第40回 携帯電話市場の最近の動向 (その1) [2008年08月07日(木)]

[携帯市場構造変化]
iPhone 3Gの登場で、携帯電話市場は新たな競争環境に入り込んだ。この最近の動向を示す3種の記事の概要を以下では紹介したい。

[参考資料]
NBonline(日経ビジネスオンライン
・ケータイ市場、歴史的な失速
 iPhone人気の裏で静かに進む構造変化


・ケータイ制覇を狙うGoogleの野望
 日本の携帯電話はどこへ行く?


Milan-IN
・The Platform Wars Continue 
 Nokia Buys Symbian


ケータイ市場、歴史的な失速
iPhone人気の裏で静かに進む構造変化
鈴木雅映子@NBOnline

販売台数25%減少の衝撃

調査会社IDCジャパンの調査や、販売代理店やメーカーなどの話を総合すると、今年4〜6月の携帯電話の国内販売台数は前年同期比で約25%落ち込んだもようだ。

販売方法の変化が販売台数の減少をもたらすと予想されてきたが、減少幅の予測はせいぜい5〜10%程度。実際はこの想定を大幅に下回る衝撃的な水準になったようだ。現在の状況が続けば、今年は4000万台まで落ち込む。

カメラ付き携帯の発売で大幅増となった前年の反動で減少に転じた2004年を除けば、歴史的な失速とも言える。

昨年は通信各社が料金競争を繰り広げ、国内販売台数は史上最高の約5000万台。その市場が1年で1000万台以上剥げ落ちれば、端末製造業界は4000億〜5000億円の減収、販売代理店も300億円の減益と予測される。

・販売台数が落ちた第1の要因
 通信料金と端末価格を分離し、
 端末価格を割賦で販売する方法を導入したため、
 「ゼロ円」で購入できる機種が激減し、
 割賦制を選んだ消費者は、
 1〜2年間は端末の買い替えがし難くなった。
・販売台数が落ちた第2の要因
 iPhone以外には特徴が際立った端末が、
 新たに発売されていないこと。

既存のビジネスモデルは限界
販売代理店や端末メーカーは、携帯市場が成熟期を迎え、中長期的に販売台数が減るとみて、独自の経営改革を進めていた。だが、各社とも市場の失速がこれほど早く来るとは予想していなかったはず。

象徴的なのは、端末メーカーや代理店が独自に進めてきた改革には限界があり、通信事業者と一段と連携して進めなければならないという事実だ。

通信事業者は販売代理店に、販売台数が増える程1台当たりの収入も増える課金体制を構築したが、この方法は販売が右肩上がりである事が前提。販売が減ると、乗数効果で収入が減ってしまう。

・問題点1
 通信事業者は予想販売台数の変化を頻繁に明かさないので、
 市場の変化を予想した販売体制整備ができない
・問題点2
 通信会社は新端末が発売されると、
 前のモデルが売れていても受注を止めてしまうので、
 人気商品を1年間販売続けることができない

アップルは奨励金で普及狙う
米アップルは、日本でタブー視され、縮小に追い込まれた販売奨励金を、通信事業者に支払うように要請し、高速通信ならではの新しい機能を普及させる方式を採用。

このままでは、海外市場から隔絶され、「携帯のガラパゴス」とも呼ばれてきた日本市場は、日の目を見ないまま沈没してしまう危機さえ迎えかねない。



携帯端末、足し算から引き算の時代に
(中原 敬太@日経ビジネス2008年7月28日号)

画面に触れ、指をすべらせて電話帳をめくったり、曲を探し出したりする感覚。
iPod touch」や「iPhone」の売り物でもある操作性だが、実はiPhoneの専売特許ではない。
ウェブサイト上などで立体映像を表現するソフトを提供する株式会社ヤッパ(東京都千代田区)が携帯電話向けに開発した「Spin UI エフェクトエンジン」を搭載すれば、他の携帯電話でもiPhoneの気持ちよい操作感覚が実現できる。

「iPhoneのおかげで日本の携帯電話も変わる好機が来た」

8年前、17歳で起業した伊藤正裕社長はこう期待する。
初代iPhoneの登場以来、国内外の通信会社、端末メーカーから問い合わせが急増し、
「2009年は世界で2億台の端末に搭載される計画」
という。
NTTdocomoの今夏モデル「SH906i」やWILLCOMの「WILLCOM03」などにも搭載され始めた。
ただ、伊藤社長の表情はいま一つさえない。
その理由は、日本の携帯電話はこのソフトを導入しても能力を十分に発揮できないからだ。

「以前から積み上げてきた機能が多すぎて、
 うちのソフトをスムーズに動かすための容量が足りない」

日本の携帯電話が積み重ねてきた開発の歴史こそ、逆に競争力の低下を招いているという。

日本の携帯電話端末は、カメラの画素数を高め続け、薄さで競い合い、ワンセグ機能は当たり前の世界に入っている。使い勝手より、高い機能を優先してきた。端末メーカーは通信事業者から半年ごとに新機能を要求され、さらに何種類もの端末を作らなければならなかった。次々に新しいものを作り出すため、端末の寿命は短くなる。

この構図が問題なのは、端末の進化が「足し算」で出来上がったことだ。
従来の機能を捨てずに積み上げてきたため、iPhoneのような従来の発想とは全く違う端末は生まれにくい。
伊藤社長は、

「新規参入の台湾勢などが思い切った製品開発に踏み切れるのに対し、日本では難しい」

と、こぼす。

携帯電話が「電話」の枠組みを超えようとしている今、
日本の携帯電話端末が従来の発想から変われるかどうか。
それは足し算から、機能を捨てる引き算に踏み切れるかどうかにかかっている。


第40回 携帯電話市場の最近の動向 (その2)へ続く

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