日記2005/01/10斬光15嵐の後大過の前 [2005年01月10日(月)]

 事務棟へ向かう生徒の足取りは大方において重い。
 そこは校則を破った者への処分が言い渡される場であり
、生徒にとっては裁判所とも等しい場所だからだ。
 彼もその場の重苦しい空気には慣れられずにいる。
「2年ゼッ・・・」
「シェバ・シュトラウゾくんね、もう憶えちゃったわよ」
 受け付けの、おそらく特命教員であるお姉さんの顔は、
言われてみればたしかに見覚えがあった。
 封印を破る度に顔を合わせているのだからそれも当然な
のだが、シェバの方は知り合いをつくって挨拶するような
心境でここに来たことはない。
 封印の再施行のあとに提出しなければいけない中編小説
ほどもある反省文や、数日間にわたる審議でのタライ回し
のことを思うとため息をつく元気も出ないのだ。
 来週には悪の秘密結社クラブに乗り込むという、入部以
来最大の部活動が待っているというのに。
 焦るシェバの様子を知ってか知らずか、お姉さんは事務
的に告げた。
「説明は要らないわね、えと、申請は受理されてるから
奥で封印してもらったら帰っていいわよ」
「はぁ?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ここユニオンデイルの土着の民である鬼や巨人、学園に
遺恨を残す追放者、さらには管理を離れた養殖生物などに
よる襲撃の絶えないイクセスは、常に臨戦体制にあるとい
っても過言ではない。
 そんな過酷な状態ゆえに医療体制の拡充は至極自然のな
りゆきとして行われてきた。
 イクセス学院保険室。
 校舎の一角に集約された医療設備は6世界各本国におい
てもまれな規模であり、これに匹敵するのは和漢帝国の皇
帝専用医療院(存在の真偽は不明)くらいであるともウワ
サされる。
 その前に仁王立ちする男、通称『ハウンド』に軽く挨拶
すると、彼は巨大なバンソウコウを張り付けたぶっちょう
面を多少緩めながら背後の扉を開いた。

「よぅ、顔色はよさそうじゃねぇか」
 ベッド上に上体を起こすその人物は、入ってきたブラン
の老け顔をじっと眺めたままで彼が傍らに来るのを待って
いた。
「こうして来てやるのもアセルスにちょっかい出して以来
だなぁ。 どうした、後遺症で声がでねぇか?」
 その言葉にようやく、患者は首を振りながら口を開く。
「その様子だと本体だな・・・なら友を見舞うときくらい
は身なりに気を使おうとは思わないのか?」
 ブランを迎えたのは鼻筋のスッと通った細面と落ち着い
た物腰が印象的な男で、学院にいる者ならばよほどのひね
くれ者でない限りは一目見て彼の所属するクラスを言い当
てられるだろう。
 その額や腕に巻き付けられた細い布やベルトは怪我を包
む包帯ではなく、彼の通り名の元にもなったトレードマー
クだ。
 私物であるゆったりとしたガウンを素肌に纏った姿は完
全に耽美系少女マンガの登場人物で、周りに薔薇でも飾っ
てプロマイドを撮れば購買部で夢見がちな乙女やそっち系
の生徒に結構売れるのではないだろうか。
 だが、乙女でもそっち系でもないブランの返事はぶっき
らぼうだった。
「なに言ってやがるんだ、この学院広しといえどシャツの
スソをちゃんとズボンに仕舞ってるのなんかオレサマくら
いなものだぜ、クニフダよぅ」
「違う、服装の事じゃない」
 4年美組 國符札=閣羅、ユニオン流に言えばカクラ・
クニフダ。
 昨日、謎の襲撃を受けたクニフダ組の頭領だ。
「式神でなく、本来の姿と言葉でいたわる気はないのかと
聞いているんだ」
 言葉は苛立っているようでも、口調はあくまで親し気だ
ったが、ブランはそんなフレンドリーさも気にはしない。
「本来の姿? そう簡単に真形をさらすヤツばっかりにな
ったらイクセスも終わりだぜ」
「よくも言えるな……」
 そこまで言ってクニフダはあきれて口を紡ぐ。
 彼がブランの秘密を知っているのはたまたま黄金の瞳で
真実をかいま見たからだ。
 常時、自らが操る式神『申(サル)』の姿で学院を徘徊す
るなぞの怪童。たしかに真形をさらしてはいないが、イク
スの力を絶え間なく使い続けているのだから同じ事のはず
だ。
 それで封印を破らずにいるのは能力の発露にかなりの制
約を課しているからできる芸当であることは察しがつくが、
くわしく本人から解説された事はない。
 そして、このまま食い下がっていてもここでそれが聞け
るとも思わない。
「今日は私をからかいに来たのか?」
「ん、そうだな、まずは何があったか聞いておこうか」
 ようやくの本題にクニフダは口ごもりながら、ゆっくり
と話しはじめた。
「ムッチーが面白いヤツを見つけたと騒ぎながら、3人の
妙な連中を連れてきてな・・・」

