第40回 携帯電話市場の最近の動向 (その2) [2008年08月07日(木)]
第40回 携帯電話市場の最近の動向(その1)はこちらから。
<ケータイ制覇を狙うGoogleの野望>
日本の携帯電話はどこへ行く?
中道 理@日経コミュニケーション
携帯電話機メーカーにとってのAndroidのメリット
無償で提供される携帯電話ソフトで携帯電話開発費の削減を狙う
Googleの狙い
携帯電話上でもGoogleのサービスを使ってもらえるようになれば、Google全体としてはAndroidに開発費をかけても十分に元は取れるという計算。世界の携帯電話ユーザーはすでに32億人おり、今後さらに伸びていく。従って、10億のユーザーしかいないパソコンよりも大きく稼げる可能性が高い。
Googleの富の源泉はユーザーの行動履歴の収集
Googleは、その収益のほとんどをインターネット上の広告で稼いでいる。ここで競争上、重要になるのが、精度の高い広告を出せる仕組みを用意すること。これを実現するために、Googleは大きく2つの仕組みを用意した。
1
Google自身がインターネット上で無償サービスを提供し、
この無償サービスで利用される情報からユーザーの動きや嗜好を収集する。このために、メールサービス「Gmail」、地図サービス「GoogleMap」、スケジュールサービス「Googleカレンダー」、Microsoft Office対抗サービス「Googleドキュメント」、ブログやニュースの最新トピックを1画面に収集できるサービス「Googleリーダー」、デジタルカメラで撮影した写真を整理・保存できるアルバムサービス「Picasa Webアルバム」などがある。
2
ユーザーの行動履歴を収集するもう1つの仕組みは、直接サービスを提供するのではなく、他のサイトに部品として提供する。企業の紹介ページで、自社の案内地図にGoogleMapの部品を使っているケースがあるが、まさにこの仕組みを利用している。他社のWebサイトであっても、その一部にGoogleのサービス部品を使われていれば、そこを通してユーザーの履歴情報がGoogleに集まってくる。Googleのサービス部品が利用できることは、一から全ての機能を自分で作らなくても良いため、Webページを作る開発者にとってもうれしい。Web開発者は開発を省力化できる一方で、Googleはユーザーの情報を収集できるという共生関係が成り立っているわけだ。
携帯電話のしきたりを壊す
ところが現在の携帯電話では、パソコンのインターネットで作り上げてきたこうした仕組みがうまく生かせない。メールやカレンダーなどの機能は携帯電話事業者や携帯電話メーカーが管理しており、Googleとしては手を出すことができない。携帯電話に搭載されているWebブラウザの機能が少なく、開発者がGoogleのサービス部品を使ってWebページを作れないなどの問題がある。
この現状を打破すべくGoogleが携帯電話の世界に送り込んできたのが、「Android」である。
Androidでは、携帯電話上でGoogleのサービスを思う存分使える仕組みがあらかじめ用意されている。Android端末が使われるようになれば、Googleはこれまで手の出せなかった携帯電話でやり取りされる情報にもアプローチすることができる。
さらに、携帯電話アプリケーションの開発者がGoogleのサービス部品を使って新しい魅力的なサービスを作ってくれるようになれば、Googleの情報収集能力はさらに拡大する。
達成されつつあるGoogleの思惑
世界中にAndroid端末を広げるというGoogleの思惑が成功するかどうか、普及のハードルとなりそうな点が2つある。
1
携帯電話事業者がGoogleのサービスを自由自在に使える端末を自社の携帯電話網につなぐことを許すのかという点である。これについては、既に、サービス収入が携帯電話事業者でなく、アップルに流れる「iPhone」が受け入れられており、問題にはならないであろう。従って、Android端末が魅力的であれば、携帯電話事業者は、Android端末の接続を認めるであろう。
例え、大手携帯電話事業者が提供を拒んだとしても、彼らのネットワークを借りてサービスを提供する「MVNO」(仮想携帯電話事業者)が、Android端末を出す可能性がある。MVNO事業者にとっては、Androidを使うことでメールサーバなどを自社で用意しなくて良いため、安価に携帯電話事業に参入できるというメリットがある。
2
多くの携帯電話メーカーが本当にAndroid端末を作るのかという点である。最近、Androidの最大のウリであった無償というアドバンテージが消えつつある。2008年7月に携帯電話の開発プラットフォームとして最大の勢力を誇るSymbian(シンビアン)が2009年から無償にすると発表した。これまでの実績を考えれば、多くのメーカーがこちらに流れる可能性は高い。
