイカレはじめていた。
そうこうする内にネオナチ・リーダーも独房から出てきた。「これでビーダーマンも終わりだな」ジョンばかりか囚人全員がそう考えたものだが、窮鼠猫を噛むの例え、自殺用に用意していた強洗剤を注射しネオナチを返り討ちにしてしまうビーダーマン。
その日から、囚人全員のビーダーマンに対する態度も激変。刑務所全体の雰囲気も変わり、これまでのジョンとビーダーマンの力関係そのものも微妙な変化が。
「こんなはずではなかった!」ジョンの叫びも虚しく、刑務所を支配下に置き始めるビーダーマン四世。
刑務所しか知らない男とエリートの息子、そのエリートが刑務所に入れられた時に起こる逆転が、更にもう一度逆転して、我が家であったはずの刑務所をエリートに乗っ取られるという二段構え、三段構えの脚本が素晴らしい。この後更なる逆転を用意したストーリー展開には、ただただ唸るばかりです。こんな面白い映画が公開されないなんて、いっいどうしてしまったんでしょうかね?
出演は確かに地味な顔ぶれなんですが、主演のダックス・シェパードは、MTVの人気番組「Punk'd」で顔を売った人気者。現在、SNLの才女・ティナ・フェイとエイミー・ポウラーのコンビによるコメディ『Baby Mama』に出演中。公開を待つばかりの段階だが、今アメリカで一番公開が待たれているコメディといってもいい。二枚目タイプなので、ロマコメ路線もいけそうな注目株です。
ビーダーマン四世を演じるウィル・アーネットも、ウィル・フェレルの『俺たちフィギュア・スケーター』でライバル・デュオを演じていたのは記憶に新しい。他に刑務所署長に『スパイダーマン』シリーズでコナーズ博士を演じたDYLAN BAKER、鬼看守にSNL出身(95-96)のDAVID KOECHNER、ホモの囚人でビーダーマンを脅かすのは人気TVシリーズ「Boston Public」(これ日本でもやってる?)でスティーブン・ハーパーを演じていたCHI McBRIDEなんかが出ています。
劇場公開しないならせめてDVDでもと思ったら、日本版出ていたんだな。それはそれで驚き!
えー・・・・っと、日本版のタイトルは・・・・知らん!レンタル屋でチラっと見かけただけだし。それは各自で調べてくれたまえ!
そんな“システムなんて糞喰らえ!!”だからだ(笑)。
“システムなんて糞喰らえ!!”
「このシステムという奴が、満杯のレイカーズ・スタジアム三個分の犯罪者を毎年量産しているんだ・・・」と、本編の主人公ジョン・リシッスキー(DAX SHEPARD)氏は力説する。
彼の経歴を見てみよう。
八歳:TVショウの賞金を強奪、目録として贈られるデカい小切手を換金しようと試み逮捕。
彼はここで運命の出会いをする。地元の名士としても知られた名判事・ネルソン・ビーダーマン三世その人である。
判事曰く、「全ての少年には将来への夢があるだろう、私は地域の住人として、法を司るものとしてこれを守る必要がある。特に、君のような人間からはな!」
「少年刑務所で7年。これが“法”というシステムってやつさ」ジョン・リシッスキー談。
更に出所後、18歳で拳銃強盗未遂、懲役4年。
「結局、24歳の時にもう7年半喰らい、31年生きてきて、ムショで過ごした合計は18年だ。この判決は全てあのいまいましいネルソン・ビーダーマン三世判事が俺に与えたものだ。システムってやつを守るために・・・」
The Naked Tracker,T-Bones with The Dickaround Gang and Tommy Morgan(何というバンド名!・笑)が歌う軽快なC&W曲「Let's Go To Prison!」に乗せて、アルカトラズのカットインから、オジー・オズボーン、マイク・タイソン、マーサ・スチュワートそしてチャーリー・マンソンまで、著名な犯罪者の顔が並ぶOPがテンポ良くスタート。
JIM HOGSHIREの同名原作を映画化したものだが、監督のBOB ODENKIRKの手際もさることながら、脚本を担当したROBERT BEN GARANT、THOMAS LENNON、MICHAEL PATRICK JANNの「RENO 911」チームの手腕が光る傑作コメディである。やっぱこいつら監督はしない方がいい。
思えば2006年のアメリカ映画界はコメディの当たり年であった。
同年のマイ・フェイバリット『Bearfest』から、『タラデガナイト オーバルの狼』、ロビン・ウィリアムスの『RV』、『リトル・ミス・サンシャイン』、『Tenacious D in The Pick of Destiny』、『ナイト・ミュージアム』に本作『Let's Go To Prison』等、良作だらけだった。
この内、日本で劇場公開されたのは『リトル・ミス・サンシャイン』に『ナイト・ミュージアム』だけで、そのほとんどが未公開の上に、誰の口にも上ることなく消えていったのは非常に残念である。
『Let's Go To Prison』に出合ったのはアメリカのTVだった。もし劇場で観ていたら2006年のベストは間違いなく違うものになっていただろう。『Bearfest』がバカ映画の極北だったとするなら、この『Let's Go To Prison』はシチュエーション・コメディの傑作で、この映画が日本公開されなかった理由は、その地味なキャスティングにあるとしか思えない。
シチュエーション・コメディというからには、そのシチュエーションが大事で、ここにどれだけのアイディアを持ってこられるかで、映画の命運が決まる。