 ムッチーの後ろからおもむろに現れたの3人のうち、マ
スクをかぶった2人は呆気にとられるクニフダ組構成員の
間をすり抜けると、かつては教壇として使われていた台の
上へと駆け上がった。
 二人は『タイガーおめん&ウルフさん』と名乗りをあげ
ると、ウルフさんの方が突然笛を吹きはじめた。
 それはまったく新しい形の漫才だった・・・。

 ひとしきり笑ったあと、二人と入れ替わりに壇上に登っ
た残りの一人はMr,メリマンと名乗り、今度は奇跡のイリ
ュージョンを披露すると高らかに宣言した。
「・・・テワ、このメガネをよく見ててくサイ」
 おかしな発音が気にはなったのだが、言われるままにメ
ガネを凝視していると、ヤツは何気なくそのガラスのはま
っていない黒縁眼鏡をかけた。
 何が起こるのかとワクワクしながらその眼を凝視してい
るうちにだんだんと気が遠くなり、バタバタと倒れる仲間
たちの様子でそれが邪眼だと気付いたのは本当に最後の瞬
間だった・・・

「おまえら、バカばっかりかよ」
 ブラフはニヤニヤ笑いを引き釣らせながら率直な感想を
告げた。
 少しは名の通った悪党の巣窟に、いきなり芸人トリオが
遊びにやってくるのはどう考えたって怪しすぎるだろう。
「だいたい31人もいて一人も邪眼に耐えられなかったの
かよ?」
 呆れ果てて放ったその一言の直後、クニフダの顔に差す
暗いものがその濃度を増す。
「一人で耐えたミソラは、面会謝絶中だ」
 妖精界出身の少女の名だ。
 いつも学院法の分厚い教科書を抱えて、息を切らせなが
らフラフラと歩いていた。 腕力は……無かった。
 さらに1対3
 だから彼女は、集中治療用の別室に今も一人きりでいる。
「・・・君にイクスを渡してなければ、ドンキーやプライ
ムも耐えられたかもしれないがな」
 ニヤケ顔がさきほどとは微妙に違うように引き釣る。
「全部オレサマの所為だって言いたいのか?」
「君が置いていったあのおかしなコインも持ち去られてい
た。我々が立つこの状況は君によって引きずり込まれたと
いう点に間違いはないのではないかね」
 重い空気が流れる。
「なるほど、これを期に縁切りってわけか」  「・・・そんな気はない。私は武器庫にでも何にでもなる
つもりだ、そんな私についてきた者も文句を言う筋には無
い。だが、道具であってももっと有効に使ってはくれない
か? 君の目的を教えてくれれば・・・」
 なおも言葉を続けようとするクニフダに「セリフ長すぎ
だ」と言い放つと、ブランはきびすを返して出口へと向か
う。
 そして出口のハウンドに「死人が出る前に手を引いとけ」
と言ったきり、振り向きもせず廊下の向こうに姿を消して
しまった。

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日記2004/12/24斬光12仮面を外すとき [2004年12月24日(金)]


