第26回 iPhoneのその後(6) [2008年02月14日(木)]
[参考資料]
<iPhoneとAndroidがケータイ業界にもたらすインパクト>林信行 Itpro@日経BP 2007/12/20
<ケータイ業界も揺るがしたアップル流ものづくりの源泉とは>
林信行 Itpro@日経BP 2008/1/10
[概要]
2007年の携帯電話の世界は、iPhoneの発表にはじまり、Androidの衝撃的な発表で閉じたと言える。
この2種の衝撃的な発表とiPhoneでのAppleのこれまた衝撃的なものづくり、コンテント作りの内幕を分析する林信行氏のITproでの”続・iPhoneの衝撃”の記事を紹介する。
<iPhoneとAndroidがケータイ業界にもたらすインパクト>
2007年のケータイ端末は「iPhone」の話題で始まり、「Android」の話題で幕を閉じようとしている。
米アップルがiPhoneを発表したのは2007年1月9日。タッチパネル型の斬新なインタフェースを持つiPhoneは、新しいケータイとして話題をさらった。(その後、6月29日から北米での販売が開始された)次に、11月に米グーグルが公表した「Android」が、ケータイ業界の話題の中心となった。

Androidは、グーグルが中心になって提唱しているオープンなケータイ規格で、企業連合「Open Handset Alliance」で仕様を規格化し、参加メンバーを含むさまざまなメーカーからAndroid対応ケータイが発売される予定。
今回は、iPhoneとAndroidはケータイをどう変えるのかについて考えてみたい。
パソコン並の性能を持つケータイが台頭
iPhoneとAndroidの登場は、ケータイの新しいトレンドを加速させる。第1には、”パソコン用OSを搭載したケータイの台頭”である。即ち、AndroidのベースとなっているOSはLinux2.6で、iPhoneも、Macに搭載されているのと同じ「Mac OS X」を搭載している。iPhoneやAndroidの映像表現や操作性が、これまでのケータイから大きく跳躍しているのは、両規格がパソコン用OSを搭載していることが大きな要因の一つである。
パソコン用OSをベースにするAndroidとiPhoneは、これまでのケータイ端末とは、機能/性能の出発点から大きく先行している。また、「スマートフォン」と呼ばれるキーボードやフルブラウザを搭載した高性能ケータイと比べても、機能の充実度は高い。スマートフォンが搭載する「Palm OS」「Symbian OS」「Windows Mobile」といったOSも、パソコン用OSと比べると性能が落ちるPDA用の簡易OSに過ぎなかったからである。
実はこの1年から2年で起こった最も重要な変化は、これまでのスマートフォン(つまりPDA)と同じほどの大きさ、同じほどの価格、そして同じほどのバッテリ動作時間で、パソコン並みの性能(/機能)を持つハードウエアを作れるようになったことだ。2008年以降、パソコン用OSを搭載したケータイが台頭するのは間違いないだろう。
「Safari」がケータイ・ブラウザの新標準?
パソコン用OSを搭載した新ケータイの最大の特徴は、いつでもどこでもWeb上の膨大な情報を気軽に閲覧できることだ。
ここで問題になるのが、「Webブラウザの使いやすさと互換性」である。
実際、これまでのケータイ用フルブラウザやPDA用OS搭載のスマートフォンでは、いくつものブラウザがあり、Webページの製作者がそれぞれに最適化しきれず、使いにくさがあった。このWebブラウザの分野でも、iPhoneとAndroidは大きな波を起こそうとしている。実は両製品は、同じWebブラウザ技術を採用しているのだ。AndroidのWebブラウザは「WebKit」と呼ばれるソフトだが、これはiPhoneのWebブラウザ「Safari」のオープンソース版である。
最近、「WebKit」は、フィンランドのノキアもケータイに採用し始めている。さらに、Androidケータイを作るアライアンスには、LG電子、サムスン、モトローラが加入。世界シェアを寡占する5大メーカー(ノキア、サムスン、モトローラ、ソニー・エリクソン、LG電子)のうち4社が採用することになる。
パソコンの世界のWebブラウザでは、米マイクロソフトのInternet Explorerが圧倒的な地位を占めているが、ケータイの世界ではWebKit/Safariが、今後、支配的な地位を持つ可能性が高い。Webページを製作する側も、Internet ExplorerとWebKit/Safariの両ブラウザに最適化することになるだろう。
Androidはケータイ業界のWindowsになる
Androidはメーカーの壁を越えたケータイの共通規格を作り、ハードメーカーがAndroid規格に対応したハードウエアを用意し、ソフト開発者はAndroid規格に対応するソフトを開発すれば互換性が取れるようになる。即ち、パソコン業界における「Windows」と同じことを、ケータイの世界で実践しようとしていることになる。パソコン業界ではハードもソフトもWindowsに対応させることで、開発が楽になり、多くのメーカーが分業体制を取れるようになった。同じようにAndroidという共通プラットフォームに対応することで、各社が新しいケータイを開発しやすくなる。
AppleのiPhoneは別の道を!
一方、アップルのiPhoneは、1社でOS、ハード、アプリケーションまで開発して、全体としての調和や洗練さを磨こうという戦略であり、(Androidとは大いに異なる)。これは、パソコン業界でアップルがMacで採用した戦略と同じである。つまり、WindowsとMacというパソコン業界と同じ図式が、ケータイ業界でもAndroidとiPhoneで生まれることになる。
パソコン業界と異なるのは、これまでのケータイがAndroidとiPhoneにすべて置き換えられるわけではないということだ。どちらも、パソコン・ユーザーを主ターゲットに開発した技術であって、老若男女誰にでもお勧めできるケータイになるとは思えない。
ただし、従来型のケータイを使っていた人々の間でも、徐々に操作性のよいパソコンOSケータイに移行する人が増えてくるはずである。即ち、大人気だったMDプレーヤをiPodがじわじわと置き換えていったように、今後、徐々にパソコンOSケータイが勢力を広げ、新しい主流になる可能性は十分にあるだろう。
iPhoneとAndroidの関係
以上の状況下にあっても、iPhoneとAndroidは、1990年代にMac-OSとWindowsが展開したような”熾烈なライバル競争”を展開することにはならないであろう。
グーグルのCEOであるエリッック・シュミット氏がアップルの社外取締役を務めるなど関係の深い両社なら、一部では競合しながらも、ケータイのデファクト・スタンダードを作ろうという計算があるのではないだろうか。即ち、両者は一部では競合しつつも、規格として共通化した方がよい部分、例えばグーグルの本業に深く関わるWebブラウザの部分は共通化し、それなりに自分の影響を及ぼせる技術をデファクト・スタンダードにしていこうとしているのではないだろうか。
2008年は、こうしたパソコンOSベースのケータイの台頭をはじめ、ワイヤレス・ブロードバンド技術の登場など、ケータイ業界に大きな変化が訪れ、メーカーなどのケータイ関係者にとっても正念場となる1年であろう。







