第27回 「iPhoneショック」著者が語る、激変する携帯電話業界 [2008年03月03日(月)]

[概要]

林信行氏は、「携帯電話機向けWebブラウザとして『Safari』を支持するメーカーの占める市場シェアが、いつのまにか72%にもなっている。Web業界はもはやSafariを無視できない」とAppleのiPhoneが携帯電話業界全体を変えつつある現状をITpro EXPOの講演で訴えた。
ITproでも「iPhoneの衝撃」を連載している林氏は冒頭、自身の講演で使用しているプレゼンテーション・ファイルが、実際には携帯電話機上で開かれていることなどを引き合いに出しながら「今や携帯電話機は、ユーザーにとって一番身近なデジタル機器になっている」と訴える。「今でも、赤外線通信に対応している携帯電話機は、テレビのリモコンとして利用できるし、『muPass』のように、赤ちゃん向けの玩具を携帯電話機で遠隔操作できるサービスも登場している。将来的には、あらゆるデジタル家電が、携帯電話機で操作できるようになるだろう」と述べ、「携帯電話機を押えれば、デジタル家電を押えられるといっても過言ではない」と強調した。更に、これまでデジタル家電を制していた日本メーカーが、携帯電話機市場で存在感を失っていることに危惧を感じている。

[「iPhoneショック」著者が語る、激変する携帯電話業界」林 信行@ITpro EXPO 2008/1/30

今や「iPhone+Androidショック」に

米Googleが発表した携帯電話機プラットフォーム「Android」は、韓国サムスン電子、米Motorola、韓国LG電子の3社に支持されており、この3社で携帯電話機市場の34%を占めている。携帯電話機市場トップであるフィンランドNokiaのシェアが37%であり、Android陣営のシェアはトップに匹敵する水準になった。(Nokiaは、Symbian OSをサポートしているが、これのユーザI/Fとして、Mac/iPhoneのブラウザであるSafariのフレームワーク「Webkit」を移植し、更に、オープンソース化で、携帯電話のユーザI/Fのdefacto standard化を狙っている)
Android陣営とNokia、AppleのiPhoneに共通しているのは、パソコン用と同じWebサイトを携帯電話機で閲覧する「フル・ブラウザ」として、Safari(とその同等技術)を採用している点である。iPhoneが登場するまで、米国における携帯電話機の用途といえば、まず通話であり、Webブラウジングはさほど重視されていなかった。しかし、iPhoneが登場して、ドラマやコメディでも携帯電話機でWebを通して見る様子が報じられたことから、iPhoneを含めたスマートフォン全体の売れ行きが伸び、米国でも携帯電話機でPC用のWebを見る時代が到来した。
このような状況下で、携帯電話機市場における72%のシェアを占めるメーカー(Nokia+サムスン/Motorola/LG)が支持するWebブラウザがSafariになったことに注目すべきである。(更に、iPhoneも本来、Safari browserであり、AppleがMacintoshのみならず、Windows版Safariを無料でサポートしていることを考えると、PCまでSafariが伸びてくる可能性がある)

本家より高機能な「偽iPhone」がAndroidを搭載したらどうなる?

今、中国や台湾に旅行すると、タッチパネルを備えた『偽iPhone』を10種類以上見つけられる。それら偽iPhoneの中には、本家のiPhoneより高機能なものもある。これらは今は『偽モノ』に過ぎないが、将来、Androidを搭載するかもしれない。そうなったら携帯電話機業界はどうなるだろうか?
また、iPhone登場によって、携帯電話キャリアのビジネスが厳しくなった。即ち、これまで携帯電話キャリアは、データ通信を増やすことでARPU(客単価)の上昇を目論む『パケット課金モデル』で生きてきた。
しかし、最近はデータ定額制が主流になり、このモデルが通用しなくなった。さらに、iPhoneでは、携帯電話機で使用するコンテンツは、キャリアのサイトではなく『iTunes Store』で購入するモデルなので、キャリアに金が落ちなくなった。その意味で、iPhoneはキャリアにとって、ビジネスの破壊者的存在だが、それでも複数のキャリアが「iPhoneを売らせてくれ」とAppleに懇願しているのが実情だ。それは、iPhoneのソフトウエアをアップデートするためには、キャリアとの契約が必要だから、iPhoneは、ユーザーをキャリアに縛り付ける存在にもなっている。従って、キャリア側にはiPhoneを売ることが魅力になっている。

iPhoneを契機に携帯電話機の役割を考え直して

iPhoneは、単にデザインがCoolなだけの携帯電話機ではない。iPhoneのことを、『未来からのWake up call』だと思っている。 未来の携帯電話機がどうなるか、携帯電話機がこれから果たすべき役割は何なのか、iPhoneを機会に考えてみる必要があろう。

以上

[コメント]

Appleが発表したiPhoneの販売台数と実際にキャリアが発表しているiPhone接続台数にかなりの乖離のあることが話題になっている。 一方、中国市場を目指すAppleのChina Mobileとの交渉が暗礁に乗り上げているという話も伝わってきている。 さらに、ここに来て、iPhoneのSIM Lock解除されたものが、かなりの台数で中国国内で稼動しているのではと言う情報も聞こえてきている。 この中国国内での稼動数が、Appleの出荷台数と欧米での稼働台数のギャップを埋めるほど多いと言うのが現実だとしたら、 既に、iPhoneおよびこの記事に出てくるような擬似iPhoneは、世界中で相当な勢いで普及始めていると考えられる。 単なる音声通話あるいはSMSレベルの低価格携帯電話と、NotePCに代わってインターネットアクセス端末としてのiPhoneおよび擬似iPhone端末の高級携帯電話の2分化が 今後の携帯電話の新たなトレンドとなってくるであろう。 日本は、まだ、iPhoneの接続キャリアが決まっていないが、既に、各社の携帯電話がフルブラウザを搭載し、さらに、Androidベースの携帯電話の登場が必至となった現在、 各社のFMCのサポート次第では、IPベースの携帯電話の登場とインターネットアクセス端末としてのiPhone相当端末の普及は、目に見張るものになるであろうと思われる。 これはまた、Suica/Edyなどの電子マネーの普及に加え、インターネットが我々の日常生活に一掃取り込まれてきて、新たなライフスタイルの創生が期待されることを意味しよう。

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