 マクラウドが≪癒しの手≫をかざした瞬間、ブランの意
識は途絶えた。
 彼女は怪訝な顔をすると一層深くため息をつく。
「ふぅ、無駄な事はさせないでよね、人形のボウヤ」
 かざしていた手は鋭角的に変化して、ブランだったモノ
を刺し貫いた。



英雄学院イクセス《斬光のアセルス編(仮)》

第12話『生徒が仮面を外すとき』



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イクセスランキング入り記念SS [2004年12月03日(金)]

秘約の刻は真近に来ませり
1Z 深海五千(新聞部)

 怒涛の様な3ヶ月はあっという間に過ぎ去った。
 倶楽部勧誘フェアの会場から気がついたら焼そばパンフ
ァイトの会場に放り込まれていて(未だにどんな手段を使
われたのかは不明)押し寄せる群衆に踏み潰されたのを皮
切りに、天に召されかけた事は何度あったか。
 だが今回やっと学院新聞にテビューするチャンスを掴ん
だ。
 旧校舎の探検でナナ先輩を越える結果を持ち帰れたら、
記事を任せてもらえるという約束を取り付けたのだ。

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EXXS2号用「セキワン」α [2004年12月02日(木)]

EXXS 2号用α ver

 薄紫色の雲を浮かべ鮮やかに色づきはじめた空の下、気持ち悪そうに目を覚ましたその人物は左手で頭を掻きながら上体を起こした。

(主人公紹介)

 一晩中夜風にさらされて、堅い地面に横たえられて、身体が重いし節々が痛む。
「自分、なんでこんなところに寝てるんだ?」
 主人公はまだ眠そうな目で周囲を見回す。

 学院の校庭のど真ん中で、ひとけは無い。
「なんでこんな・・・ってなんじゃコリャァァァ!」
 主人公の姿は、新品だったシャツの断片と思われる物やよくわからない布切れが巻き付いてたりはするものの、ほぼ全裸だ。
 こんな姿を朝練の女子スポーツ部にでも見つかろうものなら、イクス全開で攻撃されても文句は言えない。
 真形になれば格好はつくが、それだと今度は執行部が恐い。

 仕方が無いので、とりあえずそのままの格好で見つかる前に寮の部屋に戻ろうと、立ち上がろうとした主人公はバランスを崩す。
「あ!?」
 とっさに右手を着こうとするが、何の甲斐も無く顔面から着地する。
「???」
 不格好に身体を起こす間も、ゴツゴツとした右腕は主人の命令を無視し続けた。
 やっとのことで座り込むと、従順な左腕で右腕を顔前に引き寄せた。
 真っ赤な細い布がきつく巻き付けられた右腕からは血の気と感覚が失われていた。

 主人公は腕を覆う布をちから任せにはぎ取ろうとしたが、爪が割れて布切れをより赤く染めるだけに終わる。
 隙間から覗く腕は白く、冷たく、膨れあがり、こわばっている。
 というか右肩から下が石化して根棒みたくなっていた。

 意識がまどろみから覚醒に移行するに比例して、混乱の度と心拍数が増して、変な汗が垂れてくる。
「昨夜は何があった? どうしてたっけ?」
何も思い出せない。

 呆然とする主人公、帯の隙間に覗く白い岩石質の表面に人為的に刻まれたような傷がついている。
それは『○○○』と読めた。

 こうして、主人公はPCたちに助けを求めるって事になるつもりです。
(普通なら「元に戻すために」って話に行きそうですが、イクセスなら開き直ってこのまんま学園生活を送ることにしても面白いかなともw)

 口調や描写はもうちょっと直すなりリライトしてもらうなりできれば。
「OOO」は『RIOT』とか『PLEDGE』とか『HYPOCRITE』とか抽象的な英単語を入れたいと思ってるんですが、一番話をややこしくしそうな部分なんで、削ってもいいかなと思います。

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EXXS 石腕編初期Ver. [2004年11月30日(火)]

EXXS 石腕編プロトVer.

