第41回 新しいインターネットアプライアンスの本命登場(その1) [2008年08月21日(木)]

[概要]
従来、モバイル環境のインターネットアプライアンスとしては、NotebookPCが最初に登場し、続いて、携帯電話が登場して、今や、モバイル環境では、NotebookPCを抜いて、携帯電話が主流の位置を占めている。そして、2007年に入って、AppleからiPhoneが発売され、更に、Googleを中心に、Android構想が発表され、この11月には、Android端末が発売されようとしており、これらが、本命のモバイルインターネットアプライアンスとして大いに発展を遂げるであろうとの期待が高まっている。以下では、このiPhoneとAndroidの将来性を捉えた2つの記事の概要を紹介したい。

[参考記事]
CNET Japan
iPhoneという奇跡/江島健太郎・Kenn's Clairvoyance

Androidから始まるモバイル・マッシュアップ
日経コミュニケーション 2008年7月15日号


30年振りに登場したパラダイムセッター(1)
iPhoneは、1980年代にパーソナルコンピュータが登場して以来の、約30年ぶりに登場した
パラダイムセッターであり、コンピュータ業界、ソフトウェア業界、ウェブ業界、モバイル業界、果てはゲーム業界まで、あらゆる関連セクターの向かう先をたった一つのプロダクトトで決定づけてしまった「モンスターデバイス」です。

iPhoneの本当のスゴさとは、
「ネットに常時接続されているモバイル端末はどうあるべきか?
 という長年の問いに、いきなり究極解を出してしまった」
ということです。

「電話」の登場と「インターネット」の登場では、どちらが後世、例えば、100年後に大きな歴史的事件として記憶されるでしょうか?

この答えは、間違いなく「インターネット」であり、そのとき、
「皆が使っているのは、
   「モバイルインターネット端末」で、
    「音声通話」は,
     数多くあるアプリケーションの内の一つに過ぎない。」

でしょう。

30年振りに登場したパラダイムセッター(2)
・マイクロソフトがWindowsでもたらした革命の本質=ハードウェアとアプリケーションのアンバンドル(どこのハードウェアでも同じアプリケーションが動く)

・「インターネットは、ハードウェア(電話回線)とアプリケーション(音声通話)をアンバンドルする起爆剤になった」と後世に伝えられ、ハードウェアとソフトウェアが一体であった「電話」の時代は忘れ去られていき、「インターネット」だけが生き残る

・100年後の未来の世界では、「携帯電話」の登場よりも、「携帯インターネット端末」の登場こそが、大きな歴史的事件として刻まれることでしょう。そして他でもないiPhoneは、正に今、「携帯インターネット端末」の代表たる歴史的地位を確立しつつあるのです。Macとともに誕生し、Windowsで完成したパーソナルコンピュータという概念は、iPhoneの登場によって携帯電話と合流してしまったのです。

パソコンにとってのイノベーションのジレンマ
・パーソナルコンピュータにとっての携帯電話とは、典型的な「イノベーションのジレンマ」ですが、appleは、この決して当事者には克服できないと予言されたジレンマを乗り越えてしまいました。

・メールやちょっとした調べ事など、ほとんどの日常的な用事が携帯端末だけで完結するようになり、ヘビーデューティーな限られた用途でしかパソコンが使われなくなっていくであろう未来を先取りし、自ら先手を打ったのです

・iPhoneとは「パソコンの側からアプローチしたパソコンへのアンチテーゼ゙なのです。

・iPhoneの進歩性とは、パソコン同様、MacOS Xに相当する、最新かつフルスタックのオペレーティングシステムが搭載されていることです。これにより、あらゆる高機能なネイティブ・アプリケーションが、このOSの上で安定的に記述可能になっているということです

iPhoneの設計思想(1)
・iPhone OSでは、加速度センサーやカメラ、GPS、ローカルのデータベースなど、内部のありとあらゆる機構に一般のアプリケーション開発者がアクセスすることを許しています。開発者の自由度を高めることで、開発者の情熱を引き出す。こういうオープン性がもたらす開発者コミュニティにおける化学反応こそが、官僚的な組織では絶対に不可能な戦略であり、だからこそ他社が簡単に真似できない決定的なアドバンテージになることを、appleはMacの経験から知っていました

・実は、これこそが「パソコン」を「パソコン」たらしめているパラダイムの本質なのです。「パソコンの側からアプローチしたパソコンへのアンチテーゼ」を克服する、パソコン的なるものの本質とは、アプリケーション開発者の自由度を高めるオープン性、あるいは、「テクノロジーの民主化」とでもいうべき思想にあったのです。

・更に、iPhoneは、妥協のない最高のユーザ体験をもたらすために、現実世界のハードウェアの制約を含むあらゆるディテールと戦っています。これは、「如何にしてリソースを節約しながら高速に動作するネイティブ・アプリケーションを書くか」、というノウハウの蓄積を図る泥臭いアプローチです。

iPhoneの設計思想(2)
・さらにこの先には、ウェブアプリの革新が控えています。即ち、サーバ連携により、クライアント側でネイティブコードを書くことなく、safari上で同じ動作をすることが、数年先には可能になるでしょう。

・また、アニメーションンや3Dレイアウトなどダイナミックなものでも、CSS(Cascading Style Shee)で書くようにすれば、GPUによる高速化のメリットを得られるなど、Safariの技術革新への取り組みは、appleの独走状態です。

・あらゆる革新的な製品は、垂直統合モデルから生まれます。例え、最終的には負けるにしても、ハードウェアからソフトウェアまで一体化された斬新な体験によって、新技術の突破口が開かれるのです。まだ世の中に存在しない斬新なものの価値を信じて何かを作り上げることは、多くの関係者が集まらないと何もできない水平分業モデルでは不可能です。

・多くのトライアンドエラーと死屍累々の中から生き残り、大きなマーケットを作り上げた本物の技術だけが、反復作業を繰り返す学習効果によって徐々にモジュール化され、コンポーネント化されて水平分業へと移行していき、増大する市場スケールに対応できるようになっていくのです。

・垂直統合で生まれたMacがなければ、Windowsは存在しなかったし、水平分業のWindowsが登場しなければ、パソコンというものの一般への普及はなかったでしょう。

iPhoneの設計思想(3)
・これだけの圧倒的な複雑さと規模をもつiPhoneという製品が、いきなり最初からこれだけの完成度で、しかもappleにとって全く先行的な経験もない状態で誕生したことは、技術経営の難しさをそれなりに知る私から見ると、もはや「奇跡」としか思えません。

・iPhoneが今まさに行おうとしている革命は、かつてappleがIBMに対して行ったのと構図も規模もそっくりな「テクノロジーの民主化」の革命なのです。

・私たちはいま、「パーソナルコンピュータの誕生」に匹敵する歴史的瞬間を目撃しているのです。そのことに気付いていますか?iPhoneの本質は、セクシーなルックスにあるのではありません。その奥の深い中身と、未来に開かれた歴史的意義にこそ、その本質は潜んでいるのです。


第41回 新しいインターネットアプライアンスの本命登場(その2)へ続く

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