しかし、GoogleがAndroidに込めた狙いは、携帯電話でインターネットを自由自在に使えるようにすることにある。iPhoneに象徴されるように、携帯電話のインターネットへの接続はオープンになっており、例え、Androidが普及しなくても、Googleの思惑はほぼ達成されつつあるかに見える。
<The Platform Wars Continue: Nokia Buys Symbian>
Gerry Purdy@Frost & Sullivan - Inside Mobile and Wireless
パーソナルコンピュータが発展していた時代に、Microsoftは、ハードウェアメーカーにWindowsをライセンスする最も貴重な会社であった。Windows上に構築されるアプリケーションは、Windowsよりも多くの販売収入をもたらすものであった。さらに、webがネットワークサービスのポータルとして使われ、パーソナルコンピュータを中心とするビジネスの重要なコンポーネントとなっている。この事業のスキームはおおよそ20年間続いており、今現在も継続している。
無線通信システムは、パーソナルコンピュータとはまったく異なる発展を遂げてきたが、ここ数年に起きてきた以下の2つの出来事で、大きな構造変化を迎えようとしている;
1、 iPhone 3G、および、Apple Storeの発表
2、 GoogleによるAndroid、および、OHA(Open Handset Alliance)の発表
携帯電話の歴史
過去十数年、携帯電話は、1=通常の電話機、2=スマートフォンの2種が共存してきた。
スマートフォンは、Windows Mobile/Palm OSなどを備えるPalm Treo、Symbian Series 60、BlackBerryなど、複雑なOSを持ち、このOSのライセンス費用などで高価格になる。
Androidが昨年秋に発表された時、携帯電話機メーカーにとって画期的だったのは、Android OSが無料で、ライセンス費用がかからないことであった。Googleは、携帯電話機を使ったネット検索の広告料から収入を得るビジネスモデルであり、これは従来のビジネスモデルからの抜本的な変化であった。Googleは、これにより、電話機の低価格化が進み、より多くの台数が販売されので、Googleに、OSライセンス費で失う収入より、より多くの広告収入をもたらすであろうと期待している。
iPhoneは、OSを他社にライセンスすることはないが、無線通信業界に、Androidと同じような変化をもたらすであろうと期待され、Appleは、無線通信サービスから収入を得るであろう。
Symbian OSの無料化
Nokiaは、Symbianを買収し、Symbian OSをSymbian財団のものとすると発表した。Sony EricssonとMotorolaは、UIQ platformを推進し、NTTdocomoは、MOAP platformを推進している。Symbian Foundationは、携帯電話機メーカーに、従来とは異なり、Royalty FreeでOpen Source化したSymbian OSを提供することになる。
Symbian OSを搭載した携帯電話機メーカーは、ライセンス費の支払いを求められないが、この電話機のユーザーは、無線サービスに利用料の支払いを求められ、携帯電話機メーカーは、Symbian Foundationの会員費用の支払いを求められる。NOKIAは、「Ovi」と呼ばれる新サービス環境から、(サービス料だけでなく、)Google/Androidと同様に広告収入をもあげることになろう。
これにより、Microsoftは、Windows Mobileでとっているライセンス料を無償とするように多大な圧力を受けることになろう。当然、Microsoftは、ネットワークサービスおよび広告から収入を上げることができるわけで、Yahooの買収ができれば、この方向はより明らかになったであろう。
Linux OSを担いでいるACCESS Systems ALP、Linux Mobile LiMoも、何らかの付加価値サービスを標榜して、OSを無償化するという、同様な方向に進むであろう。
無線通信分野のビジネスモデルの変化
無線通信の事業分野では、携帯電話向けのOSは、全て無償となり、何らかのサービスから収入を得る方向にまとまるであろう。結果として、携帯電話機は、より廉価なものとなり、強力なOSを内蔵する携帯電話機の比率は、高まっていくであろう。
音楽、写真、動画などのリッチコンテンツを扱い、マルチタスク機能で通話と平行して音楽ダウンロードを行い、プッシュ型電子メール、市況モニターなどのアプリケーションなどのバックグラウンドサービスを可能とする強力なOSで、ニュース、天気、スポーツ、株価などの無数の情報サービスを提供する携帯電話を標準とする時代が数年のうちに実現するであろう。
以上
<ケータイ制覇を狙うGoogleの野望>
日本の携帯電話はどこへ行く?