 薄紫色の雲を浮かべ鮮やかに色づきはじめた空と、表面
を削りながらふきすさぶ風にも無関心に荒涼とした姿をさ
らす大地との真ん中で直立したまま、我に返ったその人物
は吹き飛ばされそうなボロマントをあわてて左手で押さえ
た。
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日記2004/11/15斬光6ラブエモ [2004年11月15日(月)]

 放課後、シェバが薮にしゃがみこむ人影をようやく見つ
けたのはA寮の裏手だった。
「部室で待ってろって言われたろ。そんなところでなにし
てるんだ?」
「うん、この子のお墓をね」
 かわいらしいスコップを片手に振り向いたニースの傍ら
には、みすぼらしい黒猫の亡骸が横たわっている。
「さっきそこで見つけたんだ」
(外観コピペ)
 かわいそうに、おそらくは誰かの飼い猫が逃げ出して迷
子になった末の結末だろう。
 しばらくは不器用に土を掘り返す様子を黙って見ていた
シェバだったが、ふいにニースの脇に歩み寄ると、少し荒
っぽく彼女の肩を掴んだ。
「そんな浅くちゃ、そこらの獣か刻魔に掘り返されちまう
ぞ、どいてろよ」
 うん、と言って立ち退いたニースと入れ替わりに片ヒザ
をついたシェバは掘りかけのくぼみに右手を置く。
 締まっているうえに植物の根が複雑に絡み合う地面はだ
いぶ堅かった。
「ニース、もう少し離れてろ・・・・・・・ハァッ!」
 烈破の気迫とともに大地から土砂が吹き上がり、一拍
の間を置いて今度はパラパラと周囲に降り注ぐ。
 穴はシェバの肘までを飲み込む深さに穿たれていた。
「すごいわね」
 目を丸くして驚くニースに、小指の糸が切れていない
ことをちらりと確認しながら立ち上がったシェバは、頭
の土を払いながら照れ隠しに謙遜した。
「いや、大した事はないさ、兄貴なんかこれでクレータ
ーを作るしな。それより早く埋めてやろう」
 穴の形を整えてから黒猫を丁寧に埋葬すると、そこに
小瓶の聖水を振りかけたニースは胸の前で十字を切り、
シェバもそれを見て手を合わせると、それぞれのやり方で黙
祷した。

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日記2004/08/01斬光3ストーカー [2004年08月01日(日)]

イクセス治安維持部始動編3
「これで、にひゃくっと」
 最後のビラを掲示板に張り付け、アセルスは満足気にう
なづいた。
 活動許可の降りた治安維持部だったが、実際に始めると
なると色々と細々とした問題が明らかになり、それらを一
つづつ片付けている間に1ヶ月が過ぎてしまっていた。
 この頃には倶楽部勧誘フェアの賑わいも下火になりつつ
あり、人を集めるにはやや難が出てきていたが、他の部と
は違いこの部に必要なのは平和のため自分から進んで動く
人間だと考える彼女にとってはお祭り騒ぎに加わって人集
めするなどはなから意味が無く、ただ純粋に悲願の活動が
なかなか始まらない事が苦痛だった。
 でもそれも昨日までの話。
 ひとしきり自筆のビラを眺めて満足すると、足取りも軽
く部室へと向かう。
 ちなみに一番手間取った問題は「治安維持活動は文科系
活動か、運動系活動か」が問い沙汰され、入るべき部室が
なかなか決まらなかった事だ。
 アセルスも「時計塔に作りたい」とごねたために余計手
間取ったのだが、結局くじびきで第一倶楽部棟の片隅の部
屋が活動拠点に決まった。
 その部室の前で足を止めたアセルスは周囲を見回したが
、まだ入部希望者は一人も来ていない様だ。
「まだビラを張ったばかりだしね」
 昼に一枚目のビラを校門脇の掲示板に張ってから学校中
を回り切るまでに夕方になってしまっていた。
 時間的には見学人くらい来てもよさそうな余裕があった
が、彼女はその理由で納得してしまい、己の犯した重大な
ミスに気付く事は無かった。