主人公を演じるダックス・シェパードの最初のモノローグから、彼が出所後に因縁のビーダーマン判事を殺そうと企んでいることまでが、いわばプロローグ的パート。
記者を装い判事の動向を探るが、事務所から返ってきた答えは非情なものだった。「ビーダーマン判事なら、三日前に亡くなりましたが・・・・」
こうしてあっけなく人生最大の目標を失くしたジョン・リシッスキー、ふらりと立ち寄ったバーで、ビーダーマン判事の息子・ネルソン・ビーダーマン四世(WILL ARNET)による、ビーダーマン基金設立のニュースを見つける。
「俺が人生の大半を刑務所ですごしている間に、奴の息子はぬくぬくと育ってやがったのか・・・」逆恨みもいいとこなのだが、復讐の相手を四世に定め行動を開始する。
様々な工作を施し、ビーダーマン四世を冤罪で刑務所送りにしたものの、ジョンの心は何故か晴れない。「三世ではなかったからか?・・・違う、シャバの暮らしになれていないからだ!奴(四世)がいるなら、俺もムショへ帰ろう!」
脱獄モノってのは良くあるジャンルですが、入獄モノってのは珍しい。まずここでコメディの基本である価値観の逆転が登場、このシナリオが秀抜なのは、この後も様々な形で、一度出来あがった価値観を逆転させていく点にある。
拘置所でも裁判所でも大口を叩いていたビーダーマン四世だったが、さすがに刑務所送りが決まって、バスに乗せられた頃にはすっかり怯えた子犬に変身。ハッパ取引で、最大刑を引き受ける代わりにビーダーマン四世と同じ刑務所送りにしてもらったジョン、しょげかえるビーダーマン四世をバスで見つけるや、親切な振りをして近づいた。
「何だムショは初めてか?俺の言う通りにしていれば間違いないよ」地獄に仏と、初めて笑顔を見せるビーダーマン四世。これが悪魔の計略とも知らずに・・・。
ホーム・スイート・ホーム!人生の半分以上を刑務所で暮らしてきたジョンにとって、刑務所こそ我が家だ。看守も、衛生係りも、囚人もみ〜んな友達!素晴らしきかな我がプリズン!
ジョンの計略とも知らず、刑務所のしきたりを教えられるビーダーマン、ただ「刑務所では誰も信じるな」というジョンの言葉は真実だったのだが。
入所の日に見た死体袋、刑期を終える前にここを出るには、アレに入るしかないという囚人の説明を聞いて、落ち込むビーダーマン四世。
一方のジョンはウキウキだ。看守にいつもの囚人服を用意してもらい、ビーダーマンと同じ部屋、着いたそうそうに手紙も差し入れも届いた。後はこの野郎をここでいたぶるだけ。
ビーダーマンに毎朝喧嘩をしかけさせ、ホモの囚人をけしかけてケツを狙わせる。配膳係はビーダーマンにだけスープにコンドームを浮かす。
「ああ、最高だ、人生最良の日だ・・・」
ジョンがそんなことを考えていた頃、ネオナチ・グループの囚人とビーダーマンが揉め事を起こしたことから、少しずつ歯車が狂い始める。
ネオナチ・グループのリーダーを告げ口して独房送りにしたビーダーマンはネオナチからの復讐に怯えていた。初めは面白がって煽っていたジョンだったが、段々とビーダーマンの様子もおかしくなってきていた。
ネオナチの嫌がらせを避けるためと入れ知恵して、ビーダーマンを独房送りにするが、帰ってきた時には完全にイカレはじめていた。
そうこうする内にネオナチ・リーダーも独房から出てきた。「これでビーダーマンも終わりだな」ジョンばかりか囚人全員がそう考えたものだが、窮鼠猫を噛むの例え、自殺用に用意していた強洗剤を注射しネオナチを返り討ちにしてしまうビーダーマン。
その日から、囚人全員のビーダーマンに対する態度も激変。刑務所全体の雰囲気も変わり、これまでのジョンとビーダーマンの力関係そのものも微妙な変化が。
「こんなはずではなかった!」ジョンの叫びも虚しく、刑務所を支配下に置き始めるビーダーマン四世。
刑務所しか知らない男とエリートの息子、そのエリートが刑務所に入れられた時に起こる逆転が、更にもう一度逆転して、我が家であったはずの刑務所をエリートに乗っ取られるという二段構え、三段構えの脚本が素晴らしい。この後更なる逆転を用意したストーリー展開には、ただただ唸るばかりです。こんな面白い映画が公開されないなんて、いっいどうしてしまったんでしょうかね?
出演は確かに地味な顔ぶれなんですが、主演のダックス・シェパードは、MTVの人気番組「Punk'd」で顔を売った人気者。現在、SNLの才女・ティナ・フェイとエイミー・ポウラーのコンビによるコメディ『Baby Mama』に出演中。公開を待つばかりの段階だが、今アメリカで一番公開が待たれているコメディといってもいい。二枚目タイプなので、ロマコメ路線もいけそうな注目株です。
ビーダーマン四世を演じるウィル・アーネットも、ウィル・フェレルの『俺たちフィギュア・スケーター』でライバル・デュオを演じていたのは記憶に新しい。他に刑務所署長に『スパイダーマン』シリーズでコナーズ博士を演じたDYLAN BAKER、鬼看守にSNL出身(95-96)のDAVID KOECHNER、ホモの囚人でビーダーマンを脅かすのは人気TVシリーズ「Boston Public」(これ日本でもやってる?)でスティーブン・ハーパーを演じていたCHI McBRIDEなんかが出ています。
劇場公開しないならせめてDVDでもと思ったら、日本版出ていたんだな。それはそれで驚き!
えー・・・・っと、日本版のタイトルは・・・・知らん!レンタル屋でチラっと見かけただけだし。それは各自で調べてくれたまえ!
そんな“システムなんて糞喰らえ!!”だからだ(笑)。