中道 理@日経コミュニケーション
携帯電話機メーカーにとってのAndroidのメリット
無償で提供される携帯電話ソフトで携帯電話開発費の削減を狙う
Googleの狙い
携帯電話上でもGoogleのサービスを使ってもらえるようになれば、Google全体としてはAndroidに開発費をかけても十分に元は取れるという計算。世界の携帯電話ユーザーはすでに32億人おり、今後さらに伸びていく。従って、10億のユーザーしかいないパソコンよりも大きく稼げる可能性が高い。
Googleの富の源泉はユーザーの行動履歴の収集
Googleは、その収益のほとんどをインターネット上の広告で稼いでいる。ここで競争上、重要になるのが、精度の高い広告を出せる仕組みを用意すること。これを実現するために、Googleは大きく2つの仕組みを用意した。
1
Google自身がインターネット上で無償サービスを提供し、
この無償サービスで利用される情報からユーザーの動きや嗜好を収集する。このために、メールサービス「Gmail」、地図サービス「GoogleMap」、スケジュールサービス「Googleカレンダー」、Microsoft Office対抗サービス「Googleドキュメント」、ブログやニュースの最新トピックを1画面に収集できるサービス「Googleリーダー」、デジタルカメラで撮影した写真を整理・保存できるアルバムサービス「Picasa Webアルバム」などがある。
2
ユーザーの行動履歴を収集するもう1つの仕組みは、直接サービスを提供するのではなく、他のサイトに部品として提供する。企業の紹介ページで、自社の案内地図にGoogleMapの部品を使っているケースがあるが、まさにこの仕組みを利用している。他社のWebサイトであっても、その一部にGoogleのサービス部品を使われていれば、そこを通してユーザーの履歴情報がGoogleに集まってくる。Googleのサービス部品が利用できることは、一から全ての機能を自分で作らなくても良いため、Webページを作る開発者にとってもうれしい。Web開発者は開発を省力化できる一方で、Googleはユーザーの情報を収集できるという共生関係が成り立っているわけだ。
携帯電話のしきたりを壊す
ところが現在の携帯電話では、パソコンのインターネットで作り上げてきたこうした仕組みがうまく生かせない。メールやカレンダーなどの機能は携帯電話事業者や携帯電話メーカーが管理しており、Googleとしては手を出すことができない。携帯電話に搭載されているWebブラウザの機能が少なく、開発者がGoogleのサービス部品を使ってWebページを作れないなどの問題がある。
この現状を打破すべくGoogleが携帯電話の世界に送り込んできたのが、「Android」である。
Androidでは、携帯電話上でGoogleのサービスを思う存分使える仕組みがあらかじめ用意されている。Android端末が使われるようになれば、Googleはこれまで手の出せなかった携帯電話でやり取りされる情報にもアプローチすることができる。
さらに、携帯電話アプリケーションの開発者がGoogleのサービス部品を使って新しい魅力的なサービスを作ってくれるようになれば、Googleの情報収集能力はさらに拡大する。
達成されつつあるGoogleの思惑
世界中にAndroid端末を広げるというGoogleの思惑が成功するかどうか、普及のハードルとなりそうな点が2つある。
1
携帯電話事業者がGoogleのサービスを自由自在に使える端末を自社の携帯電話網につなぐことを許すのかという点である。これについては、既に、サービス収入が携帯電話事業者でなく、アップルに流れる「iPhone」が受け入れられており、問題にはならないであろう。従って、Android端末が魅力的であれば、携帯電話事業者は、Android端末の接続を認めるであろう。
例え、大手携帯電話事業者が提供を拒んだとしても、彼らのネットワークを借りてサービスを提供する「MVNO」(仮想携帯電話事業者)が、Android端末を出す可能性がある。MVNO事業者にとっては、Androidを使うことでメールサーバなどを自社で用意しなくて良いため、安価に携帯電話事業に参入できるというメリットがある。
2
多くの携帯電話メーカーが本当にAndroid端末を作るのかという点である。最近、Androidの最大のウリであった無償というアドバンテージが消えつつある。2008年7月に携帯電話の開発プラットフォームとして最大の勢力を誇るSymbian(シンビアン)が2009年から無償にすると発表した。これまでの実績を考えれば、多くのメーカーがこちらに流れる可能性は高い。