 頭上にテープで張られた『治安維持部』の字を見上げ、
やっぱ事務にちゃんとしたプレートを作ってもらうべきか
な、などと思い苦笑しながら扉を開けた。
 20年ほど使われなかったというそこは、うずたかく積
もったホコリの中を謎の生物が徘徊する秘境と化していた
が、昼休みに一通りの掃除をしてみたら、なかなかに広く
こぎれいな部屋になった。
 入って左側の壁にはロッカーが並び、右側一面も和漢風
の引き戸のついた収納スペースになっている。
 正面の大きな窓からは西日が眩しいくらいに降り注ぎ(
カーテンは掃除中に燃えてしまった)、中央に置かれた会
議用の長机の上では白髪の男がしゃがんでニヤニヤしなが
らこちらを眺めていた。
『!?』
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アクスディア・リプレイ 完結編 [2004年04月01日(木)]

☆アクスディア・リプレイ 完結編

「この班は隔壁制御室の制圧を行う、ただし所定時間内の制圧が困難だと判断した場合は即時破壊作戦に切り替えてくれ」
「はい?」
 素っ頓狂な声をあげた津神は注目を浴びた。

 3月14日夕刻、東京。
 翌朝に迫ったギガテンプルムへの総攻撃に備え、魔の者たちの大半を占める侵攻部隊は巨大殲騎艦メガフロート改め『パンデモニウム』で海上を北上しつつあり、残りの支援部隊と悪魔化自衛隊は不可侵領域ぎりぎりに潜伏し、その刻を待っていた。

 津神たちが潜伏しているのは感情搾取の余波ですっかり寂れたいかがわしいホテルだった。
 男女のペアが多い魔皇と逢魔とが出入りしてもさほど目立たない場所として選定されたのか、それとも最期になるかもしれない戦いの前になんだかんだ済ませとけと気を利かせたのかは定かではないが、少なくとも10才児に気を使った場所でないのは確かだった。

 そんな中で先ほどの奇声をあげ、さらに浮いてしまった津神は取り繕う様に言葉を繋ぐ。
「いや、エレベーターチューブを叩くんじゃないの?」
 この一団への指示を任された若い『密』が苦笑しながら答えた。
「それは別のやつらがやる、なにせ隔壁の厄介さがわかったのが直前でな、急な変更で悪いと伝さまも言ってたよ」
 思惑が外れた。
 チューブ破壊のどさくさに紛れれば付近で脱出しようとする聖鐘戦士を救助する事もできるはずだった。
 だが制御室周辺には武器を手に向かってくる聖鐘戦士しか来ないだろう。

「ひょっとして、バレてるんですかね、私たちの目的ぃ」
 割り当てられた部屋に戻るなりベッドに腰掛けたグローシアンが、ため息と一緒に愚痴を吐き出した。
 実質、貸し切り状態とはいえ部屋数の問題もあり一組一部屋とはいかず、津神たちを含めた何組かは相部屋になったが、もう一組は他の仲間の部屋に行っていて不在だ。
「割と無防備に、相談しちゃっていましたしね」
 サミットの夜、魔に属する者としては不穏当な話を広場のベンチでおおっぴらにしていたのだ、誰かに聞かれて今回の人事に影響した可能性は充分にある。
「ま、それは仕方ないとしてどうしようか?」
 出鼻をくじかれてまだ立ち直り切っていない津神はグロウシアンに助言を求める。
 エレベーター付近に行けないとなれば、津神にとって参加する意味は半減する。
 しかし、グロウシアンは望む答えを返してはくれなかった。
「それは、森さまがどうしたいか、ですよ」
「でもさ、2ヶ月立ててた予定がパーなんだよ」
「状況がどんなに変わったって、目的をしっかりと見定めてさえいれば、そのためには何が必要か、その状況でどう行動すればいいのか、臨機応変に考えられるはずです」
 グロウシアンがそう激を飛ばしたところで相部屋の二人が戻ってきたため話を中断せざるを得なかった。
 両人ともなぜか紅潮していたが、津神は気付かなかったしグロウシアンも追求しなかった。

 3月15日、事前の布告通りに戦いの幕は開いた。
 日の出と同時に『パンデモニウム』から広がった紫がっかった帳が、絶対不可侵領域を無効化してゆく。
『紫の夜』発動す。
「まあいつも通り、気楽に行こうか!」
 その言葉と同時にハーツガンが飛び出した。
 朝焼けを思わせるビビットヴァイオレットの装甲は紫がかった朝日にその鮮やかさを増し、腰の両側に下がる碇のような飾りと戦いを重ねる内に厚みを増した肩部装甲がガンスリンガーとしてはだいぶ厳つい印象を与ている。
 手に構えるのは、魔皇として覚醒して以来愛用しているパルスマシンガンだが、これも本当の能力を解放した真魔皇殻となり性能は桁違いに向上している。
 脱出に失敗し、ずたぼろにされたあの頃とは全てが違っていた。

  「」 「」 「」 殲騎 誹翠さま 聖鐘戦士 神帝軍 
       ーto be continuedー<backyard talk>
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アクスディア・リプレイ 第6回(出撃編) [2004年03月01日(月)]

☆アクスディア・リプレイ 第6回(出撃編)

 サミットが終了し、そのあとに設けられた忘年会は終了予定時刻を大きく過ぎても、昼間の快勝の興奮からか魔皇たちの歓声は途絶えることは無かった。

 司を狙った神帝軍の強襲部隊はそのほとんどが壊滅、釧路テンプルムは半壊し支配領域から撤退、横浜ではギガテンプルムが陥落し、さらには神帝専用の神機巨兵輸送部隊と音波結界兵器「聖鐘」輸送部隊をそれぞれ太平洋上と三陸沖で撃破し、その戦闘で十三使徒の一人マタイが死亡するなど、この日各地で行われた戦闘は完全に闇の者達の勝利に終わった。

 サミットではグロウシアンの予想通り意見はまとまらなかった。
 だが、それ以外の結果に関しては大きく外れた。
 まず意見の衝突による武力蜂起など起きなかった、そして左派と目していたカナメの意見はむしろ穏健派のそれであり、もっとも過激な主張をしたのは雪花の一葉だった。
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AX・リプレイ 第5回(返信編) [2004年02月01日(日)]

☆アクスディア・リプレイ 第5回(返信編)

 西暦2003年12月27日
 瀬戸内海・古の隠れ家『黒き古城』にすべての司が集う。
 この情報を得た神帝軍は、司抹殺の好機と見、日本各地に
相当数の兵力を展開させた。
 隠れ家の結界を離れた司を暗殺しようというのだ。
 だが、その動きがあまりにも大雑把すぎる事には、
戦場へと赴く使徒のだれ一人としても気付かなかった。

「あなた達には播磨灘周辺海域の神帝軍を排除、
しかるのちに各方面の司さまを迎え入れていただきます」
 黒き古城にしつらえられたミーティングルームの
ピリピリとした空気の中に逢魔・伝(つて)のリンとした声が
響き渡り、作戦説明を一語一句聞き漏らすまいと
精悍な男達が神経を集中させている。
 サミット警護作戦は、同時期に決行される作戦の中でも
最大の志願者を集めた。
 ある者は司の前で活躍し、陣営内での地位を手にする
ことを望んでいた。
 ある者は他の強襲作戦より本作戦は安全だと判断した。
 そして大多数の者は、司が欠けることによって
蒼嵐の二の舞を生み出す事を危惧していた。

「・・・以上です、質問はありませんか?」
 一通りの説明が終わり、男達の緊張がふっと解ける。
 なんだかんだ言ったところで仕事は単純明快だ。

 平たくいえば彼らの班は司の入城に際しての露払いだ。
ただし司の進行ルートを悟らせないために各方面につき
3部隊に分かれ、内2つが陽動として動く。

 各々、自分のすべき事を脳裏にはんすうしながら
席を立とうとした。

 その様子に満足した伝は、この会を締めくくった。
「他にはなにもありませんね?
それでは、皆様のご武運をお祈りいたします」


 同日、午前8:00
 播磨灘上空における掃討作戦開始。
 『門』より飛び出した無数の殲騎は、3名の司の進路を
迎えるべく3方に散り、それはさらに3つに分かれていった。