しかし、GoogleがAndroidに込めた狙いは、携帯電話でインターネットを自由自在に使えるようにすることにある。iPhoneに象徴されるように、携帯電話のインターネットへの接続はオープンになっており、例え、Androidが普及しなくても、Googleの思惑はほぼ達成されつつあるかに見える。
<The Platform Wars Continue: Nokia Buys Symbian>
Gerry Purdy@Frost & Sullivan - Inside Mobile and Wireless
パーソナルコンピュータが発展していた時代に、Microsoftは、ハードウェアメーカーにWindowsをライセンスする最も貴重な会社であった。Windows上に構築されるアプリケーションは、Windowsよりも多くの販売収入をもたらすものであった。さらに、webがネットワークサービスのポータルとして使われ、パーソナルコンピュータを中心とするビジネスの重要なコンポーネントとなっている。この事業のスキームはおおよそ20年間続いており、今現在も継続している。
無線通信システムは、パーソナルコンピュータとはまったく異なる発展を遂げてきたが、ここ数年に起きてきた以下の2つの出来事で、大きな構造変化を迎えようとしている;
1、 iPhone 3G、および、Apple Storeの発表
2、 GoogleによるAndroid、および、OHA(Open Handset Alliance)の発表
携帯電話の歴史
過去十数年、携帯電話は、1=通常の電話機、2=スマートフォンの2種が共存してきた。
スマートフォンは、Windows Mobile/Palm OSなどを備えるPalm Treo、Symbian Series 60、BlackBerryなど、複雑なOSを持ち、このOSのライセンス費用などで高価格になる。
Androidが昨年秋に発表された時、携帯電話機メーカーにとって画期的だったのは、Android OSが無料で、ライセンス費用がかからないことであった。Googleは、携帯電話機を使ったネット検索の広告料から収入を得るビジネスモデルであり、これは従来のビジネスモデルからの抜本的な変化であった。Googleは、これにより、電話機の低価格化が進み、より多くの台数が販売されので、Googleに、OSライセンス費で失う収入より、より多くの広告収入をもたらすであろうと期待している。
iPhoneは、OSを他社にライセンスすることはないが、無線通信業界に、Androidと同じような変化をもたらすであろうと期待され、Appleは、無線通信サービスから収入を得るであろう。
Symbian OSの無料化
Nokiaは、Symbianを買収し、Symbian OSをSymbian財団のものとすると発表した。Sony EricssonとMotorolaは、UIQ platformを推進し、NTTdocomoは、MOAP platformを推進している。Symbian Foundationは、携帯電話機メーカーに、従来とは異なり、Royalty FreeでOpen Source化したSymbian OSを提供することになる。
Symbian OSを搭載した携帯電話機メーカーは、ライセンス費の支払いを求められないが、この電話機のユーザーは、無線サービスに利用料の支払いを求められ、携帯電話機メーカーは、Symbian Foundationの会員費用の支払いを求められる。NOKIAは、「Ovi」と呼ばれる新サービス環境から、(サービス料だけでなく、)Google/Androidと同様に広告収入をもあげることになろう。
これにより、Microsoftは、Windows Mobileでとっているライセンス料を無償とするように多大な圧力を受けることになろう。当然、Microsoftは、ネットワークサービスおよび広告から収入を上げることができるわけで、Yahooの買収ができれば、この方向はより明らかになったであろう。
Linux OSを担いでいるACCESS Systems ALP、Linux Mobile LiMoも、何らかの付加価値サービスを標榜して、OSを無償化するという、同様な方向に進むであろう。
無線通信分野のビジネスモデルの変化
無線通信の事業分野では、携帯電話向けのOSは、全て無償となり、何らかのサービスから収入を得る方向にまとまるであろう。結果として、携帯電話機は、より廉価なものとなり、強力なOSを内蔵する携帯電話機の比率は、高まっていくであろう。
音楽、写真、動画などのリッチコンテンツを扱い、マルチタスク機能で通話と平行して音楽ダウンロードを行い、プッシュ型電子メール、市況モニターなどのアプリケーションなどのバックグラウンドサービスを可能とする強力なOSで、ニュース、天気、スポーツ、株価などの無数の情報サービスを提供する携帯電話を標準とする時代が数年のうちに実現するであろう。
以上