「昼間って事を除けば、前回と同じだね」
 作戦空域へと向かう殲騎ハーツガンの中、緊張した顔で
前方をみつめたままの津神森は、背後のグローシアンに
語りかけた。
 津神たちの向かうのは、前回の作戦においてサーバント
の群れと遭遇した付近だった。
 殲騎の外部感覚器を通して感じられる潮風や、
荒れはじめた海面が雨雲の到来を予感させたが
降り出したとしても未明の海上と比べれば視界はずっと利き
前回よりも遥かにコンディションは良いといえる。
 それに味方もずっと多い。

「まぁ、戦闘は前より楽でしょうけど、
今回はタイムリミットがありますからね」
 グロウシアンは肩越しに森の腕時計を覗き込みながら
言った。

 津神たちが迎えるのは北海道の隠れ家『雪花』の司、
ウインターフォークの一葉(かずは)。
彼女は現在、古の隠れ家でメガフロートとともに発見された
殲騎船に乗り、警護を受けながら列島を南下中だ。
 森たちの班は彼女たちが近海に到達する前に付近の
空域の敵勢力を一掃しなければならない。
 なんといってもここが本命ルートなのだから。

「でも、直接警護班には魔凱殲騎もいるっていいますし、
到着を待って一緒に片付けた方が楽かもしれませんよ」
 姿勢を戻したグロウシアンは、シートにもたれかかる
ように伸びをした。
 彼女の方はまるで緊張していないようだ。

 魔凱(アクス)と呼ばれる指輪状の器物は、殲騎の能力を
飛躍的に上昇させる事がわかっている。
 正式な運用方法は今日のサミットで話し合われることに
なっているのだが、その前に実戦でどれだけ役にたつ物
なのかを計るため試験的に投入されているようだ。
 魔凱を装備し、真の能力を解放した殲騎を
魔凱殲騎(アクスディア)と呼ぶ。

「・・・つっても」
 津神の顔から緊張が消える、その目に光が走る。
「それをアテにしてサボるワケにもいかないよね?」
 グロウシアンが鋭い笑みを浮かべる。
「作戦を遅めて怒られるのもソンですしね、
駒はそれらしくきびきび回りますか!」
 ハーツガンは加速した、
班の先頭を行く機体が戦闘を開始したのだ。

「真・魔炎両断剣(フレイムブレイクス)!!」
 一閃された切っ先をかわし切れなかったネフィリムが
爆散し、その断片は蒼き魔炎に包まれ周囲に飛び散る。
炎をまとった破片はその周囲を取り囲む者たちに突き刺さり
更なる炎が吹き上がる。
「みたか、我が秘剣奥義の威力!」
 両手に刀を構えた黄金の殲騎が声を張り上げた。
 修羅の殲騎『ディアブロ』
これを駆る者は、戦うという行為に人生の意味を見いだし
ひたすらに強さを追い求める求道者だ。
 殲騎は蒼く燃えたままの両の剣を更なる敵に向けた。
その姿は、正に戦神だった。

「嬢ちゃん、やりすぎじゃないのかい?」
 ディアブロが次のネフィリムに突進しようとした瞬間、
操縦席の背後から陰気な声をかけられタイミングを逃した。
 逆に突進してきた巨兵を寸ででかわし、炎の剣で串刺しに
すると、少女はうんざりした顔で背後の男を振り向いた。
「なんじゃタイガ、おぬし敵に情けを掛けよと
申す気でござるか?」
 少女は操縦幹から離した右手を自分の脇刺しにかけ、
 背後の厚い胸板の男をにらんだ。
「きゃつらの肩をもつつもりならばこの場で斬・・・」
「ちがうね、そんなワケないだろ」
 逢魔タイガは落ち着き払って否定する。
「まず、ザコ相手にこんなに飛ばしてちゃぁ、
かたなちゃんの魔力がもたないんじゃないかってね」
 少女はニヤリと笑う。
「武士道とは死ぬことと見つけたり。
この春風かたな、手加減などできぬでござる!」
 意気込む少女に苦笑しながら、タイガは全周モニターの
右下の方を指さした。
「それから、なんか2〜3騎巻き込んでるしさ」

「なんだ! ワイズマンクロックの暴発!?」
 どこからか飛んできた火球をギリギリで回避した森は
眼から炎を吹き落下してゆくサーヴァントを見下ろした。
「ともかく少し退いてください、
前線向きじゃないんですよ、ガンスリンガーは」
 津神は頷くと、浮遊砲台に射撃を継続させながら
ハーツガンを後退させた。
 戦闘発生と同時に周辺の部隊が集結しつつある。
この空域から神帝軍を締め出すはずが、逆に敵を
呼び寄せている気さえしてきた。

「陽動はうまくいってんのかよっ!」
「じつはこっちが陽動ってオチもありえますよ」
 伝は司が辿る本当のルートに関して若干言葉を濁していた。
 森は真ディバステイターをセミオートで乱射した。
普通の銃でこれだけの連射をすれば、熱でシリンダーが
変形してしまう。

「森さま、全弾外れてます!!」
「狙ってない、威嚇だ!」
 真魔皇殻である真ディバステイターの弾は、ちょっとした
ミサイル並の破壊力を誇る。
 高威力の魔力弾が飛び交っていては、さすがに命知らずの
神の使徒といえども迂闊には踏み込めない。
「無駄に殺したくないしな・・・」
 津神はグリップを握り直しながら、本音を漏らした。

「どこのヘタクソでござるか。
あれだけ撃てば一発くらいは当たるでござろうに」
 また一体のサーヴァントを斬り伏せながら、かたなは
出鱈目に火器を乱射するガンスリンガーをちらりと見た。
「まっ、味方に当てない分は、かたなちゃんよりマ・・・」
 かたなの手がスッと脇刺しに伸びるのに気付き、
タイガは口をつぐんだ。
 その間にも突進していたディアブロが急旋回した。
 2匹のサーヴァントを二刀流がまとめて屠る。
「手応えの無い、一太刀くらい浴びせてみせるでござる!」
 戦いは順調だった。
「そろそろ限界ですかね?」
「いやっ、まだ行ける!」
 森の返事を聞き、グロウシアンがクスクスと笑いだす。
「敵さんですよ、浮き足だってます。
旭川の作戦も開始された頃ですからね」

 神帝軍は兵力をあまりに広域に展開しすぎていた。
 その分戦力の密度は下がり、広範に散らばりすぎた兵力は
錯綜する命令系に混乱を引き起こす。
 そんな状態の中、その強襲作戦は決行された。

 旭川で異変が起きた。
 自衛隊北部方面隊第二師団が神帝軍に対して蜂起。
92両の戦車を駆り釧路テンプルムへと侵攻を開始した。

「愚かな者たちだ」
 そのグレゴールはゲートから空中に排出された
ネフィリムの軌道を安定させると、苦々しげにつぶやいた。
 我らに対しての無力さは実証済みではないか。

 神帝降臨直後、その支配をよしとしなかった列強国は、
愚かしくもテンプルムを襲撃しようとした。
 だがしかしネフィリムの無敵のちからを前に、
戦闘と呼べる状態にもならず列強国は次々と屈服した。
 欧州では戦術核でも傷一つつけられなかったではないか。

 このネフィリムとて、反乱者に魔の者共が合流しようと
しているというから出してきたまでで、自衛隊の一師団
ごときは生身でも充分に鎮圧が可能だ。
 人という種は学ぶという事を知らないとみえる。
かつては自分もそれに列していた事に嫌悪感を抱きながら、
地平の端に列を成す小さき者共を認める。
「まだ魔物共は合流していないようだな」
 ネフィリムは加速し引き連れるサーバントを引き離す。
「ならば後続が来る前に終わらせるか」
 戦車はグングンと近づく。
居並ぶ砲台がこちらをピタリと見据える。
ドンッ!
 花火の様な轟きを上げ砲台が火を吹く。
暗い軌跡を引きずりながら、砲弾が突き進む。
ネフィリムは速度を落とさず左腕を前に突き出す。
飛来する弾はその手に掴み取られる。
その腕が四散する。

「なっ・・・!?」
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